2013 Fiscal Year Research-status Report
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24560419
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鍬野 秀三 日本大学, 工学部, 教授 (80120442)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道山 哲幸 日本大学, 工学部, 助教 (20547830)
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Keywords | マイクロ波 / 癌治療 |
Research Abstract |
当年度の主な目的は,本提案アンテナの他の臓器(乳癌)への適用であった。 しかし,球状に近い加温分布を示すアンテナの放射効率は65%ほどであったためその改善を試行し,新たに埋込みチョーク構造を提案した。このとき,適切な加温分布と放射効率はトレードオフとなった。癌治療用アンテナとしては前者が重要であり,その視点からチョークサイズの適切な選択によって新たに本提案アンテナよりも,さらに球状に近い加温分布をもつアンテナを実現することができた(ただし,放射効率は僅かに劣化する)。さらに,そのアンテナを用いて,血流を考慮した肝臓癌の加温特性を求めている(学会発表は次年度)。結果として,血流の冷却効果による加温分布が定量的に明らかになった。以上は電磁界・熱解析ツール(CST MW-Studio)による数値計算である。 つぎに,再提案アンテナによる乳癌の加温特性の数値計算を行った。乳癌は,肝臓癌のような1組織(高含水)でなく,2組織(低含水(乳房)と高含水(癌))で表される。その結果,加温分布は肝臓癌のそれには劣るが実用可能性を明らかにできた(学会発表は次年度)。 また,乳癌ファントムを作成し,提案アンテナによる加温実験(計測:サーモグラフィ法)を行った。しかし,癌患部のみの十分な選択的加温ができなかった。理由の1つには,乳房ファントム作成の難しさがある。文献を参考に作成したが固形化しなかったからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本提案アンテナの放射効率を改善するため,埋込みチョーク構造を取り入れた。そして放射効率でなく一層の加温分布の改善にチョークを利用し,新たなアンテナを提案することができた(追加の期間:4ヶ月)。これは当初の予定にはなく,副産物である。 そのため本来の目的,乳癌への適用には,以前(チョーク無)と新たな提案(チョーク有)の2種のアンテナを検討した。数値計算の結果,加温分布は従来(先端全導体)のアンテナのそれよりも共に優れていることを明らかにした。さらに,血流を考慮した肝臓癌と乳癌の加温特性を明らかにした(期間:8ヶ月)。前者の特性は次年度(最終年度)予定の動物実験に役立つ。 数値計算と並行して行っている低含水ファントムの研究では,肝臓の実現に近づいている。具体的には,ファントム(主体:シリコーンオイル)の硬化剤あるいはグラファイトの混入比によって複素誘電率(電気定数)を調整した。結果として,その実部が公称値とやや離れている。 新たに提案したアンテナの解析のため,血流を考慮した肝臓ファントムの作成と実験(25年度の実施計画,ただし余裕のある場合)は行えなかった。しかし現段階において,研究の目的①「本提案アンテナの加温特性の設計」は,ほぼ達成できている(「論文」発表を予定している)。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(最終年度)には,実用化を目指したアンテナを設計する。すなわち,本提案アンテナをカテーテル構造として再設計する(期間:4ヶ月)。ただし,当初予定のファントム実験の実施は進展状況によって判断する。生きた動物実験には,準備を含めると長い期間を要すると考えているからである。 本学の動物実験用施設(手術室,CT装置,等を含む)において管理者(医師)の指導の下,ミニブタで実験する予定である(期間:5ヶ月)。死んだブタの臓器(主に肝臓)を取出し,その加温特性をサーモグラフィ法で求め,これまでに得られているファントム実験結果との差異を検討する。その後,生きたブタを用いた実験を行う。ファントム実験や死んだブタの実験では困難な血流効果が評価できる(血流を考慮した加温特性とも比較する)。ただし,加温特性の計測には,アンテナ刺入面の臓器を予め切断できないためサーモグラフィ法は使用できない。したがって,侵襲性の低いファイバ温度計による手法を予定している。モニターしながらブタ表面から臓器にアンテナを刺入させるか,あるいは開腹し臓器に直接アンテナを刺入させるかは医師と相談して選択したい。 当初,余裕があれば実施すると計画していた加温による移植癌の死滅特性の生物学的評価は断念したい。また,連続波でなく間欠波の加温解析も期間内での実施は困難と考えている。 以上3年間の研究内容を整理し,報告書を作成する(期間:3ヶ月)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当年度には,成果の学会発表のため旅費として100,000円を計上していた。しかし,旅費には別予算(当学内予算)を充てることができたため,残金(55,216円)が生じた。次年度(最終年度)には本提案アンテナによる動物の加温実験を計画している。これには,研究室にはないファイバ温度計が必要である。ファントムの加温実験の場合,それを切断し既存の赤外線カメラ(サーモグラフィ法)で加温特性の計測が可能であった。しかし,生きた動物の加温実験の場合,外部から加温特性を計測する必要があるからである。そのため,意識して予算を残した。 上記理由で述べたように,次年度(最終年度)には本提案アンテナによる動物の加温実験を計画している。そのため,研究室にはないファイバ温度計と実験用動物(ミニブタ)の購入が必要である。動物の購入物品費として150,000円を計上している。ファイバ温度計の購入代金として別予算(当学内予算)を充てるが,その一部に予算項目を変更して残金(55,216円)を加える予定である。それでも足りないときは,他項目(旅費,その他)の予算の一部も充当したい。
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Research Products
(8 results)