2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560490
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
池田 思朗 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 准教授 (30336101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 和則 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (50346102)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 通信路容量 / 適応変調方式 / レート歪関数 |
Research Abstract |
通信路容量に関する理論的な研究として,以下の2つを行なった. ひとつは通信路容量の一般化に関する考察である.通信路容量は Kullback Leibler (KL) 情報量を損失関数とするベイズリスクと見なせる.情報幾何学ではKL情報量を一般化したαダイバージェンスが定義されている.αダイバージェンスを損失関数とするベイズリスクを定義して通信路容量を一般化し,最適な事前分布が離散となるのか連続となるのかを考察した.この結果は国内の会議で発表した. もうひとつはレート歪関数に関する研究である.通信路容量は,通信路が与えられたときに,通信路への入力の確率分布をある制約の下で最適化する問題の解として与えられる.これに対して双対な関係にあるのがレート歪関数である.レート歪関数は,入力の分布を固定し,歪に関する制約の下で通信路の分布を最適化する.この問題でも最適な通信路の分布が連続分布ではなく離散分布,あるいは離散分布と連続分布の混合分布となる場合があることが知られている.本年度は奈良先端大学の渡辺一帆助教と共同で,これまで知られていない入力分布に対してレート歪関数を求め,国内の研究会で発表を行なった. 本科研費研究では,通信路容量に関する理論を適応変調方式へ応用することを目的のひとつとしている.分担研究者である京都大学の林和則准教授と打ち合わせを行い,現実的な通信路と現在用いられている適応変調の方式について考察し,今後の研究の進め方を議論した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度は主に理論的な研究をすすめることが目的であった.そして,2つの理論的な結果が得られた.ひとつは通信路容量の一般化に関する考察であり,もうひとつはレート歪関数に関する研究である.これらの結果は本科研費研究における大きな発展であり,研究はおおむね順調だと考えている.自己点検の評価の理由を以下に述べる. 本研究では,情報幾何的な観点から通信路容量の問題を理論的に研究することがひとつの目的であった.2012年度に得たひとつめの結果は,KL情報量の一般化として情報幾何学において定義されているαダイバージェンスを用いた通信路容量の一般化に関するものである.αダイバージェンスは近年注目が集まっている Tsallis 統計とも関係が深い.ここで得た結果は通信路容量を達成する最適な入力分布が離散分布となる,という結果が広く成り立つことを示している. もうひとつの理論的な目的は通信路容量を達成する入力分布が離散分布となることを証明する新たな方法を考察することにあった.レート歪関数は通信路容量の問題と双対な関係にあり,通信路容量の場合と同様に最適な分布が離散になる場合が存在することが知られている.しかし,その証明方法は通信路容量の場合とは大きく異なっている.2012年度に得た結果はこうした研究の一環として重要である.
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は,これまで得られた理論的な研究を続けるとともに,具体的な例として通信工学への応用を考える. 理論的な結果については,これまでの研究を発展させるとともに,得られた結果を国際会議で発表する.また,巣でに得られた結果を論文としてまとめ,学術雑誌に投稿するための準備をする. 一方,これまで得られた通信路容量に関する結果の応用として,通信工学において重要な技術のひとつである適応変調方式の設計を考える.適応変調方式への応用の効果を確かめるためには,現在使われている適応変調方式との比較が重要である.研究分担者の林和則氏と共同で実際の通信路をどのようにシミュレートするかを定式化し,実際の適応変調方式を適用して得られる通信レートを計算する.一方で,我々の理論的な結果から得られる最適な適応変調方式をシミュレートされた通信路へ適用し通信レートを計算し,実際に用いられている適応変調方式と比較する.研究分担者の林和則氏と密に連絡し,研究をすすめる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する研究費は14,587円である.この予算は2012年度に予定していた出張の日程が短くなったために生じたものであり,次年度に有効に旅費として用いる予定である.
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Research Products
(10 results)