2013 Fiscal Year Research-status Report
人体通信と400MHz帯無線を併用するデュアルモードボディエリア通信方式
Project/Area Number |
24560452
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
王 建青 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70250694)
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Keywords | ボディエリアネットワーク(BAN) / 医療情報通信技術(MICT) / 人体通信 / インプラント通信 |
Research Abstract |
本研究の目的は,人体通信によるウェアラブルBANと400MHz帯無線によるインプラントBANのデュアルモードボディエリア通信方式の開発である.平成25年度では, ①人体通信によるウェアラブルBANと400MHz帯無線によるインプラントBANに伝送速度が2のべき乗関係を持たせたパルス位置変調方式を採用し,デュアルモード受信機側では,まず人体通信周波数帯と400MHz帯の2個の帯域フィルタを用いてウェアラブルBAN信号とインプラントBAN信号を分離した.その後それぞれ検出されたエネルギーの大小と閾値との比較から信号の有無を判断し,信号ありと判断された場合にはエネルギー検波でデータの復調を行った.ウェアラブル及びインプラント伝送路における計算機シミュレーションの結果,ウェアラブルBANでは-20dBmの送信電力で10Mbpsの伝送が実現でき,インプラントBANでは13dBmの送信電力では30Mbpsのデータ伝送が15cmまで可能であることを明かにした. ②ウェアラブルBAN及びインプラントBAN通信機の送信電力と人体SARとの定量関係を電磁界シミュレーションにより解析し,局所SARが10gあたり2W/kgを超えない送信電力20mWではウェアラブルBANでは100cm以上,インプラントBANでは17cmまで通信できることを明らかにでき,所要送信電力によるSAR値は人体安全指針値を下回ることを確認した. ③ウェアラブルBAN及びインプラントBAN通信機の送信電力と埋め込み型心臓ペースメーカーへの干渉電圧の定量関係を電磁気的・回路的統合解析を行い,所要送信電力による心臓ペースメーカーへの干渉電圧が誤動作閾値に対し25dB以上の安全マージンを有することを示した. 上述の検討結果を基に,通信特性と電磁適合性評価の2つの視点から総合的に考察し,デュアルモード通信機のスペックが決定できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の実施計画は,(1)人体通信によるウェアラブルBANの伝送路モデルの構築,(2)人体通信及び400MHz帯無線通信の両方に対応可能なデュアルモード通信機の構成の確立,及び(3)通信機の開発と実験的検証である.これに向けて,平成25年度では上記項目(2)まで予定通り遂行できた.具体的には, ①人体通信によるウェアラブルBAN及び400MHz帯無線によるインプラントBANパルス位置変調方式について,研究実績概要で述べた通り,ビット誤り率対送信電力の通信特性を計算機シミュレーションにより解明できた. ②ウェアラブルBAN及びインプラントBAN通信機の送信電力と人体SARとの定量関係を電磁界数値解析により計算し,研究実績概要で述べた通り,所要送信電力によるSAR値は人体安全指針値を大きく下回ることが確認できた. ③ウェアラブルBAN及びインプラントBAN通信機の送信電力と埋め込み型心臓ペースメーカーへの干渉電圧の定量関係を算出し,所要送信電力による心臓ペースメーカーへの干渉電圧が誤動作閾値に対し25dB以上の安全マージンを有することが示せた. そして,これらの目標達成により,通信特性(ビット誤り率,伝送速度,送信電力)と電磁適合性評価の二つの視点から総合的に考察することができ,人体安全性の確保とともに所要な通信性能が達成できる送受信機のスペックが決定できた.さらに,平成26年度予定の通信機試作と実験的検証については,既に本年度でウェアラブルBANの人体通信機部分の試作を完了し,心電図などの生体情報検証実験が進んでおり,その結果も国際及び国内学会で一部発表している.よって,平成25年度当初に挙げたすべての目標が達成された上に,平成26年度の研究計画も進んでおり,当初の計画以上に進展している. なお,これらの成果は3編の審査有学術論文,6回の国際・国内学会発表として公表された.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では,デュアルモード送受信機を開発し,本提案方式の有用性をファントム実験と病院での実測により検証する.なお,平成25年度ではウェアラブルBANの人体通信機の部分の試作と検証が既に進んでいるため,今後はインプラントBANの400MHz帯無線通信機の部分の試作と検証を中心に進める. ①前年度での検討を通して決めた送受信機のスペックを実現するインプラント送受信機の試作を行う.このとき,送受アンテナはウェアラブルBANでは30MHz帯,インプラントBANでは400MHz帯とし,増幅部,変復調部はディスクリード部品で組立て,ビット誤り率の測定を可能とする入出力部も設け,通信特性の定量評価を可能とする. ②ウェアラブルとインプラントBANの両方の通信特性を実測し,動作・性能を検証するために,人体特性を模擬した液体ファントムを用いる.ファントムの電気特性は誘電体プローブとネットワークアナライザを用いて同定し,筋肉組織に近いものとする.そして,ウェアラブル通信機とインプラント通信機が通信するときのビット誤り率の測定を通じて,デュアルモード通信機としての性能を明らかにする. ③大学病院の研究協力者の協力を仰ぎ,実人体におけるウェアラブルBAN及び動物におけるインプラントBANの通信性能の実験的検証を行い,本方式の実用性を立証する.
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