2013 Fiscal Year Research-status Report
窓関数を用いないOFDM信号の帯域外漏洩電力抑圧法に関する研究
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24560470
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
太田 正哉 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70288786)
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Keywords | OFDM / sidelobe |
Research Abstract |
本研究は,OFDM通信方式おいて送信信号の隣接帯域への漏洩電力(以下帯域外漏洩電力と称する)を抑圧する新しい手法を提案し,実用化に向けた性能評価を行うことを目的としている.本年度は平成24および25年度計画にあげた「SLMを導入したN-continuous OFDMの回路実装」および,平成25年度計画にあげた「SLMによるSpectrum Sculpting Precoderの誤り率改善法」を提案した.さらに,N-continuous OFDMの手法をガードインターバルにのみ適用したNCSP (N-continuous Symbol Pading)-OFDMを提案した.本手法はAWGNチャネルで誤り率の劣化が理論上通常のOFDMと同等であり,しかも帯域外漏洩電力はN-continuous OFDMと同程度に抑圧できる手法であり,かつ,平成24年度計画当初に提案していた第2の手法(以降第2の手法という)のようにガードバンド(たかが2チャネルであるが)を消費しない画期的な手法である.本手法の有効性を先ず検証するため,先の第2の手法についての研究(フェージング環境下の性能評価と回路実装)を一時中断した.さらに平成25年度に計画していた部分空間プレコーディング(コグニティブ無線に対応するために導入を検討していた手法)の性能評価についても,一旦中断することとした. 研究成果は国際会議ITC-CSCC2013(H25年6月,Korea,論文2件)を始め,国内学会で3件の研究発表を行った.またIEEE International Conference on Communications 2014に論文がアクセプトされた.さらに,平成24年度電気関係学会関西連合大会で発表した研究に対して,電子情報通信学会関西支部より優秀論文発表賞を授与された(H25年4月).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SLMを導入したN-continuous OFDMの回路実装時に,計算量削減のために特異値分解を利用する計算法を提案した.提案法にしたがって回路実装した結果,提案法は通常の手法の4.4%の計算時間で処理できることを確認した.またその際に必要となる回路規模の増大はわずか3%に過ぎないことを確認した. 次にSLMによるSpectrum Sculpting Precoder(以降SSPという)の誤り率改善法を提案した.SSPは深いノッチを容易に実現できコグニティブ無線に好適であるが,プレコーディング時に挿入される余分な信号のために誤り率が劣化する.本手法にSLMを導入することで誤り率を改善できることを示した. さらにNCSP-OFDMを提案した.本手法はガードインターバルの両端を前後のシンボルとN次微分まで連続にするための修正信号を生成し,これをサイクリックプレフィクスに加算することでOFDM信号どうしを滑らかに接続する手法である.マルチパスのないAWGN環境では,理論上,本手法の導入による誤り率の劣化は生じない.また強いマルチパス環境下においても,数値実験により大きな誤り率の劣化がないことを確認した.従来のN-continuous OFDMは帯域の広さが狭い程誤り率が劣化する問題があったが,本手法はNの影響が極めて小さいため,平成25年に提案したように帯域を細かく分割して(サブバンド化),これらひとつひとつに提案手法を適用しても誤り率の劣化を心配する必要がない.これは本手法によりコグニティブ無線で要求される深いノッチを容易に実現できることを意味する.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において,N-continuous OFDMにおいて特異値分解を利用すると,単に計算時間を短縮できるだけでなく,計算精度を高く保つことができることを,予備的な実験で確認している.今後この性質について調査し,本手法の有効性を数値シミュレーションおよび回路実装によって検証する予定である.次に,提案したNCSP-OFDMの計算量について考察する.NCSP-OFDMは従来法と違い復調側に反復的なアルゴリズムが必要とされない.しかしサブキャリア数と比較して小規模な逆行列の計算が必要となり,これを現実的な回路規模で解く必要がある.次年度はNCSP-OFDMの実装法について考察する予定である.さらに,N-continuous OFDMの誤り率劣化の原因である修正シンボルの電力偏在を解消する方策を現在検討中である.従来法の定式化においてサブキャリア数と同数の自由度を持つ変数を導入可能であることを,本年度,解析的に突き止めた.この自由度を利用して修正シンボルの偏在を極小化し,誤り率の劣化を低減する手法について検討をすすめる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初1泊の国内出張を予定していたが都合により日帰りとなり,宿泊費等を戻したため. 旅費等に適切に使用する.
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