2012 Fiscal Year Research-status Report
大容量光伝送・光情報処理における出射ビーム制御低発振しきい値半導体レーザー
Project/Area Number |
24560429
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
沼居 貴陽 立命館大学, 理工学部, 教授 (60261351)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 半導体レーザー / 横モード |
Research Abstract |
半導体レーザーの出射ビームを単峰化した状態で高出力化するために、結合光導波路を備えたリッジ型半導体レーザー,および共振器の軸方向と垂直な方向に周期的な屈折率分布をもつリッジ型半導体レーザーについて、有限要素法を用いた解析をおこなった。この研究を通して、屈折率分布とビーム形状の安定性、発振しきい電流との関係を明らかにした。この構造は、基本横モードと高次横モードの波長が異なることに着目したものである。分布帰還型半導体レーザーや面発光レーザーでは、共振器軸方向に屈折率分布を設け、単一波長でレーザー発振を実現してきた。本提案の構造では、共振器軸に垂直な方向に周期的な屈折率分布を設けることで、横モードに対する共振器を作る。こうすることで、特定の共振波長をもつ横モードだけが選択的に光導波路内に閉じ込められ、他の波長をもつ横モードは光導波路から放射される。 結合光導波路を備えたレーザーでは、リッジ中央部に閉じ込められていたレーザー光の一部が結合光導波路に結合することが観測された。現状では、結合光導波路に基本横モードと高次横モードの両方が結合している。今後は、高次横モードのみを放射させることで横モードを基本モードのみとすることが課題である。一方、結合光導波路の高さをリッジよりも低くしたレーザーでは、高次横モードのリッジへの閉じ込めが弱くなり、基本横モードだけで発振する条件を見出した。 共振器軸に垂直な方向に周期的な屈折率分布をもつレーザーについては、これまで用いてきた有限要素法によって解析をおこない、屈折率分布の周期性とビーム形状の安定性、発振しきい電流との関係の解明に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
安定な単峰性出射ビームが得られる半導体レーザーを創出するために、結合光導波路を備えたリッジ型半導体レーザー,および共振器の軸方向と垂直な方向に周期的な屈折率分布をもつリッジ型半導体レーザーについて、有限要素法を用いた解析を予定通りおこなうことができた。平成24年度は、屈折率分布とビーム形状の安定性、発振しきい電流との関係を明らかにすることを目的としていた。現在までに、半導体レーザーの構造と特性との関係を明らかにできており、当初の目的は達成したと考えられる。 結合光導波路を備えたレーザーでは、リッジ中央部に閉じ込められていたレーザー光の一部が結合光導波路に結合することが示されたが、現状では、結合光導波路に基本横モードと高次横モードの両方が結合している。今後は、高次横モードのみを放射させることで横モードを基本モードのみとすることが課題である。結合光導波路の高さをリッジよりも低くしたレーザーでは、半導体レーザーの構造と特性との関係を単に明らかにしただけではなく、安定な単峰性出射ビームが得られる半導体レーザーの構造を見出した。ただし、安定な単峰性出射ビームが得られる半導体レーザー発振しきい電流が従来構造よりも大きくなるという課題があり、発振しきい電流を低減することが今後の課題となっている. 共振器軸に垂直な方向に周期的な屈折率分布をもつレーザーについては、屈折率分布の周期性とビーム形状の安定性、発振しきい電流との関係の解明に着手した。今後は、半導体レーザーの構造と特性との関係を明らかにするとともに、安定な単峰性出射ビームが得られる半導体レーザーの構造を見出すことと、発振しきい電流を低減することが課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、共振器軸に垂直な方向に周期的な屈折率分布をもつ半導体レーザーの3次元解析に着手する。一定の周期をもつ屈折率分布だけではなく、屈折率分布の周期が段階的に変化するテーパー型についても、並行して解析に着手する。この構造においても、周期数、水平方向の段差の間隔、凹部の幅、凸部の幅、凹凸の段差とビーム形状の安定性、発振しきい電流との関係を明らかにすることを目指し、平成25年度末までに傾向の把握をする。 ビーム形状制御の発展として、ブルーレイディスクを超える高密度光記録・読み出しを目指して、エバネッセント光を効率よく出射するための半導体レーザーの研究にも着手する。平成25年度末までに、光導波路の角度とエバネッセント光の浸み出し、発振しきい電流との関係の傾向の端緒を把握する。 平成26年度は、共振器軸に垂直な方向に周期的な屈折率分布をもつ半導体レーザーについては、最適化を意識しながら傾向を明らかにする研究に取り組む。屈折率分布の周期性とビーム形状の安定性、発振しきい電流との関係を平成26年度末までに明らかにし、新規構造の提案にまで踏み込む。屈折率分布の周期が段階的に変化するテーパー型については、最適化をはかる。エバネッセント光を効率よく出射するための半導体レーザーについては、最適化を意識しながら傾向を明らかにする研究に取り組み、最適化のための手掛かりを得ることを目指す。そして、導波光ビームを出射しないでエバネッセント光だけを取り出す構造や、導波光のモニターとしての使用についても検討を始める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまで2次元の光導波路の解析をおこなってきたが、今後の研究を推進するためには、3次元の光導波路の解析が必須となる。そこで、3次元光導波路を有する半導体レーザーの解析が可能なシミュレーションソフトウェアとしてPICS3D完全パッケージ(クロスライトソフトウェア社,価格2,205,000円)を導入する予定である。 なお、平成24年度に未使用額511,033円が生じた。この理由は、国際学会(PIERS 2013)の開催地が当初予定していた米国ではなく台湾・台北市になったため、出張旅費が大幅に少なくなったことと、この国際学会(PIERS 2013)の開催時期が2013年応用物理学会春季学術講演会と重なり、応用物理学会春季学術講演会の出張がなくなったことによる。平成25年度は、8月12日~15日にスウェーデンのストックホルムで開催される国際学会(PIERS 2013 in Stockholm)に投稿論文が採択され、研究発表することが決まっている。当初予定していた米国よりも出張旅費が増加することが予想されるとともに、上記のPICS3D完全パッケージ(クロスライトソフトウェア社,価格2,205,000円)を導入することから、平成24年度の未使用額511,033円を組み込んだ予算を全額使用する見込みである。
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