2013 Fiscal Year Research-status Report
コモンモード伝送と自己給電によるグリーンPLCのための基礎研究
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24560461
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
都築 伸二 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (60236924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 芳郎 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (00110833)
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Keywords | スマートセンサ情報システ ム / PLC(電力線通信) / 低消費電力 / エネルギ管理システム / ディファレンシャルモード / 漏えい検出 / マイコン / 一線式PLC |
Research Abstract |
(1)一線式PLC伝送方式の開発:2012年度には、漏電ブレーカの誤動作問題と従来のDifferential-mode伝送時の信号減衰問題の両方を回避できる方式として、PE線(Protective Earth, コンセントの3番目のアース端子)とN(Neutral)線間に信号を注入するN-PE方式が最良であることを見出した。2013年度は、研究室以外に、一戸建て家屋、商用ビル、大学の講義棟、研究棟、ハワイのホテルで提案方式を検証したところ、ノイズ環境が劣悪な講義棟以外で提案方式が有用であることを明らかにした。またN-PE方式でも、ビルのフロア間での通信は困難であったが、フロア間を縦断するケーブルを用いて(1線のみでよく、信号の帰路は大地を用いるシングルエンド型伝送方式)インダクティブカプラでPLC信号の注入抽出を行う一線式PLC伝送方式を開発した。 (2)(1)の方式はDiff-modeとは直交しないためCommon-modeではないが、伝搬路は同じ大地をとおるため、不要輻射問題を起こす可能性がある。筆者らが従来から取り組んでいるPLC信号の漏えい検出法の一つであるPPS(Periodic Packet sound)法に関する研究成果を論文発表した。 (3)自己給電:市販されているクランプ型電流センサ(コアはフェライト)、および自作の非接触給電トランス(コアは珪素鋼板)による、商用周波数で20アンペア流れている電力線からの自己給電の可能性を検討した。前者は400mW(3kΩ)まで給電可能であったが、負荷インピーダンスを大きくする必要があるため,低インピーダンスのDC-DCコンバータへの給電が難しい。一方後者は5W(1.5kΩ)まで給電可能であり、本研究の目的(所望のマイコンに給電)の場合には、0.8A以上商用電流が流れていれば自己給電できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)家電機器の消費電流を測定しかつ、カレントトランス(CT)による誘導電流を用いて自己給電しながらPLCを行うSelf-Powered PLC(SP-PLC)の実現:商用電源電流を電磁誘導で取り出してモデムに給電する方法の目途はついている。 (2) コモンモードを利用したPLC通信品質の改善: 検討の結果、提案時とは異なる手法となったが、N-PE伝送方式および一線式PLCの開発に成功したため、計画どおりの進捗である。 (3)PLCの変復調を2値FSKとし、その機能の大半をマイコンに取り込むことによって、省電力・低コスト・小型化を図る: マイコンにFSK機能を実装できたので、小型化の目途はついている。ただし32ビットマイコンを使っているため、今後はこれを8ビットマイコンに移植して、より低消費電力化・低コスト化を図る。 (4)商用電源からの給電を全く使わないSP-PLCシステムによるユーザ認証:PLC信号のみで給電を行うSP用電源回路の開発は未着手である。ただし予備実験として、より難易度の低いワイヤレス給電(20MHz帯)用の電源回路の開発を先行して行った。試作機の変換損失は8dBだったが、主な損失要因であった初段の全波整流用ダイオードおよび整流後のLPF用コンデンサの再選定を行い改善できた。これらの成果を本研究に適用してゆく予定である。 (5)スマート分電盤、HEMS、およびBEMSへの適用: EV用ガレージ充電システムの開発はほぼ終わっている。今後放電制御も行えるようになる見込みである。従ってSP-PLCが開発できればこれを適用実験の準備はできている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)測定すべき電気機器への電流は60Hzであり、SPは主としてPLC信号から自己給電するが、開発した一線式PLC方式をベースにして、60Hz~10kHzまでのノイズからも給電する。 (2)PLC信号の変調方式はIEC 61334-5-1国際規格のS-FSK(Spread FSK)方式を検討する。このFSK変復調回路の前にはf0~f1の信号成分のみが通過するBPF(Band Pass Filter)を挿入する等により、3つの周波数帯域でCT(電流トランス)を動作させる必要がある。これらの周波数域での3つの回路の入力インピーダンス特性をもとに、CT用のトロイダルコアの設計(二次巻線の巻数、二次側の抵抗、およびコアの選定)を行う。 (3) SP部でスーパーキャパシタに十分蓄電できたらPLC変復調回路・マイコン・電流測定回路を起動させ所望の通信を行い、蓄えた電力を消費し終えたら再びスリープする。マイコンは、8ビットCPU(Atmel社AVR)を予定しており、平成25年度に別途開発したアルゴリズムを流用し、省電力・低コストを実現する。 (4)プラグイン型EV用の充電ケーブル(EVSE; Electric Vehicle Supply Equipment)を参考にしながら、電源側の供給能力に応じて、電気機器を動作させる、いわゆるDSM(demand side management)型の「スマート分電盤」を試作する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
*当初「交流電子負荷、菊水社PCZ1000A、808.5千円」、および「プログラマブル交流電源(エヌエフ回路設計ブロック社DP015S, 680千円」の購入を計画していたが、理論検討にとどまり実際の測定にまで至らなかったため、今年度の購入を見送った。 *ただし、、自己給電型PLCシステム製作用電子部品(DC/DCコンバータ、スーパーキャパシタ、トランス、8ビットマイコン、電流センサ、リレー等)は当初計画に従って購入した。 翌年度分として請求した助成金20万円と合わせた\1,718,656円を以下のように使用して、工程遅れを挽回する。(1)エヌエフ回路設計ブロック社、周波数特性分析器 FRA5095 (2.2MHz)、\702,000の購入。この測定器により商用電源電流が流れている状態でSP-PLC用トランスの回路定数を測定し、最適化を図る。(2)エヌエフ回路設計ブロック社、プログラマブル交流電源、DP015S相当品の購入。もともと計画していた機材であり、SP-PLC用トランスの回路定数を測定するために、商用電源周波数を変化させる目的で使用する。なお、上記の「交流電子負荷」については固定抵抗器等で代用できることが分かったため購入しない。(3)スマート分電盤製作用電子部品(パナソニック社住宅分電盤 コンパクト21、トライアック、8ビットマイコン等)は計画通り購入する。
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Research Products
(15 results)