2013 Fiscal Year Research-status Report
可変力学拘束を持つ周期運動系としての次世代歩行制御理論の基盤構築
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24560542
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
浅野 文彦 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (70415066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 祐志 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00456691)
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Keywords | 制御工学 / システム理論 / 歩行ロボット / 機械力学 / 生体工学 |
Research Abstract |
平成25年度は主に以下の研究成果を得た。 衝突姿勢拘束を持つリミットサイクル型歩行系の数値積分に依存しない安定性解析法の基礎理論を構築し、定常フィードフォワード入力で駆動される能動リムレスホイール(1自由度系)および厳密な目標軌道追従で歩容生成を行う劣駆動リムレスホイール・コンパス型2脚ロボット(2自由度系)の解析を通して提案手法の有効性を確認した。また、力学的エネルギーの2次近似を用いることで回復エネルギーを衝突時の角速度誤差の1次関数として定式化できることを示し、従来法とは異なる簡明な状態誤差遷移関数の導出法を確立した。更に多自由度系への拡張として膝関節を有する冗長な劣駆動2脚歩行系について考察し、理論的には導出可能な解析解の現実的解法について検討した。 線形時変方程式として表される直動脚を持つ歩行系の安定性解析法についても研究を推進した。最も簡単な2自由度のリムレスホイール型歩行モデルの解析を通して、その立脚相・衝突相が共に安定となることが示された。また、股角度の増大に伴い支持脚の伸長動作が大きく影響するようになり、有限整定歩容が出現する傾向が強まることが明らかにされた。 研究代表者が中心となって実験環境を整備し、準受動歩行実験の基本データの取得を行った。歩行機やトレッドミルが持つ不確定性(ジョイントの摩擦・ベルトのたわみ等)の影響により、理論研究結果(Speed mode・Totter modeなど)とは異なる歩容の収束性が確認された。これを受けて、身体フレームや路面が生成する不可視な微小振動のモデル化についても検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値積分に依存しない歩行安定性解析法の基礎理論を構築する、力学的エネルギーの2次近似を利用した状態誤差遷移関数の完全解析解の簡明な導出法を確立するなどの重要な理論的研究成果が得られた。近似線形化が不可能な直動関節を持つモデルやシンボリック計算の負荷が大きく解析解の導出が困難な冗長モデルについても、部分的に数値積分を採り入れた現実的かつ効率的な解法の例を示した。研究成果については、当該分野における主要な学術雑誌論文や国際会議論文として順調に採録(または採録が決定)されてきている。以上より、研究はおおむね順調に進展しているものと認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は以下の計画に基づき研究を推進する。 数値積分に依存しない歩行安定性解析法の確立を目指す過程で、運動の線形近似に併せて力学的エネルギーの2次近似を用いることの重要性が新たに理解された。しかしながら慣性行列が定数でない多自由度系においては、その線形近似が運動エネルギーの2次近似値の無視できない誤差を生むことで回復エネルギー値の計算精度の低下を引き起こすことが明らかにされた。2次近似により計算される回復エネルギー値や状態誤差遷移関数の有効範囲をシンボリック計算と数値積分の両面から考察し、完全解析解を利用した妥当な安定性判別が可能である歩行系の条件を特定する。並行して直動関節を持つ歩行系についても検討し、全ての得られた知見を整理することで理論の体系化を図る。また、歩行系以外の動的システムに対する2次近似された力学的エネルギーの応用についても検討し、他分野への理論拡張を目指す。 準受動歩行実験を通して、歩行機の身体フレームや柔軟路面が持つ不確定な微小振動が歩容の収束特性に無視できない影響を与えることが明らかにされた。実験機が示す複雑な(高次の)収束特性を合理的に説明するための微小振動の簡易モデルを構築すべく、新しい数学的手法について検討を進める。実験データの取得も引き続き行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
歩行実験に使用する制御用・データ取得用のマイコンが安価なもので代用できたため、物品費が節約できた。 高精度な実験データを取得するため、センサ系や環境などの改良に使用していく予定である。
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Research Products
(11 results)