2012 Fiscal Year Research-status Report
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24560508
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
今野 和彦 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60125705)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 圧電素子 / 振動速度 / イメージング / 定電圧駆動 |
Research Abstract |
圧電振動子の基本共振周期より十分短い時間幅を持ったパルス電圧で圧電振動子を定電圧駆動した場合に,入力電圧パルス波形と時間的に相似な出力振動速度波形が得られることが知られている.このとき駆動の際の第1波に限っては同位相同振幅の平面波が発生し,その振動速度は放射面全体で一定となる.さらに平面波の伝搬路中に対象物を配置した場合に,音圧振幅の差によりイメージングが可能であることもすでに報告されている.これらのイメージング法はいずれも変換器に接する水などの音場媒質中に超音波を放射して対象物からの反射波や透過波を対象としてイメージングする水浸法に分類されるもので前述の問題がある. 本研究ではこれらとは異なり,パルス駆動特性を利用した空気中における新たなイメージング法を紹介する.一般に,空気中において超音波は周波数に依存した吸収減衰が大きくなるため,高周波化が難しく超音波を送波して対象物からの反射波を受波することを空気中で行なうことは難しい.また,送波および対象物から反射波は回折が生じてしまうため,トランスデューサと対象物の距離が長くなると得られる画像がボケてしまい,方位分解能の低下をまねく.本稿で述べる方法は超音波の送波と受波を行うのではなく,レーザドップラ振動計によって圧電振動子および対象物表面の振動速度を測定することで空中においてイメージングを試みるものである.本稿では,はじめに圧電振動子をパルス波で定電圧駆動することによって圧電振動子の音響放射面に発生する同位相同振幅の平面振動(Uniform Surface Vibration:USV)について述べる.次に,これをもとに音響放射面と対象物表面の振動速度の差を利用した,空気中における振動速度差イメージングの方法について述べるものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は物体に振動を加える圧電振動子の駆動法と映像化に適した振動子の形状および駆動法について検討した.円柱状の圧電振動子に幅1μsの矩形波電圧を印加した時,振動波形は,最初の駆動の後に大きなリンギングがありこのまま超音波映像には全く使えない.このため定電圧法および共振周期よりも十分小さな時間幅のパルスを用いて実験を行ったところ,同一位相平面振動を得ることができた.また,伝送線路モデルを用いたシミュレーションでもこれを証明することができ,当初の予想通りの結果が得られているため.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究については24年度の研究成果元に以下のような項目について検討し,研究の推進を図る. ①駆動の最初に観測される平面波の振幅は表面の変位速度すなわち音速に対応するが音速は振動子材料によって20%近く異なる.ここでは映像化に適した低音速の材料を選択する,②圧電定数や誘電定数および弾性定数から形状と寸法を計算し電気的なインピーダンスを推定する,③駆動電源の内部インピーダンスと振動子の静電容量からなる時定数τと振動子の共振周期Tとの比により内部インピーダンスの正規化を行う,④伝送線路を用いた等価回路の計算から振動速度波形のシミュレーションを行い電源インピーダンスの仕様を決定する,⑤円柱状圧電振動子の振動面の振動分布をレーザードップラ装置によって測定し,④のインピーダンスと振動速度波形との関係を実験的に検証する,⑥ モノポールパルスの発生法によって円盤状の振動子によって同様の実験を行う.特に⑥は市販の普通の円盤状の振動子で映像化するもので実現できれば本法の普及に大きく貢献できると期待される.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は上記で検討された振動子を用いて,この表面に置いた場合の物体の映像化のために理論的な解析と実験を進める.このために,①振動子の表面に物体を置いた場合の組み合わせを前年度用いた伝送線路モデルに置き換えて物体表面の振動速度特性のシミュレーションを行う.②物体が伝送線路になるため物体の表面振動速度はその厚さの関数となる.実験によって物体の厚さと振動速度の関係を測定し①の結果と併せて映像化できる物体の厚さについて考察を行う.③物体内を伝搬する速度は物体の音速により異なる.従って同一の厚さの物体であればパルス状の速度が観測される時刻が異なることから音速の違いによる映像化が可能と考えられる.すなわち,振動速度振幅の振幅モードと音速によって波面速度が異なることを利用した音速モードの2つの映像化の方法が考えられ,このためのシステムを考案し予備的な実験を行う.
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