2012 Fiscal Year Research-status Report
透明から鏡へのクロミズムと透明有機ELによるハイブリッドスマートウィンドウの構築
Project/Area Number |
24560424
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
内田 孝幸 東京工芸大学, 工学部, 教授 (80203537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 陽一 東京工芸大学, 工学部, 教授 (20108228)
山田 勝実 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (70277945)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スマートウィンドウ / 透明有機EL / 電気化学素子 / TOLED / プラズモン / 銀ナノ粒子 / 凝集 / ナノ分散 |
Research Abstract |
本申請の研究は非発光時に透明な特徴を有する「透明有機EL」と透明から鏡に変化する、「エレクトロクロミズム素子」の組み合わせによって、多彩な表示や状態を可能にするものである。申請者らはすでに、透明有機EL素子の研究には実績があるため、本年度は透明から鏡になる素子について検討を行った。 申請の当初、この透明から鏡に変化する素子をMgNi系膜の無機膜を用いる予定であったが、近年、鏡⇔透明⇔黒の3つの状態をバイアス電圧の変化だけで実現できる報告がなされたため、この方法を利用することとして素子の作製を行った。その結果、この既存の報告にあったITOナノ粒子のコーティング電極を用いる方法だけでなく、スプレーCVD法によってITOの結晶成長を促進したITO電極においても、鏡⇔透明⇔黒に変化するスマートウィンドウの作製ならびに評価が出来た。 上述の素子と今回のために新しく構築した評価装置を用いて申請者らは、これらの結果をディスプレイの国際会議の主たる一つであるIDW/AD’12や応用物理学会学術講演会(H25春)において発表を行うと共に、論文(APEX: Applied Physics Express)にまとめ掲載に至った。また、IDW/AD’12の発表では、電子ペーパーの部門(EP)でポスターアワードを受賞した。このように、申請者らのグループにおいて、「透明⇔鏡に変化するスマートウィドウ」の作製、評価が可能となり、当研究室の有する既存の「透明有機EL」の作製技術を組み合わせることが可能となった。今後、この個別の素子の特性向上を図ると共に、当初目的としていた個別の素子を張り合わせた、新奇な発光機能を有する、スマートウィンドウの実現の道筋を明確にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請の研究は非発光時に透明な特徴を有する「透明有機EL」と透明から鏡に変化する、「エレクトロクロミズム」素子の組み合わせによって、多彩な表示や状態を可能にするものである。申請者らはすでに、透明有機EL素子の研究には実績がある。今年度はもう一方の新奇な素子である、透明⇔鏡になる素子の作製、評価を達成することが当初の予定であった。 これに対して、本報告年度(H24年)の年の初旬に外部機関から論文発表のあった、新奇な透明電気化学素子の記載内容を用いて、当初の予定の「透明⇔鏡」の状態変化だけでなく「透明⇔鏡⇔黒」を表示できる素子が構築可能なことが分かった。このため、上記の内容に準じて申請者らで素子を試作し、再現よくこれらが動作することを確認出来た。これらの結果は一部に、申請者らのオリジナリティを加え、論文(APEX: Applied Physics Express、インパクトファクターは約3.0)にまとめ掲載に至っている。また、ディスプレイに関する主たる国際ワークショップ、IDW/AD’12の発表ではポスターアワードを受賞している。このことから、このステージにおいて第3者的にも意義ある評価を得られたと結論できる。 以上の事から、この研究の初年度の達成度は、おおむね順調に進展している状況と位置付けられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要にも述べたように、本申請の研究は非発光時に透明な特徴を有する「透明有機EL」と透明から鏡に変化する、「エレクトロクロミズム素子」の組み合わせによって、多彩な表示や状態を可能にするものである。昨年度までに、これらの目標に必要である、「透明有機EL素子」と「エレクトロクロミズム素子」の作製、評価がそれぞれ独立に構築出来た。今後は、この透明状態が基本(無バイアス)状態とした個別の素子を、積層し、当初の目的にあった、6つの状態[1) 透明、2)鏡、3)黒、4)両面発光、5)片面発光で背面が鏡、6)片面発光で背面が黒] を有する特徴ある素子を作製、評価し、これらを国内外の学会での発表や論文にまとめる。また、これらの内容はガラス(窓)の状態が目に見えて変化することは、科学分野が専門でない一般方々に向けても分かり易い内容である。このため、具体的な応用例の一つである窓への応用を明確にすべく、例えば木枠にこれらの素子を組み込んだような実際の窓に近いモデルを構築し、これらの応用を社会に訴求できる検討も行う。 また、鏡状態の応用である、遮光/熱線反射だけでなく、黒状態による、熱の吸収についての検討を実施する。この素子に用いる透明導電膜はそれ自体、熱線(赤外線)反射を本質的に有するため、この材料の本質的な検討からアプローチする必要がある。しかしながら、冷暖房負荷を軽減し、省エネルギーに寄与できる技術の一つでもあることから、材料特性の改善といった地道な検討も考慮に入れる。これによって、研究の一つ目的である、窓からの熱流入・熱流出をコントロールすることによる省エネルギーの一翼を担える素子構築の検討行う。また、ディスプレイの観点からすれば、透明有機EL素子はそれ自体では、「黒」を表示出来ない欠点があるため、本デバイスの有意性を示す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の目的である、非発光時に透明な特徴を有する「透明有機EL」と透明から鏡に変化する、「エレクトロクロミズム素子」の組み合わせた素子を構築する。この新奇な素子の実現とその発展性を示すべく、次年度では国内外での学会発表や論文を作成する。このための、学会参加費用、出張費用、論文(和文誌・英文誌)投稿費を本研究のマイルストーンとして位置付け、昨年度の残額と合わせた研究経費から、これらを優先し支出する。 このように、本申請提案である「透明発光素子」と「透明反射素子」を具現化し、素子作製、評価を国内外に報告した後は、個々の材料の光透過率、光反射率等の特性改善を地道に検討し、これらの改善を積みあげることで、素子全体の特性改善を目指す。具体的には、透明導電膜構築用の材料の検討、電気化学素子の材料を用意するための費用に充てる。 さらに、学術的な知見の構築だけにとどまらず、窓への応用を明確にすべく、例えば木枠にこれらの素子を組み込んだような窓への応用を社会に訴求できるようなデモ用のモデルについても、一部の費用をあてる。
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