2014 Fiscal Year Research-status Report
高速電力線通信に使用される3導体電力線の信号伝搬特性と信号漏洩特性の研究
Project/Area Number |
24560464
|
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
桑原 伸夫 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (50336088)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 情報通信工学 / 電子デバイス・機器 / 環境電磁工学 / 電力線通信 / 漏洩磁界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,3導体電力線がこの線路上を伝搬する通信信号に与える影響を把握すると同時に,伝搬信号の漏洩電磁界に対する3導体電力線の抑制効果を明らかにして,電力線通信の適用領域の拡大を図ることを目的として平成24年度より開始した.平成25年度は,2年目として,1)グラウンド面上にある電力線の簡易モデル化法の検討,2)漏洩電磁界強度推定法の検討,3)電子機器の回路網モデル化法の検討を主に実施した.平成26年度は,昨年度の研究を引継ぎ,1)解析法の高精度化の検討,2)電子機器のモデル化法の検討,3)3導体電力線を使用した通信の適用領域の検討を行った. 昨年度は3導体電力線の代表的な例として,導体径,絶縁材料,導体配置が異なる5種類の電力線の回路網モデルを評価した.今年度は,昨年度評価を実施した5種類に加えて,難燃ケーブルも評価を行った.その結果,難燃ケーブルは比誘電率の周波数特性が良く,通信信号の伝送に対してすぐれた特性を有することがわかった.また,昨年度誤差が大きかった15MHz以上の周波数においても,測定方法や解析方法を見直すことにより,回路網モデルの高精度化を図った. 次に,電子機器のモデル化法については,昨年度3ポートSパラメータより電子機器の回路網モデルを決定する方法を検討したが,この方法では,電子機器の高さが変化する毎に測定が必要になるため,電子機器とグラウンド間の静電容量を数値解析により求めることにより,電子機器の筐体から見た等価回路の測定値と静電容量により地上高が変化した時のモデルを決定する方法を検討した. 最後に,3導体電力線を使用した通信の適用領域の検討として,バランを通信端末の代わりに使用して,通信信号の伝搬特性を評価した.検討では,特にバランを接続していない導体とグランド間の抵抗値を変化させて3本目の導体の終端条件が伝搬特性に与える影響を評価した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の目標は,1)解析法の高精度化の検討,2)電子機器のモデル化法の検討,3)3導体電力線を使用した通信の適用領域の検討であった.これらについては,概ね達成できたと判断している. まず,解析方法の高精度化の検討では,比誘電率,tanδについて,長さの異なるサンプルの線間容量,線間コンダクタンスを測定することにより,高精度化を図った.また,コモンモード電流測定に使用する電流プローブのファクタを再検討することにより,コモンモード電流測定の高精度化を図った.さらに,撚られているケーブルについては,撚りを考慮した解析を実施した.その結果,これまで問題となっていた15MHz以上の周波数においても測定結果とほぼ一致する解析結果を得ることができた.また,各ケーブルの評価結果より得られた平均値を使用して,測定値との差の評価を行った.その結果,平均値を使用しても,ケーブルの種類によらず,5dB程度の誤差でコモンモード電流を推定することが可能なことがわかった. 電子機器のモデル化においては,3ポートSパラメータを用いて,電子機器の地上高を変化させた場合,どの程度モデルが変化をするか評価を行った.その結果,周波数によっては大きな変化が生じることがわかった.そこで,電子機器筐体とグラウンド間の静電容量を数値解析で求めることにより,モデル作成の簡易化を図った.検討の結果,10MHz以下では,電子機器のタイプや地上高により精度は変化するものの,静電容量を数値解析で求めることにより,グラウンドプレーン上にある電子機器のモデル化が可能なことがわかった. 電力線の電力を伝送する導体にバランを接続し,筐体に接続する導体とグラウンド間のインピーダンスを変化させて,コモンモード電流と漏洩磁界の変化を測定した.その結果,高い周波数ではインピーダンス変化の影響を大きく受けることがわかった
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度,25年度,平成26年度に得られた成果を基にして,平成27年度は,1)解析精度の高精度化,2)3導体電力線の適用領域の明確化,3)対策ツールの開発を主に実施する. これまでの検討により,漏洩磁界強度の解析値と測定値はほぼ一致して来ているが,共振が発生する部分では,共振周波数の違いにより誤差が生じている.これは,測定に使用しているサンプルにねじれや曲りがあるためであり,それらが,共振周波数に与える影響を評価し,解析モデルの検証を実施する.また,これらの抑制効果を2導体の電力線の場合と比較することにより,3導体電力線の通信信号伝搬特性への影響や漏洩磁界強度の抑制効果を明確にする. 3導体電力線の適用領域の明確化では,電子機器モデルを接続した配電系モデルを作成し,信号伝搬特性や漏洩磁界の測定を行い,回路網モデルを用いた解析結果との比較を行う.また,実際の家屋に近いモデルを使用して,漏洩磁界の大きさを解析し,3導体電力線の漏えい磁界抑制効果について評価を行う. 対策ツールに関しては,コモンモードチョークコイルやローパスフィルタの回路網モデルを作成し,それを,電力線や電子機器を含む回路網モデルに挿入して漏洩磁界を解析し,抑制効果を評価する.次に,この解析結果に基づいて,抑制レベルと対策部品に要求される性能について設計指針を明示する. 最後に,研究を通して使用してきた解析プログラムを整理し,回路網モデルを自動的に生成できるようにして,対策ツール化を図る.なお,研究期間を通じて得られ研究成果は学会等を通じて随時公開する.また,対策ツールについてはホームページ等を通じて提供をし,電力線通信の適用領域の拡大を目指す.
|