2012 Fiscal Year Research-status Report
応力発光体を用いた構造物のイメージング異常検出技術の開発
Project/Area Number |
24560536
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
上野 直広 独立行政法人産業技術総合研究所, 生産計測技術研究センター, 主任研究員 (50356557)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 応力発光体 / 圧力容器 / 異常診断 / パターン分離 |
Research Abstract |
本研究の目的は、力学的な信号を直接光信号に変換する応力発光体を用いて、構造物、特に圧力容器のイメージング異常診断手法を開発することである。その中で、本年度は、応力発光イメージの構造物の異常に基づくパターン分離手法の開発を行った。具体的には、高圧容器の加圧時における一連の応力発光時系列画像において、各画素値を説明変数とし、各時刻の応力発光画像を超空間の1点として、その分布状態に主成分分析を適用することにより加圧1サイクルの特徴画像を抽出するソフトウェアを開発した。ただし、主成分分析は、データ群の分散が最大化するように説明変数を最大化するので、形式上時系列データのトレンド解析に当てはめることができるが、過去の文献にいくつかの課題が指摘されている。本手法においても、各画素値を説明変数とする超空間内の分布のみを解析対象とするのでは、時間データが失われてしまう。そこで、高圧容器の加圧サイクル疲労試験では加圧力を計測できることから、このデータを時系列応力発光画像の重みとして用いることにより、間接的に時間データを含むように改良を行った。この手法を用いて、過去の複合圧力容器疲労試験データを解析したところ、注目範囲の単なる発光強度変化の時間変化の分析では捕捉できなかった疲労亀裂貫通の、予兆となるパターンを分離することに成功した。これを裏付けるため、疲労亀裂に模したスクラッチを付加した複合試験片の引っ張り試験を行い、その結果から、スクラッチ直上では応力発光強度が増加するのではなく、逆に減少し暗いパターンを形成することがわかり、分離されたパターンの特徴と一致することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、応力発光イメージの構造物の異常に基づくパターン分離手法の開発を目標としており、主成分分析の改良によって疲労亀裂貫通の予兆パターン分離を達成した。また、物理的なモデルとのパターンマッチングを行うためのベイズ推定モデリングの構築において、その基礎データとするため、複合圧力容器の加圧サイクル試験を先行して行った。しかし、疲労亀裂発生位置をあらかじめ特定可能と考えて使用した、予亀裂となるスクラッチを付加した容器の製造過程において、このスクラッチによるバースト回避によって、通常の半分の圧力で自緊処理が行われた。そのため通常の製品と比較して内面のアルミライナーの圧縮応力が低下し、予亀裂位置で疲労亀裂が発生しなかった。実際には、観測カメラの視野外で亀裂貫通が発生し、亀裂進展に伴うパターン変動のデータ取得に失敗した。したがって、物理的なモデルとのパターンマッチングの部分は今年度中に完成させることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は所属研究機関の変更を予定しているため、一時的に研究進展の滞留を余儀なくされるが、その後はマンパワーの大幅な拡充が期待されるので、遅れを取り戻すことができると考える。また、圧力容器メーカー、公益財団法人水素エネルギー製品研究試験センターとの共同研究体制が研究期間中維持されることから、圧力容器の加圧サイクル試験を必要な回数実施することができ、物理的なモデルとのパターンマッチングの部分の完成と、それの主成分分析との統合を早期に完了させる予定である。 また、システムのリアルタイム処理実現のためにアクセラレーターを取り入れる予定であるが、様々なハードウェアプラットフォームに対応可能とするためOpenCLをベースとして開発を行う。さらに、近赤外型応力発光体の開発が連携研究者のもとで進展しており、これを用いた圧力容器の異常診断システムの検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はシステムの完成とリアルタイム化が課題の柱となるが、所有の設備機器を用いることができるので、新規装置購入は予定していない。ほとんど応力発光体製造のための消耗品や複合圧力容器加圧サイクル試験の実施のための費用や論文投稿料に使用する予定である。 ただし、本年度達成した複合容器の疲労亀裂貫通の予兆検出は、過去の研究でも成功例がなく、国際会議で発表する価値が十分あると考える。具体的には2013年11月にアメリカで開催されるIEEE SENSORS 2013に発表申し込みを行っており、採択された場合には旅費が多額となりうる。
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Research Products
(1 results)