2012 Fiscal Year Research-status Report
疾患スクリーニングのための生体由来ガス成分のイメージングシステムの構築
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24560512
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
荒川 貴博 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (50409637)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | バイオセンサ / 可視化計測 / 酵素 / 生体ガス / 計測工学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、皮膚表面から放出される生体由来ガスに含まれる揮発性化学情報を高感度かつ選択的に画像化する技術を構築することである。生体から放出されるガス成分はその濃度が空間的・時間的に大きく変動することから、その濃度分布をリアルタイムで画像化し、空間的・時間的情報を兼ね備えた生体ガス情報のイメージングが可能となれば、発生部位の特定や濃度の連続測定が可能な、新規な非侵襲計測法となり得ると考えられ研究を進めてきた。当該年度では、①酵素固定化メッシュでのルミノール発光を利用した生体ガスイメージングシステムの構築と、②掌での生体ガス成分イメージングに向けた基礎検討を行った。なお対象成分として、取扱の容易なエタノールガスを計測対象として利用した。 生体由来ガスのイメージング方法として、生体触媒を利用した化学発光による手法を用いてシステムの構築を行った。化学発光に必要な酵素を、酵素固定化膜を作製し、その化学発光を高感度に撮影するCCDカメラにて匂い情報を可視化するシステムを構築した。これにより、標準エタノールガスの定量特性を評価したところ30から400 ppmの濃度範囲にて発光強度と濃度に相関があることが確認された。揮発性成分の2次元的な可視化が可能となり、濃度分布と空間分布をあわせもつ計測法の確立に成功した。次に、皮膚ガス計測用の可視化システムの構築を行った。掌からの生体ガスの可視化計測のためアクリルセル上にドットを配置したパターンプレートを作製し、酵素固定化メッシュを設置し可視化計測に向けたシステムの構築と基礎特性の評価を行った。以上のように、当該年度に予定していた①と②の研究目的を達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①酵素固定化メッシュでのルミノール発光を利用した生体ガスイメージングシステムの構築 生体由来ガスのイメージング方法として、生体触媒を利用した化学発光による手法を用いてシステムの構築を行った。化学発光に必要な酵素の固定化膜を作製し、ガス成分を可視化するシステムを構築することに成功しており、バイオセンシングを用いたガス成分の可視化計測は概ね順調に進展している。 具体的には、可視化するためのモデル成分として比較的取り扱いの容易なエタノールガスを用いた可視化システムの構築を行った。発光に寄与する二種類の酵素としてアルコール酸化酵素と西洋わさび由来ペルオキシターゼをメッシュ担体上に包括固定し暗箱内に設置した。アルコール酸化酵素(AOD)はエタノールを酸化触媒する際に、過酸化水素を生成し、その過酸化水素を西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(HRP)の触媒によりルミノールと反応を起こしその発光をCCDカメラによって撮影することに成功した。ガス成分の酵素固定化膜への拡散としてコットン製の繊維で形成されたメッシュ膜上に酵素を固定化する方法が最適であることが確認された。発光に導くための試薬濃度としてルミノール濃度の最適化を行ったところ、pH=10.3の条件にて化学発光の強度が最大となった。最適化された条件にて標準エタノールガスの定量特性を評価したところ30から400 ppmの濃度範囲にて発光強度と濃度に相関があることが確認された。 ②掌での生体ガス成分イメージングに向けた基礎検討 掌からの生体ガスの可視化計測のためアクリルセル上にドットを配置したパターンプレートを作製し、それを酵素固定化メッシュを設置した。皮膚ガス計測用の酵素固定化メッシュは、メッシュ担体上にAODとHRPをドット形状にて固定化し作製する。作製したメッシュのパターン毎の再現性の評価を行い、皮膚ガス計測に向けたシステムの構築が達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
・ppbオーダーでの生体ガス成分のイメージングシステムの実現のための高感度化への展開 作製した皮膚ガス可視化計測システムを用いて皮膚ガスに含まれるガス成分の可視化計測に関する研究を進める。呼気中濃度よりもさらに低濃度で生体から放出される皮膚からエタノールガスについても検討を進める。ppbオーダーの極低濃度で経皮から揮発性物質が放出されていると報告されており、新たな非侵襲的診断法としての確立を目指し研究を行う。そのため、揮発性成分の酵素固定化膜への拡散、発光に導くための試薬濃度、緩衝溶液のpHの最適化を行い、対象物質のppbオーダーでの高感度な可視化が可能な実験系の実現を目指す。高感度化においては、化学反応系と撮像系の改良を予定している。具体的には、発光の増感効果のあるエオシンYやヨードフェノールなどの色素系の増感剤の検討、ルミノール発光の生体触媒である大豆由来(SBP)、パームヤシ由来(PTP)のそれぞれのペルオキシターゼについての検討、発光強度の増強効果について評価する。電子増倍型CCDカメラや光学系の改良より感度および解像度の優れた可視化法の確立を行う。 ・掌での生体ガス成分イメージングによる放出動態、濃度分布の評価 前年度に構築した掌での生体ガス成分イメージングシステムを用いて、掌から放出されるエタノールガスを用いて可視化計測を行う。高感度計測が必須となるため、可視化システムの高感度化において得られた知見を生かし、評価を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
バイオイメージングの際に利用する生化学実験用試薬を中心に研究費を使用していく計画である。イメージングで利用する酵素は高価であり、また、生体ガス成分の検出・観察には主に光学的手法を用いるので、光学系構築のための光学部品も研究遂行に不可欠である。また、高感度モニタリング装置として高感度カメラの購入についても検討している。 本研究を遂行するに当たり、本研究の研究成果を社会・国民に発信するため、最新の研究成果に関する情報を収集するため、国内外への研究会・学会・展示会への参加、発表を予定している。
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Research Products
(3 results)