2012 Fiscal Year Research-status Report
並進不変ウェーブレットパケット変換の多重解像度的構成法と産業応用に関する研究
Project/Area Number |
24560515
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
中野 和司 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (90136531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新 誠一 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (20134463)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ウェーブレットパケット / シフト不変性 / 周波数オーダー / ガボールウェーブレット / 地中レーダ / 埋蔵物標定 / 心電図 / 自動体外式除細動器 |
Research Abstract |
(1)理論的成果:ウェーブレットパケット変換(WPT)におけるシフト不変性の実現問題に対して、それが多重解像度的に完全に実現することは不可能であることを理論的に示した。また、nを分解レベルとしたときに、WPTによれば周波数域は2のn乗に分割されるが、各周波数帯の順番が入れ替わることは明らかにされてなかった。これを正しいう順番に置き換えるアルゴリズムを開発し、実用に道をひらいた。 (2)応用的成果:①地中レーダは、地下埋蔵物の非破壊探査において有効である。ここでは、連続ウェーブレット変換(CWT)を用いて、レーダ受信信号の2次元画像を解析し、画像からノイズ除去する手続きを確立した。具体的には、解析結果をもとに直線位相特性を有するようにフィルタを設計し、ノイズの除去を試みた。解析およびノイズ除去の手続きは、単層とよばれる基本的な環境でその有効性を確認した。②次に受信信号(埋蔵物からの反射波)の強調処理を行った。これは、ガボールウェーブレット変換、マルコフ連鎖モンテカルロ法、および無限混合正規分モデリングを中心に、いくつかの統計的検定手法との組み合わせによる強調処理手法である。これによって、埋蔵物の位置標定に道をひらいた。また、多様な環境でその有効性を確認した。③CWTの心電図応用については、心電波形の特徴量として、新たに波形の時間周波数特性を採用することを提案した。これによって、これまでの波形分類手法に比べ、格段に分類精度の向上をはかることができた。これは自動体対式除細動器への応用への道を示したことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)完全並進不変複素離散ウェーブレット変換(PTI-CWPT)についての問題点の解消:まず、戸田と章の提案した完全並進不変複素離散ウェーブレット変換(PTI-CWPT)について、以下の①~④のステ ップで検討した。①対象信号がδ関数に限られている点を、一般化できるように拡張する。②Meyerウェーブレットの設計において必要となるΔの設定においては解析すべき信号の周波帯域が事前に必要となるが、Δの設定が条件を満足しないときの影響を分析する。③フィルタ長との関連でΔの最適設計の方法を明らかにする。④多重解像度解析の枠組みでの実現をはかる。しかしながら、以上の検討の結果として、④の完全な実現が不可能であることを理論的に示すことができた。換言すれば、戸田らの手法は多重解像度的には完全実現ではないことを明らかにできた。また、WPTにおける周波数オーダーの並べ替え(置換)アリゴリズムを開発した。 (2)WTによる地中レーダによる位置標定問題:これについては、ウェーブレットパケット変換応用の前に、連続ウェーブレット変換の応用を考えた。ノイズ除去、画像強調、統計的クラスタリング等を統合した手法によって、埋蔵物からの反射波(三日月波形)の中央点を抽出するところまで達成できた。これによって従来難しいとされた、かなり地中深くにある埋蔵物の標定まで可能とした。 (3)CWTによる心電図波形分類問題:これについては、心電波形の特徴量として、新たに波形の時間周波数特性を採用することを提案し、格段に分類精度の向上をはかることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)完全並進不変(PTI)を近似的に実現する複素ウェーブレットパケット変換の開発とその応用:一般に、複素ウェーブレットパケット変換をした場合、ツースケール数列によって変換された後、さらに変換を行ったウェーブレットパケット係数では並進不変性が欠如している。この位相のずれ分を元に戻すための新たなツースケール数列を2つ用意することを考える。これにより位相のずれを補正しながら並進不変性を保持できる(位相補正型複素ウェーブレットパケット)。この変換は6つのツースケール数列を用意することによって簡単に変換を行えるが、一部が直交でないため完全に再構成することができない。したがって、逆変換(再構成) が必要となる問題に対しては、これを改良することが必要である。さらに、当初の研究目的である新しいPTI複素ウェーブレットパケット変換の構成法についてであるが、これは数学的に不可能であることがを明らかにすることができた。したがって、上記の位相補正型等の近似手法も含めて、PTIの完全性の追及ではなく、近似手法の開発が急務となる。 (2)CWT、WPTの具体的応用:地中レーダ画像による金属管位置の標定問題、掘岩音による地層変化の予知問題、心電図のリアルタイム分類問題、さらに線形システムの入出力信号のウェーブレットパケット変換の関係性の精緻化、時変・非線形システム同定手法の開発への応用などは、引き続き実用を目指して研究を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(11 results)