2013 Fiscal Year Research-status Report
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24560434
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
関根 徳彦 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所超高周波ICT研究室, 研究マネージャー (10361643)
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Keywords | テラヘルツ / 光デバイス / カスケード / レーザ |
Research Abstract |
本研究はテラヘルツ(THz)領域の光源実現を目的とし、特に量子カスケードレーザ構造の検討を行っている。本年度は引き続きシミュレーションを進めると共に、得られた結果を設計に反映することで、実際の作製も始めた。 (1)THz帯量子カスケードレーザは、多重量子井戸内に形成されるレーザ発光遷移を担う量子準位間でなるべく大きな反転分布ができることが重要であり、良好な温度特性を有するレーザとするためには、電子のキャリアダイナミクスの理解が不可欠である。前年度準備を進めた第一原理計算環境を用い、活性層構造を変えた際の発光特性へ与える影響を調べた。その結果、ある設計パラメータ範囲内で、利得や温度特性の向上が期待できる構造が可能であることが分かった。この構造を基に、量子カスケードレーザ構造の作製を開始した。 (2)上記のレーザ活性層構造の検討と共に、前年度より行っている導波路特性(導波路損や熱伝導特性など)の検討も引き続き行った。THz帯量子カスケードレーザは、導波路サイズが幅100μm程度と広いため、熱の対策が非常に有効であるが、同時に光伝搬の観点からの検討も必要である。今回、熱特性・導波特性の双方を考慮したFigure of merit(FOM)を新たに定義し、マルチストライプ導波路の構造パラメータによる影響を調べた。その結果、熱特性と伝搬モードの間には一種のトレードオフのような関係があり、FOMとして最適な値となる構造が存在することが判明した。この構造は、現在のプロセス技術で作製可能な範囲内である。 (3)レーザ活性層のキャリアダイナミクスの実験な理解を得るため、外部励起パルス光を入射することにより活性層内部に擾乱を与え、レーザ出力への影響を調べた。パルス光照射前の初期の状態に戻るまでの緩和時間が長いという測定結果が得られていたが、外部光による熱的影響が強く示唆されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、シミュレーションにおいて、活性層構造・導波路構造の双方について行い、おおよその設計指針が得られた。特に導波路構造では最適パラメータ範囲を見出すことができたことは意義があり、また活性層構造についても設計指針が得られた点では進展と見ることができる。しかしながら、量子カスケード構造の作製に関しては、(内的な事情によりクリーンルーム全体をシャットダウンしなければいけなかった理由があるとはいえ)ウェハの結晶成長のみに留まってしまい、やや遅れていることを認めざるを得ない。また、活性層内のキャリアダイナミクスについては、実験的な検討が順調に進み、デバイス特性改善へ繋がる進展と言える。 以上を鑑み、上記の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度から引き続き高性能THz帯量子カスケードレーザ構造・作製の検討を行い、量子カスケードレーザ構造の作製・評価を行う。 [量子カスケードレーザ構造の作製・評価]:前年度に行った構造設計を基に量子カスケード構造の結晶成長を行う。この際、ドーピング量や活性層内におけるドーピング位置が重要であることが認識され始めているため、層構造も含めた特性を、X線解析装置やCVプロファイラなどを駆使することにより測定し、実際に作製した素子の電気・発光特性等と比較検討する。 [量子カスケードレーザ導波路構造の作製・評価]:前年度から引き続き行っているシミュレーションをもとに、導波路構造の作製(導波路自身やその周辺構造・プロセス手順など)に関し、THz光を扱うのに最適なレーザ導波路構造・作製条件を検討する。具体的には、電磁界解析・熱解析により得られた導波路構造の作製に最適なプロセスの検討を行う。そして、実際に導波路の作製を試み、それが電流注入時の温度特性にどのような影響を与えるかを、電流-電圧特性や量子井戸からのエレクトロルミネッセンススペクトル(必要であれば別の量子井戸構造を有する導波路構造からのフォトルミネッセンススペクトル)などから実験的に評価・検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度、「次年度使用額(B-A)」が生じたが、これは当初量子カスケードレーザの作製などで使用予定であったが、結晶成長のみで留まったためである。 次年度は、これと当初請求分を合わせて、実際にTHz帯量子カスケードレーザの作製を行うためのプロセス資材や低温測定に使用する寒剤に使用する予定である。また、本課題で得た成果を発表するための費用にも充てる。
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[Presentation] Near-infrared Pulse Induced Modulation of Quantum Cascade Lasers2013
Author(s)
Y. Sakasegawa, S. Saito, N. Sekine, M. Ashida, and I. Hosako
Organizer
the 10th Conference on Lasers and Electro-Optics Pacific Rim, and the 18th OptoElectronics and Communications Conference/ Photonics in Switching 2013 (CLEO-PR & OECC/PS 2013)
Place of Presentation
Kyoto International Conference Center, Kyoto (Japan)
Year and Date
20130630-20130704
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