2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560427
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
脇田 絋一 中部大学, 生命健康科学部, 特任教授 (20301640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 誠 中部大学, 工学部, 教授 (10236317)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 空間光変調器 / 光強度変調 / 低消費電力 / 高速動作 / 高消光比 / 屈折率制御 / 波面制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
光情報処理分野の基幹素子となる空間光変調器の研究開発を目指し、実用液晶素子の応答速度(数ミリ秒)の高速化(サブナノ秒)、低消費電力化(~100Vを10分の1以下、5V)、消光比の向上(>20dB)などの大きなブレイクスルーを目指し、本研究グループ独自の超高純度砒化ガリウム(GaAs)厚膜結晶を作製し(液体窒素温度下における易動度ではこれまでに報告された最高値~31万m2/Vs達成) 、室温にて明瞭な励起子吸収を観測し、電界印加によって励起子吸収のピークが長波長側にシフトする(量子井戸構造で初めて観測された量子閉じ込めシュタルク効果と呼ばれる)現象をバルクで、かつ室温で観測し、これまでに報告例のない大きな吸収係数変化を利用した新規空間光変調器を提案・作製した。10Vで消光比20dB、応答時間サブナノ秒を確認し、さらに高純度化を進め空乏層厚の拡大と内部電界強度分布の均一化により一層の低駆動電圧化(~5V程度)ができる見通しを得た。 また、吸収係数変化を利用した前記変調器では変調機構が光の強度変化のみであり、吸収された光は最終的には熱になるのに対して、励起子の存在のため電界印加による屈折率変化の大きさが従来のバルク素子に比べて格段に(約2倍)大きいことを計算により求め、電界印加による反射率や位相の変化による変調機構の利用によって新しい変調器への展開が可能なことを示した。この機構を用いれば光の波面制御が高速、低電圧で可能となり、一部液晶で研究開発中の先行技術をキャッチアップしていくだけで新たなブレイクスルーになり得るため、次世代の空間光変調器としてのポテンシャルをアピールしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、当研究室にて修士号、博士号を取得した外国人ポスドク研究員が引き続き本課題に参加し主として高純度結晶成長を担務していたが、昨年4月当方に相談もなく急遽出身大学にポストが空いたという理由で帰国し、大幅な戦力ダウンとなった。さらに当方の指導により当人に保持させていた素子作製技術の移転も代替要員不在で不可能となったため、新規に卒研生に本テーマの一部を分担させて、高純度結晶成長の技術(装置の使い方、成長に使用する材料の前処理の方法、成長した結晶のホール効果による評価法等を)教えた。幸い修士に進学したために現在も指導中であるが、まだ完全に一人立ちには至っていないが操作手順はマスターしている。 また、年度計画で述べた半導体と誘電体材料との組み合わせと応力利用によって半導体中での屈折率変化、偏光制御による新しい変調器への挑戦はできなかった。 他方、屈折率の電界依存性に関しては既知の吸収係数の電界による大きな変化のデータを用いてクラマース―クロニッヒの関係から大きな屈折率変化のあることが予測され、この結果を元に新たに電界印加による屈折率変化及び位相変化の可能性について展望が開け、誘電体との組み合わせによる偏光制御素子の代替についてデザインが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの達成度欄に述べたように高純度結晶の成長が最優先課題である。高純度化の技術そのものはすでに確立しており、その技術を可及的速やかに新人に習得させ、一人立ちさせるかにかかっている。高純度化には使用材料や結晶成長炉そのものの前処理やクリーニングが必要でそのノウハウを伝授して所望の純度の結晶を早急に入手する必要があり、目下これに集中している。高純度成長は成長回数に依存しているため、できるだけ多く挑戦していく。以前達成した高純度のレベル(最低の目標で不純物濃度10の13乗cm-3台の低いところ)を目指す。吸収係数変化によるデバイス特性の実証を進め、5V以下の印加電圧で消光比29dB以上を目標とする。 材料の電界印加による屈折率変化に関して達成度欄で記述した誘電体との異種接合による屈折率変化に対応した素子が可能となることから、高純度結晶に到達した後、余裕があれば屈折率変化を応用した空間光変調器の研究を展開していく。当初の誘電体とのヘテロ接合による応力添加による異方性を利用した偏光制御素子は研究を中断せざるを得ないと考えている。
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Causes of Carryover |
前述のように代替要員はいなかったため研究遂行が大幅に遅れ、急遽修士課程に進学する学生を代替要員として育成中であるが、結晶成長は経験が必要で代替要員の立ち上がりに時間がかかり結晶成長そのものの回数がが大幅に減少したことが次年度使用額が生じたその主な理由である。特に高純度化は成長前の準備と装置のクリーニングに手間と時間がかかり、また、成長を繰り返し実施する必要があり、学部・修士学生にはそれなりに時間を遣り繰りするため長時間の成長がしにくく、ポスドク研究員に比べ研究に長時間を集中できない問題があった。現在、少しずつ技術を覚え独り立ちに邁進中で、今年度春学期中には一人前になる予定である。高純度化には成長回数が大切で、順を追って純度は向上する傾向にあるため、繰り返し成長をやっていくことで元のレベル(不純物濃度が10の13乗cm-3台の低いところ)に戻るのも時間の問題と考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高純度結晶成長が最大の課題で高純度化に必須の水素ガス、液体窒素を購入して液体窒素温度下のホール効果測定による易動度、不純物密度の評価を最優先課題とする。 成長が一定のレベル(不純物濃度が10の13乗cm-3の低い値)に至った段階で素子化してデバイス特性を評価する。その時デバイス評価に必要な各種消耗品の準備に使用する。オーミック性電極用金属やショットキー電極用材料の購入、場合によってはマイクロ波実装などにも挑戦して高速性を確認していきたいと考えており、そのためのプローバ等の治具類の購入も考えている。殆どは消耗品の購入に充てる予定であるが、素子単体での原理検証実験ができた場合には単体から2×2,3×3,4×4等のアレイ化にまで研究が進めばアレイ化のためのフォトマスク購入もありうる。また、電極金属や各種露光用レジストの購入にも使用したい。
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Remarks |
当研究室では光の超高速性・超並列性を活かした新しい空間光変調器を研究していて空間的に光の波面を自在に制御でき、従来の液晶等の既存デバイスより数桁速く、数十分の1の電圧で動作するデバイスを研究しています。
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