2012 Fiscal Year Research-status Report
人体通信と400MHz帯無線を併用するデュアルモードボディエリア通信方式
Project/Area Number |
24560452
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
王 建青 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70250694)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ボディエリアネットワーク / 人体通信 / 医療・ヘルスケアICT |
Research Abstract |
本研究の目的は,人体通信技術によるウェアラブルBAN(Body Area Network)と400MHz帯無線技術によるインプラントBANのデュアルモードボディエリア通信方式の開発である.平成24年度では,人体通信伝送路モデルの構築とデユアルモード通信機構成の検討を中心として,次のように研究を遂行した. まず,医療・ヘルスケア用を想定した代表的な姿勢の人体数値モデルを作成し,各種生体センサーの配置位置に対して,電磁界シミュレーションにより,人体通信伝送路のモデリングを行った.その結果,人体伝送路のパスロスモデルが導出でき,シャドウイング効果も標準偏差2dB程度の対数正規分布で表現できることを明らかにした.また,人体通信用小型電極を試作し,複数の人体に対して伝送路特性の実測を行い,伝送路モデルの妥当性を検証できた. 次に,人体通信の伝送路モデルと研究代表者の従来研究で導いた400MHz帯体内伝送路モデルを用いて,デュアルモード機能を備える受信機の構成を検討した.400MHz帯アンテナとしてミアンダダイポール型を提案し,それの人体通信電極との共用可能性も計算機シミュレーションにより確認した.また,ウェアラブルBANとして1Mbps,インプラントBANとして10Mbpsの伝送速度を目指し,デュアルモードの構成及び両周波数帯信号の分離が容易な変復調方式を検討した.平均ビット誤り率を評価指標とした計算機シミュレーションの結果,受信フロントエンド部に帯域フィルタを設けて両モード信号を分離する方式とOOKまたPPMを用いたインパルスラジオ変調方式の併用が,受信機構成の簡易化及び十分な通信性能の確保に有利であり,それを基本としたデュアルモード送受信機の構成を決定した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,人体通信技術と400MHz帯無線技術の併用による高信頼性・高秘匿性を目指したデュアルモードボディエリア通信方式の開発を目的としている.具体的には,①人体通信の伝送路特性の解明と伝送路モデルの構築,②人体通信によるウェアラブル通信と400MHz無線によるインプラント通信の両方に対応可能なデユアルモード通信方式及び通信機の開発,及び③人体及び埋め込み型医療デバイスへの電磁適合性(EMC)の確保を目指している.平成24年度では,主に①及び②の前半の達成を研究目標とした. その結果,①については,医療・ヘルスケア用を想定した直立,座り,歩行,就寝などの姿勢の人体数値モデルを作成し,電磁界シミュレーションにより,代表的な日常姿勢及び送受信位置に対し,人体伝送路の周波数特性,距離減衰特性及び時間遅延特性を求め,計算結果の統計処理により,人体通信周波数帯における伝送路モデルの構築ができた. また,②については,まず,400MHz帯ミアンダダイポール型アンテナを提案し,それが人体通信電極と共用できることを計算機シミュレーションにより確認できた.次に,デュアルモードの構成及び両周波数帯信号の分離が容易な変復調方式をビット誤り率の観点から検討し,OOKまたPPMを用いたインパルスラジオ(IR)方式を採用することで,デュアルモード受信信号の帯域フィルタによる分離が容易に構成でき,受信機の簡易化と通信性能の確保が両立できることを明らかにし,デュアルモード通信機の基本構成を決定できた. よって,本年度の目標はすべて達成でき,研究は順調に進展している.なお,本年度の研究成果は,1編の学術誌論文,3編の国際会議論文,及び著書の一部にまとめられ,公表している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の成果を踏まえ,平成25年度においては次のように研究を実施する. まず,前年度で決定したデュアルモード送受信機構成に対し,構築した伝送路モデルを用いて,計算機シミュレーションにより変復調方式の平均ビット誤り率を詳細に評価し,所要送信電力を明らかにする.また,送信電力と人体比吸収率(SAR)及び心臓ペースメーカーなど埋め込み型医療機器への電磁干渉の定量関係を導き,人体安全性を確保しながら送受信機の変復調方式の最適化を図る.具体的には, ①人体通信によるウェアラブルBANに採用した変調方式について,ビット誤り率対送信機装着位置,ビット誤り率対送信電力の通信特性を計算機シミュレーションにより明かにする.②400MHz帯無線技術によるインプラントBANに採用した変調方式について,ビット誤り率対送信機装着位置,ビット誤り率対送信電力の通信特性を計算機シミュレーションにより明かにする.③人体表面装着及び体内埋め込み送信機の送信電力と人体SARとの定量関係を電磁界シミュレーションにより明らかにする.④人体表面装着及び体内埋込み送信機の送信電力と埋め込み型心臓ペースメーカーへの干渉電圧の定量関係を筆者らの提案した非線形回路解析法を用いて算出する.⑤上述①~④の検討結果を基に,通信特性(ビット誤り率,伝送速度,送信電力)と電磁適合性(EMC)評価の二つの視点から総合的に考察し,人体安全性の確保とともに所要な通信性能が達成できる送受信機のスペックを決定する. これらの成果を基に,平成26年度ではデュアルモード通信機の試作と実験的検証を行い,本提案方式の有効性を実証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では,受信機構成・変復調方式に対する通信性能の計算機シミュレーションによる詳細検討及びEMC的解析評価を中心に研究を実施するため,各種シミュレーションツールの増強,計算機演算能力の向上,及びこれらの大量のシミュレーションを実施するための研究補助が必要であり,このためのツール購入及び人件費を中心に研究経費を計上している.具体的には, PCワークステーション:1台,30万円, シミュレーションソフト・計算機周辺部品: 20万円, 研究補助者人件費: 45万円 を計上している.さらに,今年度にボストンでBodyNet国際会議が開催される.これは,本研究で得た成果をアピールする絶好の場である上に,ボディエリア通信分野の情報収集に極めて貴重な場でもあり,本研究代表者はそれに出席し,研究発表と資料収集を行うための旅費として25万円を計上している.
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