2013 Fiscal Year Research-status Report
高音質・高速収束ステレオエコーキャンセラに関する研究
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24560446
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
平野 晃宏 金沢大学, 電子情報学系, 講師 (70303261)
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Keywords | 信号処理 / エコーキャンセラ / 前処理 / サブサンプル遅延 |
Research Abstract |
2種類のFIR形フィルタを周期的に切り替える方式と非線形フィルタを組み合わせる前処理方式を開発した。従来法と同等以上の音質で、収束速度を25%程度改善できる。 周波数領域でFIR形フィルタの設計を行い、全周波数帯域に一定の遅延と振幅の変化を与えた。まず、遅延変化のみを与えたフィルタを用いて2個のフィルタの切り替えによって生じる遅延時間差と収束速度の関係を測定した。遅延時間差が約0.8サンプルの時に収束速度が最も高速になり、それより大きな遅延を与えても収束速度は若干低下することを示した。この結果、従来法である1サンプル遅延よりも音質を向上させつつ、収束速度を高速化することができた。振幅特性としては、遅延による音像移動とは逆方向になる振幅変化を用いた。さらに、非線形処理を追加することによって、音質の大きな変化なしに収束速度を改善できることを確認した。 収束特性を定量的に評価するために、複数の音声信号を用いて係数誤差やエコー抑圧率の集合平均を求め、その時間変化を比較した。収束速度を25%程度改善できる。 音質を評価するために主観評価実験を行った。隠れ基準付三刺激二重盲検法(triple stimules/hidden reference/double blind approach) を用いて、被験者15人が評価した。1サンプル遅延のみの従来法と比べて、フィルタの切り替えのみを行った場合は統計的有意差を持って音質が向上した。非線形処理を加えると、従来法と同等なった。 大量のシミュレーションを高速に実行するために、Xeon Phiを用いた並列計算機を導入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1サンプル未満を含めて、遅延時間差と収束速度の関係を調査した。従来は遅延時間差が大きいほど収束特性が良くなると予想されていた。しかし、1サンプル未満に最適値があることが実験的に確認された。これは、従来の予想を完全に裏切る新しい成果である。しかも、遅延時間差を小さくすることにより、音像定位のゆらぎが小さく抑えられ、音質改善にも貢献している。
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Strategy for Future Research Activity |
収束速度のさらなる改善を目指す。現在は2種類の前処理フィルタを周期的に切り替えている。入力音声や収束状況に応じた制御を導入することによって、劣化を抑える、あるいは、収束を高速化することを検討する。 非線形処理の改良も検討する。例えば、音声レベルに応じた切替を考える。
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