2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560404
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安藤 英由樹 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (70447035)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スリット視 / パブリックディスプレイ / 立体視ディスプレイ |
Research Abstract |
近年,三次元視覚情報提示装置の開発が盛んである.三次元視覚情報提示を実現するためには,左右眼に別の視覚情報を提示する必要があるが,本研究では,スリット視と呼ばれる一次元光源群から二次元イメージを知覚する人間の視覚特性と,観察者に負担のない光線再現方式を組み合わせることで,多人数が同時に裸眼立体視可能な三次元視覚情報提示デバイスを開発することを目的とする.本提示方式は,複数本の一次元光点列を同期させて点滅させるとともに,それぞれを高速回転させることで簡便に三次元動画像を提示することができる. 上記の研究目的の実現のために,今年度は設計のための最適なパラメタを求める手法について,ヒトの知覚特性から見つけるために,心理物理学実験によって明らかにした.具体的には,①従来不明瞭であった見えやすい条件を明らかとするために,提示を文字とし,サイズを固定とした時のスリット配置間隔とスクロール速度をパラメタとして実験を行い,文字の幅に対して少なくとも2本のスリットが重なること,スクロール速度が14.4deg/secのとき視認性が最適となることを確認した.また,②両眼視差量と奥行き知覚の関係について従来の3D表示方式と比較することでほぼ同等であることを確認した.これにより,提案手法の実現可能性が高いことを示し,また③適切な両眼視差を実現する配置と幾何関係についてHMDとコンピュータシミュレーションシステムの構築ができた.これらの成果は,国内と国際会議で発表し,その意義や重要性について賛同を得ることができた.一方で,3次元上方提示に関しての安全性に関する指摘もあり,それらについて考慮する必要性についても認識することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,スリット視と呼ばれる一次元光源群から二次元イメージを知覚する人間の視覚特性と,観察者に負担のない光線再現方式を組み合わせることで,多人数が同時に裸眼立体視可能な三次元視覚情報提示デバイスを開発することを目的とする.24年度の研究計画は光点列の空間配置と提示する3次元動画が決定されたときに,各々の光点列の点滅パターンをシミュレーションするシステムを開発する.提示する3次元動画の作成及びそこからのシミュレーションには3次元コンピュータグラフィクスを利用する.シミュレーション結果から,スリット式3次元ディスプレイの原理が実現可能な観察者と光点列群の位置関係を明確にし,最適な観察者との距離や,光点列の配置・本数について決定する.という計画であったことに対して,本年度では,まずコンピュータグラフィックスと,HMDを用いたシミュレーションシステムを開発し,表示したい大きさに対して,見えの良いスリットの間隔や,移動速度の設計を行うための心理物理実験を遂行して,従来未知であった設計論に関する結果を導くことができた.また,シミュレータションシステムを用いて本当に3Dの知覚が起こり,またそれが従来の3D表示とどのように異なるかを明らかとする心理物理実験を遂行し,スリット視であっても従来と同等の3D表示が可能であることを確認し,学会発表(国内・国際会議)を行った.これらの結果より,実現可能な観察者と光点列群の位置関係を明確として,特に設計のポイントとなる回転筒の窓の幅が可視可能範囲と精度のトレードオフに関して,重要な要素であることを突き止めた.これについては,国際会議で発表する予定である.以上より,24年度の研究計画通り遂行できたといえる.また,25年度開始予定のデバイス作成に関しても,基礎設計と構造の試作が開始されており,予定以上に進んでいるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は1秒間に数十回転し,それに同期させて点滅パターンを変化させる回転光源デバイスの開発を行う.また,これらのデバイスを同期通信するシステムの構築,ハードウェアをコントロールするソフトウェアの実装を実現する.さらに,この回転機構においても,シミュレーションで得られたパラメータが物理的制約をクリアできるか確認する必要があり,また設計パラメータを実現する最適な設計を行うためのハードウェア(機構)要素の試作を行う. また,新たに確認が必要と考えられることとして,見やすいコンテンツと見えにくいコンテンツが有ることが実験の中で経験的にわかってきた.これについて,何が要素であるかを明らかにする心理物理実験を実行し,最適な表示コンテンツに関する設計論を立てることを課題とする.特に,眼球のスムースパースート運動を適切に誘導することが見えの効果に大きな影響をおよぼすことも,経験的にわかってきた.これについても可能な限り基礎的な実験を行うことを試みる. デバイスの完成度に依存するものの,本年度は次年度以降の実演発表を実現するために積極的に実演発表可能な学会への投稿を推し進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度はデバイスの作成に重点を置き,当初の計画通りLED基板及び通信回路試作に研究費を充てる.特注に関しては,業者見積を依頼したところ,現在の想定される研究費では大幅に不足が見込まれたため,出来る限り研究室内部での試作を行うこととする.また,昨年度の発表において国内外の反響が高く,特に実機による実現が望ましいとの意見が多かったことから,実演展示が可能な学会発表のための費用と,24年度の研究内容をまとめた雑誌への投稿費に研究費を充てる予定である.具体的には,デバイス試作のために800千円(特注(電子基板等),電子,機械部品),発表旅費のために900千円(国内500千円,海外400千円)を予定している.
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