2013 Fiscal Year Research-status Report
3.11東北大地震の誘発地震頻発地域での微小地磁気変化の超高感度計測による観測
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24560507
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
竹内 伸直 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究者 (80005420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯上 慎二 福島工業高等専門学校, 一般教科, 准教授 (10586853)
大久保 寛 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (90336446)
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Keywords | 地震地磁気観測 / 東北大地震誘起地震 / 高温超電導SQUID磁力計 / オーバーハウザー磁力計 / いわき観測点 / 細倉観測点 |
Research Abstract |
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により引き起こされていると考えられている誘発地震が、福島県いわき市において発生している。この地域では発生する地震の震源の場所がある程度限定されており、地震に伴う磁気変化を明確に観測できると考え、いわき市で地磁気の超高感度連続観測を前年度に引き続き行ってきた。その結果、 (1)超高感度高温超電導SQUID磁力計(地磁気3成分観測)とオーバーハウザー磁力計(地磁気全磁力観測)との並行連続観測を行うことにより、それぞれの磁力計のクロスチェックを行い正確な地磁気観測ができていることを明らかにした。この際、細倉観測点および気象庁柿岡地磁気観測所の観測データとの比較も行っている。 (2)SQUID磁力計の連続観測のためには液体窒素の補給が欠かせないが、研究分担者と協力して1-2ケ月に一度液体窒素の補給を行った。また、SUID磁力計に異常が発生した時、その原因を早急に解析し、対処してきた。これにより、SQUID磁力計を2年以上にわたって連続して運用することができている。なお、2年以上にわたる高温超電導磁力計による地磁気の連続観測は国内外を通して初めてである。さらに、地震はいつ発生するか分からないため、磁力計が正常に動作しているか常時監視している必要があるが、25年度はこれを行うことができた。 (3)2013年9月20日午前2時ころ(JST)にいわき観測点のごく近傍(震央が観測点から約8km)でM5.8の地震が発生した。この地震による地磁気変化が、地震発生時刻から地震波が観測点に到達する約2秒間に地磁気波形に明確な変化として記録されていた。これは、2008年岩手・宮城内陸地震の際に観測された地震発生時の磁気変化を裏づけるものであるが、今回は時間分解能および磁気分解能が1桁以上優れており、より明確に地震発生時に磁気変化が存在することを証明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)いわき観測点において、高温超電導SQUID磁力計を2年以上連続して稼働させることにより、地磁気3成分の超高感度・高時間分解能な地磁気データを得ることに成功している。このような観測は国内外で初めてのことである。また、オーバーハウザー磁力計を1年以上連続して稼働させ、地磁気全磁力のデータを得ることにも成功している。 (2)これら磁力計の観測波形を常時監視し、異常発生時にはすばやく対処をすることにより、連続観測が可能となっている。すなわち、研究分担者(福島高専:磯上准教授、首都大:大久保准教授)との連絡を密接に行うことにより、観測体制が強固に構築されている。これにより、地磁気信号や大地加速度信号などの長期連続観測が順調に進んでいる。 (3)磁力計および加速度計による観測データを2年以上得ることに成功している。特に、2013年9月30日に発生した観測点近傍での大きな内陸地震の際に地震発生に伴う顕著な磁気変化の観測に成功している。この観測結果は本研究課題の目的とする地震発生に伴う磁気変化の存在を明確に証明するものであり、非常に重要な成果が得られたと考えられる。 (4)研究目的の第一段階は達成できたと考えられるが、まだ十分な数の観測例が得られているとは考えられない。地震発生時の磁気変化の物理的解析のためには、さらに多くの観測例を取得する必要があり、観測を中断することなく継続することが重要である。 (5)SQUID磁力計は、非常にまれではあるが不調が発生する場合がある。その原因を究明することにより、ほとんどの場合は解決している。しかし、依然として、一部のSQUID素子の不良と考えられる不調が発生しているが、現時点では観測を中断してまでもSQUID素子を交換する必要はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)地震の発生を予測できない以上、地震による磁気変化の観測例を増やすためには、観測システムの停止は絶対に避けなければならない。このため、高温超電導SQUID磁力計およびオーバーハウザー磁力計による長期連続観測体制の維持に努める。すなわち、SQUID磁力計への1-2ケ月に一度の液体窒素の補給および観測システムの点検を研究分担者(福島高専:磯上准教授)と密接に協力して行う。 (2)いわき観測点での地磁気データと比較するために重要となる細倉観測点(宮城県栗原市)における地磁気観測体制を維持する。このため、約2ケ月に一度の観測データの回収と観測システムの保守点検を研究分担者(首都大:大久保准教授)と密接に協力して行う。 (3)地磁気観測データの整理、地磁気波形のフィルター処理などによる明確化およびその波形解析を進め、地震による地磁気変化信号発生の物理的モデルの構築を試みる。その結果得られた研究結果について、国内外の学会での発表および論文誌投稿を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は計画的に執行したが、若干の未使用額が発生してしまった。 今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した若干の未使用額は、平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)