2012 Fiscal Year Research-status Report
線形連立方程式の数理を援用したLDPC符号の新しい性能解析法および符号化法の開発
Project/Area Number |
24560477
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
澁谷 智治 上智大学, 理工学部, 准教授 (20262280)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 線形符号 / LDPC符号 / 線形符号の符号化法 / 復号性能の解析 / 線形連立方程式 |
Research Abstract |
本研究では,(1)実用的な符号長における反復復号性能の解析手法の未整備による,具体的なLDPC符号の設計の困難性,(2)LDPC符号化システムにおける符号化と復号の計算量のアンバランス,を克服する手法を開発することを目的としている。これに対し,平成24年度は以下の成果を得た。 1.任意の有限体上の線形符号に適用可能な高速符号化手法を開発することに成功した。また,2元LDPC符号に対して提案手法を適用したとき,(1)符号を定義する検査行列の列重みが3以下の場合には提案手法はLuらの手法と等価であること,(2)それ以外の場合にはLuらの手法よりもはるかに高速な符号化法を与えること,が示された。これらの成果は,LDPC符号化システムにおける符号化と復号の計算量のアンバランスを克服するための,非常に有効な手段を与えるものである。また,これらの成果は,平成24年10月に開催された,情報理論分野の主要な国際会議の一つであるISITA2012にて発表された。 2.近年新たに提案されたLDPC符号の1クラスである「SC-LDPC符号」に対して本研究で得られた知見を適用することによって,これまでは不十分であったSC-LDPC符号と従来のLDPC符号との性能比較をより厳密に行うことに成功した。本成果は,LDPC符号の漸近的な性能比較に偏りがちであった従来研究に対して,実用的な符号長での厳密な性能比較を行った重要なものである。これらの成果は24年7月の情報理論研究会にて発表され,平成25年11月の電子情報通信学会論文誌に掲載の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的(研究実績参照)の達成に向け,平成24年度の研究実施計画では,本研究の着想に至った基本的なアイディアである「線形符号の符号化・復号と線形連立方程式の効率的解法との類似性」に関する理解を深めるため,DM分解法や,ヤコビ法に代表される反復解法などに関する基礎理論の整理と拡張について検討する予定であった。具体的には,まず初めに,LDPC符号の高速符号化法の開発に向け,「符号のパリティビットのグループ化」と「DM分解法における未知変数のグループ化」との間の関係に注目することによって,従来のLDPC符号の符号化法とDM分解法との関係を解明することを目標とした。 これに対し,LuらによるLDPC符号の符号化法を拡張することによって,任意の有限体上の線形符号に適用可能な高速符号化手法を開発することに成功した(研究実績1)。本テーマを推進する過程において,DM分解法の基礎理論の整理が進み,提案手法とDM分解法との類似点・相違点などが明らかになった。また,ヤコビ法の基礎理論についても整理が進み,現時点では具体的な成果は得られていないものの,現在修士課程に在籍する学生の修士論文執筆に向けて,研究方針の決定などに大いに役立った。 また,SC-LDPC符号の性能比較(研究実績2)で得られた知見は,平成25年度以降の研究に対する指針を与えるものであり,本年度の当初計画以上の達成度が得られている。 以上説明したように,当初の研究計画は十分に達成されており,また具体的な研究成果も多く得られているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,初年度に行った研究および予備調査を発展させ,LDPC符号化システムの設計や運用に関する諸問題の解決を目指す。 平成25年度 LDPC符号の検査行列をDM分解を用いてブロック上三角行列に変形すると,主対角上の各ブロック行列の中に近似的な上三角行列が現れる。この近似的な上三角行列が真の上三角行列からどの程度離れているかを表すパラメータは,LDPC符号の符号化法の計算量を支配するだけでなく,反復復号法の性能を左右する重要な概念の一つである「停止集合」のサイズとも密接に関連していると予想している。そこで,これらの関連を明らかにすることによってLDPC符号の停止集合の性質を解明する。また,DM分解法の理論を反復復号法の解析に応用する際に問題となるのは,DM分解法が未知変数間の従属関係(一方向の依存性)を利用しているのに対し,反復復号法は送信ビット相互の依存関係(双方向の依存性)を利用している点である。そこで,DM分解法の数理を切り口としてLDPC符号の符号化・復号の解析を行うために,この相違点をいかに解析に利用するかについて検討を行う。 平成26年度 研究の最終年度ではこれらまでの研究をさらに発展させ,LDPC符号化システムの設計や運用に関する諸問題の総合的な解決を目指す。具体的には,DM分解法やヤコビ法の観点からLDPC符号の検査行列を解析した際に得られる各種パラメータと,反復復号法の挙動やLDPC符号の性能との関連を明らかにする。この結果,従来のアプローチでは得られなかったLDPC符号の性能解析手法を新たに得ることが期待できる。さらに,各種パラメータと符号の性能との関連を検証するために,理論的に得られた性能限界と実際の性能とを計算機実験により比較し,理論の正当性・精密性の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 代数的符号理論2012
Author(s)
渋谷智治
Organizer
誤り訂正符号のワークショップ
Place of Presentation
草津セミナーハウス
Year and Date
20120926-20120927
Invited
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