2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560434
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
関根 徳彦 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所超高周波ICT研究室, 研究マネージャー (10361643)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | テラヘルツ / 光デバイス / カスケード / レーザ |
Research Abstract |
本研究では、テラヘルツ(THz)領域の光源の実現を目的としており、特に新たな高性能THz帯量子カスケードレーザ構造の検討を、本年度はシミュレーションに重点を置いて行った。 (1)THz帯量子カスケードレーザは、その発振のために、量子井戸内に形成される量子準位間でキャリアの大きな反転分布ができることが必要であるが、良好な温度特性を有するレーザとするためには、電子のキャリアダイナミクスの理解が不可欠である。しかし、活性構造に起因する複雑さ故、挙動を理解することは容易ではない。そこで、第一原理計算により、活性層構造を変えた際のキャリアダイナミクスの検討を行うべく、活性層構造の数値計算環境の整備を行った。 (2)上記はレーザ内部の物理的側面からの動作の解明、特性向上についてのものであるが、一方でレーザは、いわば一つのモジュールでもあるために、活性層構造のみでなく、構造体としての特性(導波路損や熱伝導特性など)もレーザ発振特性や温度特性に大きな影響を与える。しかも従来の通信レーザと比して、導波路サイズと発振波長の比率も大きく異なってくる。そこで、THz帯の発振波長を有するレーザが、どのような導波路構造を取るべきかについて、熱-電流解析により検討し、熱的に有利な導波路構造を考案した。さらに、この構造はTHz光の伝搬モードをほとんど乱すことが無いことも電磁界解析により確認した。 (3)レーザ活性層のキャリアダイナミクスを実験的にも調べるため、外部励起光を入射することにより活性層内部に擾乱を与え、レーザ出力への影響を調べた。その結果、(初期的ではあるが)活性層の量子準位が関与するとみられる応答が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、シミュレーションによる最適な構造の検討を重点おいている。導波路構造の検討について、THz帯の光学モードを乱さないまま、熱特性を(形状により)大幅に変えることができることを見出したことは、大きな進展と見ることができる。しかしながら、活性層構造の検討については、(種々の理由があるとはいえ)数値計算環境の整備とそれを用いた簡単な検討に留まったことは、やや遅れていると言わざるを得ない。また、活性層内のキャリアダイナミクスについて、(端緒についたばかりではあるが)実験的な検討を開始できたことは、計画外の進展と言える。 以上を鑑み、上記の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度から引き続き高性能THz帯量子カスケードレーザ構造・作製方法の理論検討を行うが、これと並行して、量子カスケードレーザ構造の作製・評価を始める。また、得られた結果から、デバイス特性を決定している物理機構を明らかにする。 [量子カスケードレーザ活性層構造の作製・評価]:量子カスケードレーザ構造の結晶成長に関しては、これまでも行ってきたが、その際に膜厚制御は当然のこととして、ドーピング量や活性層内におけるドーピング位置が重要であることが次第に明らかになってきている。これらの構造的特性を、従来から保有しているX線解析装置や最近導入したCVプロファイラなどを駆使することにより測定し、実際に作製した素子の発振(もしくは発光)特性・電流-電圧特性と比較する。これにより、その因果関係を物理的側面から明らかにするとともに、活性層構造及び結晶成長条件にフィードバックをかける。また、先の素子特性は前年度から行っているシミュレーションとの比較を取ることも重要であるため随時行い、活性層構造設計への指針を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度、「次年度使用額(B-A)」が生じたが、当初購入予定のシミュレーションソフトに関し、伝熱モジュールの付加部分のみで済んだためである。次年度は、これと当初請求分を合わせて、実際にTHz帯量子カスケードの活性層の作製を行うための半導体基板や低温測定に使用する寒剤に使用する予定である。また、本課題で得た成果を発表するための費用にも充てる。
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