2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560427
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
脇田 絋一 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (20301640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 誠 中部大学, 工学部, 教授 (10236317)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 厚い空乏層 / 空間光変調器 / 高速 / 低電圧駆動 |
Research Abstract |
超高純度化されたGaAs(キャリア濃度は10の13乗立方㎝台)を液相エピタキシャル成長法によって5~10μm厚に成長し、その上にショットキータイプの透明電極を形成して、層に垂直の光入射構成で変調実験を行った。室温で明瞭に観測された励起子吸収のピークが電界印加によって大きく長波長側にシフト(約15nm)することが観測され、電圧10V程度で消光比が15dB以上が得られ、従来のフランツ ・ケルディッシュ(F-K)効果に比べて高効率の光変調ができることを見出した。この値は通常のF-K効果では100V以上の印加電圧ではじめて達成できる値であり、本デバイスの優位性が確認できた。さらに、この励起子吸収は3次元であってこれまでは量子井戸構造に基づく2次元励起子に比べて結合エネルギーは最大で1/4倍弱いことが理論的に予測されていたが、純度を向上して電界の均一性を向上すれば、純度の劣る量子井戸に比べて遜色はないばかりか、空乏層厚を厚くできるため消光比は圧倒的に大きく取れ、作製に高価な装置を必要とする量子井戸構造に比して実用的にもこれを十分凌駕する特性を示した。 素子の応答速度は素子容量と光吸収によって発生したキャリアの走行時間の双方で律速されているため現状の応答時間は1nsec以下である。実用的には通常5Vで動作する駆動系が一般的で、さらに素子構造の最適化により、トレードオフの関係にある素子の応答速度の向上と駆動電圧の低減を図っていく。 また、材料が半導体であり、その加工技術及び集積化技術は成熟しているため、これらの技術を組み合わせて2次元集積化を図っていく。クラマース・クレーニッヒの関係から、吸収係数変化は屈折率の変化に対応しているので、上記の大きな吸収係数変化に基づいた新しい高効率の屈折率制御型光変調も可能となるので、さらに研究を展開していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
素子特性は当初の高純度に伴う厚い空乏層に起因した高消光比は予想していたが、電界印加による励起子吸収の大きなレッドシフト(長波長シフト)は量子井戸構造におけるQCSE(量子閉じ込めシュタルク効果)類似の効果でその出現は理論的に予想される結合エネルギーの小さいことから予想外であって、素子の低電圧駆動化の可能性が大きく開け、当初計画以上の成果となった。また、透明性のショットキー電極も良好な逆耐圧特性で、低リーク電流となり、十分使用できることが判明し、電界印加部に光が透過する構造が作製でき、大幅な低電圧化に成功した。しかし、肝心の高純度結晶成長においてキーとなる水素純化装置が故障し、新たに購入する必要性が発生し、その立ち上げと条件出しに時間と労力を取られることが予想され、当初の進捗計画に齟齬をきたしている。装置メーカでは在庫がなく、受注生産を行っていて高純度結晶の入手に問題を生じ、今年度、来年度は当初計画よりやや遅れることが懸念される。 これまでに作製した結晶を用いてできることは進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように高価な水素純化装置を新規に購入する羽目になり、当初計画の変更を迫られている。水素純化装置の納入、立ち上げ、条件出しに時間がかかるためこれまでに作製した結晶の評価、たとえば屈折率の電界効果の測定やキャリアのライフタイム測定等素子化に必要な基本特性をあらためて測定する予定である、結晶そのものは他に入手困難な純度であるため、測定結果そのものが新しい情報となる可能性は高く、評価に重点をシフトしていく。水素純化装置が稼動し次第、高純度結晶の作製条件を調べ、これまでに達成した条件を本に高純度化に再度挑戦する。そして目標値の残留不純物濃度が10の13乗の低いところに到達したら其の条件で作りこみを実施して安定供給を図る。この結晶を用いて素子化し、当初の狙いの素子特性にできるだけ近づけて行きたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の実験が効率よく進んだ結果、消耗品の支出が予定より小額となり、また、備品も手持ちの装置で当面間に合わせ、上記水素純化装置が故障という突発的な事故で本研究に不可欠のキーとなる高額装置の新規購入が必要となり、24年度研究計画の予算と合わせて25年度予算で水素純化のための高純度水素精製装置を購入することとした。130万円と高価なため、当初計画を変更して高純度結晶ができるようにする。成長条件を初めより調べる必要があるが、これまでに培ってきた経験と実績でできるだけ短期に終了して、新規結晶をプロセスに導入して素子化を図る。一応の目標は残留キャリア濃度を10の13乗台の低いところが目標で、出きればこれを凌駕するレベルにまで到達したい。これまでの最高値は10の12乗台の下の方、空乏層厚にして30μmにまで行っているので、できうる限りこれに近づけることが目標である。 その間、素子設計を進めて構造最適化を検討する。研究実績欄に記述したように駆動電圧低減化と高速化はトレードオフの関係にあるため、どこまで高純度化できるかによって空亡層厚(又は残留不純物濃度)がどれだけ安定的に再現性良く形成できるかにかかっており、少なくともこれまでのレベル以上の高純度結晶を入手する用努力する。また、受光径の大きさが最終的な速度を決める要因となるので、逆にどこまで小さな径までできるか、素子特性との関連性を抑えながら作製プロセスの条件を調べていく。究極の目標は低電圧駆動の集積化素子である。プロセス条件と特性評価とをリンクして最適化に努める。
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Research Products
(12 results)