2012 Fiscal Year Research-status Report
音波トモグラフィ法による渦風速場の遠隔監視システム
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24560514
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
李 海悦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20555734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 晃 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20159213)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 音波トモグラフィ / 渦風速場測定 / 符号変調音波送受信 / 音波伝搬時間測定 / 音波送受信アレイ / 風源位置推定 |
Research Abstract |
[研究実績の概要] 異常気象の影響が深刻化する中で、風速計やドップラレーダよる観測システムは、鉄道交通路上で発生する数十m規模の小規模局所的な突風の監視が困難である。この問題を解決するために、本研究では、監視領域周辺に数m間隔で設置した少数の送受信器間の音波伝搬時間データをもとに、渦風速場の時空間変動をリアルタイム観測できるシステムの開発に向けた検討を以下のように行なった。 (1) 斜め方向送受信によるトモグラフィ計測 :これまでは、対向する送受信器同士を組み合わせた縦方向の伝搬時間のみの測定データをもとに、トモグラフィ計算を行ってきた。これに対して、縦方向に加えて、斜め方向にも送受信器を組み合わせた観測を行い、それを基にトモグラフィ計算を行った。これにより、これまでの横方向だけでなく縦方向(距離方向)を含めて、渦の中心位置を特定できる風速場測定を実現した。 (2) 傾きのある渦風速場のトモグラフィ計測:渦の鉛直軸が観測面に対して傾いている場合、渦成分と上昇流成分の両者が重畳した伝搬時間が測定されるため、両者を分離測定する必要がある。ここでは、センサアレイ直線上の伝搬時間の測定データは、渦流成分が左右反対称な特性を示すのに対して、上昇流成分は左右対称になる性質を利用することにより、両者の分離測定を可能にした。 (3) 屋外音波送受信システムの基礎試験:周囲混入雑音や反響波の影響を回避するために符号変調送受信方式を導入し、屋外における長距離(10-50m)送受信測定試験を行った。これにより、送受信音波周波数、駆動音圧に対する計測可能距離、伝搬時間の測定精度、送受信システムの指向性、地表反射波の混入の影響、などの諸特性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の示すように研究計画に記した当初目標がほぼ達成できた。 (1) 斜め方向送受信によるトモグラフィ計測:符号変調同時送受信方式による、渦の最大風速ならびに渦の中心位置をリアルタイムで監視できる室内模擬試験装置を製作した。GPU演算ユニットの導入により1回の送信で斜め経路を含めた34経路を同時測定可能であり、1.2秒間隔でリアルタイムで画像が再現できるシステムが構築できた。本研究の成果は、Acoustics 2012 Hong Kongや2012 IEEE International Ultrasonics Symposium、の国際会議に発表した。 (2) 傾きのある渦風速場のトモグラフィ計測:渦の鉛直軸が観測面に対して傾いている場合、渦成分と上昇流成分の両者が重畳した伝搬時間が測定されるため、両者を分離測定する必要がある。ここでは、センサアレイ直線上の伝搬時間の測定データは、渦流成分が左右反対称な特性を示すのに対して、上昇流成分は左右対称になる性質を利用することにより両者の分離測定を可能にした。 (3) 屋外音波送受信システムの基礎試験:符号波復調処理をリアルタイム計算するためにGPUを導入したシステムを製作し、送信音波周波数20kHz、観測範囲5m~40mの条件のもとで屋外の自然風を対象とした風速測定試験を行った。ここでは、距離の伸長に伴う音波減衰の増大や、地表反響波や周囲騒音の混入の影響を、どこまで回避できるかどうかに重点をおいて検討した。精度検証の手段として、提案法による長距離2点間平均風速測定結果と3次元超音波風速計を用いた観測領域中央における風速の定点観測結果とを比較した。その結果、屋外の長距離2点間の平均風速をリアルタイム測定(測定時間間隔1s以下)できるシステムを構築することができた。本研究の成果は日本音響学会2012秋季発表会に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度に監視システム実用化を実現する目的で、耐周囲雑音性能向上と多チャンネル音波送受信測定の時間短縮のために、疑似ランダム符号変調方式多チャンネル同時送受信システムを導入する。風速場の時間変化(主に渦の中心位置の移動速度)よりも短い1s以内程度の時間内に、符号変調受信波の復調処理(伝搬時間差測定)と渦の風速場の再現計算を終えるようにする。本研究では、そのための並列グラフィック次年度を組み入れたのような多チャンネル並列同時送受信システムを構築する。さらに、移動する渦風速場のリアルタイム追跡性能試験行う計画をする。渦の風源の移動速度と風速分布の再現精度の関係を検討する。同時に、追跡性能向上のための手段として、渦の風速中心位置の時間的な進路予測に基づいた補正計算処理を導入する。その検討結果をもとに、渦の風速場の時空間変動に対するリアルタイムでの再現性能、渦の寸法、中心位置、風速の最大値などの風速場の定量再現性能を中心にした評価試験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.次年度には室内高速計算用GPUの導入に渦の風速場の再現計算を短い1s以内程度の時間内に、符号変調受信波の復調処理(伝搬時間差測定)と渦の風速場の再現計算を終えるように実現する結果により室外監視システムの構成に必要な部品か装置の購入など計画する。 2.研究成果発表と情報採集の目的て国内や海外のシンボジウム参加。 3.H24年度に謝金や人件費の支出は発生しなかったため、未使用額が生じた。H25年度に室外実験に実験補助が必要、謝金や人件費の支出。
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Research Products
(5 results)