2012 Fiscal Year Research-status Report
作用素論・代数論的研究に基づく制御系解析・設計のためのスケーリング手法の高度化
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24560545
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
萩原 朋道 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70189463)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | サンプル値制御系 / むだ時間系 / 非因果的周期時変スケーリング / compression 作用素 / ロバスト安定性 / 無限行列表現 / 微分差分方程式 |
Research Abstract |
サンプル値制御系やむだ時間系の解析や設計にリフティング手法を適用した場合,compression 作用素と呼ばれる無限ランクの作用素が現れる.これは上記のような系に付随したある意味で本質的な作用素であり,その存在が解析や設計を厄介なものとしている最大の原因であるといえる.この難点を回避するために有効なスケーリング手法を構築することが重要である.なかでも,非因果的な操作を伴うスケーリング手法がサンプル値系ではとくに有効であり,それを用いた場合のロバスト安定条件が重要な鍵を握る.この考えに沿って研究を発展させる上で,同様の考え方を離散時間系に対して適用した場合について,その扱いを見通しよいものとして整理することは非常に意義深いと考えられる.本年度の成果のひとつは,そのような問題を無限行列を使った数学的枠組みの中で論じ,スケーリングに付随する非因果的な時間依存性と周波数依存性の利用が相互にどのような関係にあるかを明確にしたことが挙げられる. また,むだ時間系については,compression 作用素の周辺においてさまざまな検討を行っている.たとえば,compression 作用素の準有限ランク近似とそれに基づく安定解析に関する研究である.その際,従来研究のように2乗積分可能な関数からなる関数空間上で考えるのではなく,一様ノルムが有界な関数からなる関数空間上で考えた場合の近似問題を考察し,その解法や安定解析における有用性を論じている.また,compression 作用素による解析がもっとも自然に適用可能なむだ時間フィードバック系ではなく,微分差分方程式により表現されたむだ時間系も compression 作用素により解析を行うことを可能とする研究も進めた.具体的には,上記の2種類のむだ時間系の表現法について,一部は外部入出力を有する場合も含めて扱い,その相互関係について明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り,サンプル値制御系やむだ時間系の解析ならびに設計におけるリフティング手法を適用したアプローチにおいては,それに付随して現れる compression 作用素の扱いが重要である.それを近似的ながらも適切に取り扱うための有用な方法は,いずれもなんらかの形でのスケーリング手法と密接に関連しているといえる.とくにサンプル値系の場合にはそれと密接な関係にあるロバスト安定条件があるが,その扱いは容易でなく,見通しが必ずしも十分によいものとはいえない.これに対して,サンプル値系に対する直接の議論ではないものの,離散時間系において無限行列表現に基づき,さまざまなスケーリング手法に関する相互関係を見通しよく論じることのできる枠組みが構築できたことは,十分に意義深いものと考える. また,微分差分方程式により表現されるむだ時間系とフィードバック表現されるむだ時間系の相互関係が明らかになったことは,compression 作用素を議論の中心におく本研究のアプローチが,従来研究と同様に広く適用可能であることを検証したものといえ,その点でも十分に成果が得られていると考える.さらに,compression 作用素の準有限ランク近似を一様ノルムのもとで行おうとする研究は,2乗可積分な関数からなる空間におけるノルムよりも扱いがかなり厄介であるが,基本的な方向についての進捗が得られていると考えている.とくに,そのような議論のもとでよりよい安定解析につながる可能性があることも数値的に示されており,研究の方向性としての妥当性が検証できたともいえることからも,順調な進捗と考える.
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Strategy for Future Research Activity |
compression 作用素を一様ノルムのもとで扱う研究については,前年度の成果により,むだ時間系の安定解析においてその有効性が明らかになりつつある.そこでは compression 作用素の準有限ランク近似問題を扱ったが,その一方で,compression 作用素はサンプル値制御系の取り扱いでも現れ,持続的信号に対するサンプル値制御系の性能評価問題を考える際には,この作用素を近似するというよりもむしろ,厳密に取り扱った場合のノルムの大きさを評価することが重要である場合も多い.そこで,そのようなサンプル値系の問題に対する研究も並行的に進める予定である.ただし,compressoin 作用素を厳密に扱うといっても,それを直接的に行うことは容易でないため,やはり適当な近似を施すことになる.その際,その近似における極限が厳密なものとなるような方法について論じ,さらには各段階での近似に伴う近似誤差の影響を評価する方法を論じるという方針によって研究を進める予定である. 一方,compression 作用素をその一部分に含むモノドロミー作用素を通して,むだ時間系の安定解析についても研究されており,そのような方向についても研究を進める.その際,モノドロミー作用素を直接扱うのではなく,そのべき乗を扱うことを考えることで,これらの作用素を近似的に扱った場合でも近似誤差の影響を(安定解析に十分な妥当性を与えうる形で)評価することが容易になる.そのような評価においては,標準的なロバスト安定解析の場合と類似のスケーリングの考え方をさらに適用することが可能であり,それによってよりよい安定解析が可能となると考えられる.そのような方法について論じ,その有効性を検証する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,前年度成果の発表のために複数の国際会議への出席を予定しており,研究費のかなりの部分をそのための費用(旅費ならびに参加登録費)に充てる予定である.その他,必要な文献を購入し,研究環境の整備も図る.
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Research Products
(10 results)