2012 Fiscal Year Research-status Report
省電力で高い運動性と安全性を実現する次世代電気自動車開発のための制御法の研究
Project/Area Number |
24560538
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
河辺 徹 筑波大学, システム情報系, 教授 (40224844)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 電気自動車 / スリップ抑制 / モデル予測制御 / スライディングモード制御 / ロバスト性能 |
Research Abstract |
省電力/高運動性/高安全性を実現する次世電気自動車(EV)の実用的運動制御法の研究の第1段階として、交付申請書の研究実施計画の1.“高安全性/高運動性とともに省電力性も陽に設計仕様とする制御法”の開発、2.“各種の環境変化に対しロバストに性能保証を行う制御法”の基礎理論構築に対し、以下の研究開発を行った。 1. 特に駆動時のスリップ防止と適切なトラクション制御を行うことで、EVの運動性能と安定性を高め、不要な電力消費を抑制するための実用的制御方法として、従来研究代表者らが基礎理論を提案していたモデル予測制御(MPC)のアルゴリズムをPID制御器に用いる制御方法を改良し拡張することで、実用性と性能を向上させた。MPCは、システムの各種制約条件を陽に考慮することができる点で実用性の高い制御方法であるが、制御アルゴリズムの計算時間がかかることが欠点であった。一方、PID制御器は3つのパラメータのみを用いる簡単な構造で動作も理解しやすいため、古くから各種分野で適用され、現在でも様々な対象に対して用いられている実績も信頼性も高い制御器である。この両者を組み合わせることでMPCの欠点を補い、EV用に改良することで実用性を高めた。 2. 路面状況や重量変動などに対してロバストにスリップ抑制を行いつつ電力消費量を抑える制御方法として、スライディングモード制御を拡張した制御方法を開発した。これは、従来のスライディングモード制御では制御入力の切り替えが必要でこのためにチャタリングという振動現象が生じる。これを抑え、かつロバスト性能をより高めるために、新たに積分動作機能を追加しこれを調整できる構造とした。また、1. の方法との性能比較検証を行った結果、ロバスト性能と電力消費抑制の両面で優れていることがわかったが、制御を行う際の計算時間等の実用面でまだ改良の余地がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の研究実施計画として記載した[1] “高安全性/高運動性とともに省電力性も陽に設計仕様とする制御法”の開発、[2]-1 “各種の環境変化に対しロバストに性能保証を行う制御法”の基礎理論構築に対し、それぞれ研究実績欄で述べた2つの制御法の研究開発を行うことができ、またその基本性能の検証も行えたことでおおむね順調と判断した。ただし、回生ブレーキの使用割合の最適化を組み込んだ電力量消費抑制化とそれに基づく多目的最適化問題によるMPCのアルゴリズム開発については、多方面から検討を行ったが、具体的な手法としての構築には至っていない。これは、Windows OSの更新が行われたため、実験のための専用PCの購入を控えた結果、数値実験による検証が遅れ、併せてモータ実験装置の購入を次年度に繰り越したことにも起因する。この結果、より実用性を高めるための開発手法の改良が少し不十分だったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に少し不十分だった、数値実験とモータ実験装置による開発手法の性能検証ならびに、回生ブレーキによる電力量消費抑制を組み入れた多目的最適化によるMPCのアルゴリズムの具体化を円滑に進めるとともに、主として“各種の環境変化に対しロバストに性能保証を行う制御法”の理論展開と“各種の環境変化に対しロバストに性能保証を行う制御法”の体系化として、以下の2点について検討ならびに研究開発を行い、研究の独自性を高めていく。 1. スライディングモード制御において精度の悪い推定量を用いた場合のロバスト性能を改善するための手法を検討し、状態情報をできるだけ精度よく得る方法の開発を試みる。性能的に十分な方法の開発が困難な場合には、構成が複雑になるが、確率的非線形状態推定器との併用も試みる。 2. 平成24年度の2つの開発手法の融合による体系化の基礎理論つくりを行う。特に、モデル予測制御アルゴリズムの枠組みの中でのスライディングモード制御の開発により、ロバストモデル予測スライディングモード制御法を構築し、高速で効率の良いアルゴリズム開発も併せて進め、数値シミュレーション等による性能解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には、EVのモデル化と電気モータ特性解析のために、モータセットとその専用PC の購入を予定していたが、平成24年秋にWindows OSが更新されたため、その影響を見極めるべく、実験専用PCとモータセットの購入を見合わせた。この影響で次年度使用額が生じたため、平成25年度にこの分を購入し執行する予定である。またこれと併せて当初計画していた平成25年度分についても、計画内容に基づいて計画通り執行する予定である。
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