2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560419
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鍬野 秀三 日本大学, 工学部, 教授 (80120442)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道山 哲幸 日本大学, 工学部, 助教 (20547830)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マイクロ波 / 癌治療 |
Research Abstract |
本提案アンテナの最適な設計(球状に近い加温分布と高放射効率)をコンピュータシミュレーションによって行い,それを実験によって確認することが,当年度の主な目的と実施計画であった。 市販の電磁界・熱解析ツール(CST MW-Studio)を用いて,適切な肝臓内加温分布を示すアンテナ構造が決定できた。外注の作成アンテナを用いて肝臓ファントムの加温実験(計測:サーモグラフィ法)を行った結果,計算のそれと比較的良く一致した。 適切な加温分布を示すアンテナの放射効率(インピーダンス特性から試算)は65%ほどであり,改善する必要があった。そのため,コンピュータシミュレーションによって,アンテナのスロット(放射部)近傍における外導体(従来法)・内導体・埋込チョーク(導体の分岐)付与の3種の構造を検討した。その結果,外導体と内導体チョークにはそれぞれ構造上短所(チョーク部:太い)と機能上短所(放射効率制御不能)があることがわかり,短所のない埋込チョーク構造を採用することに決めた。この構造は新しく,学問的にも価値があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度の1つ目の目的は,コンピュータシミュレーションによって本提案アンテナの最適な加温特性(球状の加温分布)を探索し,実験によっても検証することであった。先ず,シミュレーション用の自作電磁界・熱解析プログラムの妥当性を検証するため,市販のそれ(CST MW-Studio)と比較した(もちろん,厳密解の知られている球状モデルとも比較している)。その結果,部分的に僅かな差異は生じたが,コンピュータ上でのアンテナ作成の容易さから後者を用いることに決めた。結果として,予定の期間(3ヶ月)で最適なアンテナ構造(各部サイズ)を得ることができた。 2つ目の目的は,ファントム実験を行うことであった(アンテナは微細構造のため作成を外注した)。治療対象は肝臓であり,過去の文献によって知られている混合材料(イオン交換水を含む6種類)で作成した。その使用周波数(2.45GHz)におけるファントムの電気定数(複素誘電率)は公称のそれと比較し最大,15%ほどの差異があった。サーモグラフィ法によって計測した加温分布はシミュレーションのそれとほぼ一致した(ただし,加温によって電気定数は変化するため,それを考慮していないシミュレーション値との比較であり,より詳細な検討が必要である)。実験も予定期間(5ヶ月)で終了している。 最後の3つ目の目的は,最適な加温特性をもつ本提案アンテナの放射効率を検討することであった。シミュレーションによって,それは65%ほどであった(これは外注したアンテナによる実験でも確認している)。改良のため,種々検討した結果,チョーク(分岐導体)埋込アンテナ構造で,放射効率を約100%にすることができた。ただし,この構造決定までに予定期間(4ヶ月)を要してしまい,発振源の連続波のみしか検討できなかった。しかし,この波源が本質的であり,今後への支障は少ない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には,臓器対象を肝臓から乳房とする。乳房は肝臓のような高含水率でなく低含水率である。したがって,加温範囲は肝臓のそれよりも広くなることが予想され,本提案のアンテナの特長(先端全導体アンテナよりも広い加温分布)が発揮される。これについても,ファントム実験とコンピュータシミュレーションを行う。予定期間は8ヶ月である。このように長いのは,これまでも課題であった公称値との差異の少ないファントム作成のためである。ファントム作成法(混合順・撹拌,等)によって,その電気定数は大きくばらつく。その改善を試みる予定である。また,ファントムの電気定数の計測には,当然のこととして誤差が生ずる。電気定数計測には,筆者らが開発したファントム内計測可能な反射法(プローブ:斜め先端)を用いる(当年度も用いた)。本研究で用いた従来の肝臓ファントムは,高含水率のため時間経過による電気定数が安定しない。そのため,低含水率の肝臓ファントムの実現を,新たなテーマとして加えている。 さらに,血流を考慮した臓器(肝臓,乳房)の解析を行う(予定期間:4ヵ月)。ファントム実験は難しいが,コンピュータシミュレーションは必ず行う予定である。最終年度予定の動物実験によって得られた加温特性の解釈に必要なためである。死んだ動物(肝臓)の加温実験はファントム実験と同じなため容易である。しかし,生きた動物の場合には,表面のみ温度計測可能なサーモグラフィ法は使えない。それに備えて,深部計測可能なファイバ温度計法によるファントム内加温分布の計測を試す予定である(サーモグラフィ法との比較)。 また,最終年度の動物実験は困難が予想され,たくさんの時間が必要である。前倒しして,最終的な実用のカテーテル(誘電体層による外導体の被覆)構造アンテナの設計(コンピュータシミュレーション)を並行して行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に,乳房ファントムの材料費として使用する予定である。また,肝臓ファントムも並行して作成し実験するため,その経費が不足した場合には別予算を充当する(それを予測して,当年度の予算の一部を次年度に繰越している)。 推進方策で述べた,最終年度(動物実験)の準備のため用いるファイバ温度計は別予算で購入する。 最終年度には,学会発表旅費・論文投稿費・報告書作成費を請求する予定であり,実験に用いる動物(予定:ミニブタ)は別予算で購入する。
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Research Products
(5 results)