2012 Fiscal Year Research-status Report
ローカルエリアパワーネットワークのための回路モデルの構築
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24560456
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久門 尚史 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80301240)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ローカルエリアパワーネットワーク / 回路モデル / 電磁現象 / 電力フロー |
Research Abstract |
電力配線部のモデル化の基礎として,導体に沿った電磁エネルギーの伝搬現象のモデルを構成するため,まず単導体に対して電流を注入した場合の伝搬メカニズムを単導体素子モデルにより検討した.単導体素子モデルは,1つのセル内では光速で減衰することなく伝搬するモデルであるが,次のセルへの伝搬は電磁誘導に基づいて境界条件から導出され,全体は遅延方程式で記述される.このモデルでは,ステップ電流を注入した場合,なまりを伴って伝搬することが知られていたが,ポインティングベクトルを評価することにより,そのなまりによる減衰がが放射される電磁エネルギーに対応して発生していることが明らかになった. また異種半径の単導体配線を接続した場合の現象について,通常の2導体分布定数線路では特性インピーダンスの変化として反射透過現象が説明されるが,単導体に関しては特性インピーダンスが定義できず,現象を明確化することが難しかった.それに対して,単導体素子モデルにおいて断面が変化する部分での境界条件を適切に定めることにより,異種半径の単導体を接続した場合の現象が再現できることを示した.また,エネルギー保存が成立した形で数値電磁界解析のできるFIT法(有限積分法)との比較から提案手法の妥当性が確認できた.また,このモデルを2本並列にした場合には通常の分布定数線路モデルの反射透過と一致することも確認した. 一方,パワーエレクトロニクスなどのスイッチ素子を含む電源部の等価回路モデルとして過渡領域のテブナン・ノートン等価回路を構成した.これは,スイッチによって時変システムになる回路に対して,時間的に分割することにより,時不変システムを接続する形でモデル化を行う.実際に過渡領域での等価回路が妥当であることをシミュレータの結果と比較することにより確認した.また,状態平均化法に対してラプラス変換により等価回路を導出する方法も開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電力配線部の電力フローのモデル化に関しては,従来の単導体素子モデルによる説明では伝搬にともない発生するなまりの原因が明確化できていなかったが,導体周辺の電磁界に対するポインティングベクトルを用いたエネルギー流の解析から,そのなまりが電磁放射に対応することが明確になった点は,新しい電力フローモデルへの糸口が見つけられたと意味で重要である.これを基にして,伝搬遅延と放射の対応を関係ずけられるモデルが期待できることになった. また,異種半径の導体を接続した場合の電磁現象のモデル化については,従来の単導体素子モデルでは等しい半径の配線のみ考えていたが,新たな境界条件を与えることにより,反射透過現象が表現できるようになったことは,次のよりマクロな回路モデルへの基礎が固められたことになる.また,実際にエネルギー保存が満たされた電磁界解析と比較して妥当な結果が得られていることから,信頼性に関しても確認できた.一方で単導体の場合の反射透過現象は通常の分布定数線路の反射透過と異なることも分かったため,そのよりマクロなモデル化が重要になる. 電源部のスイッチモデルに関しては,通常の定常状態のテブナン・ノートン等価回路とは異なる過渡領域のテブナン・ノートンという考え方により,まず理想スイッチの場合について複素周波数を用いたラプラス変換によりモデル化できることが確認できた.これにより,スイッチ素子を含む場合の基本的取り扱い方が明確化できたことになる.また,状態平均化法を用いる場合においては,連続モードに対して精度のよいモデル化が可能なことが確認できた.これらの精度の良いモデル化が可能なことが分かったことから,今後新たな等価回路を導出する上で基本的なツールが揃ったことになる.
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Strategy for Future Research Activity |
電力配線部の電力フローモデルに関しては,現時点の単導体素子モデルに対して,よりマクロな簡単化されたモデルを構築することが必要になる.そのためには,特に伝搬遅延のもたらす影響をより詳細に評価することが重要になる.今後は遠方界放射という現象と,伝搬遅延によりなまりの関係をMaxwell方程式とそこから導出される回路モデルに基づき明確化していく予定である. また,異種半径導体を接続した場合については,反射透過現象を表現できるより簡単な等価回路モデルの構築が重要になる.一方で,分岐が存在する場合についても,単導体素子によるモデル化に加えてよりマクロなモデル化について検討を行ない,電力を独立変数とした定期化の可能性を検討する. 電源部のモデル化に関しては,初年度の基本的なモデル化から発展させて双方向スイッチによるブリッジ構造を基礎に置くモデル化手法を構築することが課題になる.これにり,PWM変調などの種々の変調手法を統一的に扱うことができる可能性がある.具体的には双方向AC-DC変換装置などを視野に入れて,その適切なテブナン・ノートン等価回路の導出を検討する.また,実際のローカルエリアネットワークの実現性を検証するため,双方向AC-DC変換器を用いた複数電源と複数負荷の孤立ネットワークを構成し,提案モデルの妥当性に関して検証を行う.これにより従来の個別モジュールの評価からネットワークとしてのシステム評価の可能性を検討する. 一方,トポロジーに関して成立するテレゲンの定理に基づいて,ポテンシャルを考えることにより,電力フローを適切にモデル化する手法について検討をおこなう.これにより電力フローの物理現象としての扱いが明確化できることが期待できる.また,実際の回路によるそれらの検証についても検討を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
配線に沿ったエネルギー伝搬について,これまでの単導体素子モデルに対し,よりマクロなモデルを構築し,妥当性を法化するために,エネルギー保存則を満たしながら電磁界解析を行える有限積分法に基づく電磁界シミュレータ(CSTMW Studio)を使用する.これは1年単位のライセンスとして取得する予定である. また電源部のスイッチ回路のブリッジ構造のモデルについて,その妥当性を検証するために実際に双方向AC-DC変換装置を試作し,その評価を行う.このために,損失の少ないPOWER MOSFETやディジタル制御を行うマイクロコンピュータ,容量の大きいコイル,コンデンサ,センサ,無線送信装置(ZigBee) などの電子部品を用いる.これらを用いて実際に動作するモジュールを試作することにより,電源部の等価回路モデル化手法やその妥当性について検討を行う. また,実際に試作した双方向AC-DC変換装置を用いたローカルエリアネットワークを構築するためには,複数の独立した電源が必要になる.本研究ではそのためにリチウムイオンバッテリーで駆動できる電源装置を購入する予定である.また,負荷を模擬するための装置としては電子負荷装置を購入する予定である.これらによって,ローカルエリアネットワークの交流ネットワークシステムとしてのモデル化の妥当性を評価し,これを用いて複数の電源から複数の負荷へ通信により協調をとりながらパワーフローを制御する可能性について検討を行う. また,本研究に関して国内における成果発表と資料収集を行う予定である.
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