2013 Fiscal Year Research-status Report
ディスクリプタ方程式表現による非線形複合システムの解析・設計法
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24560548
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
和田 光代 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (70201259)
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Keywords | ディスクリプタシステム / 安定性 / ベクトル値補助関数 / H∞制御 / 状態方程式制御器 / 線形行列不等式(LMI) |
Research Abstract |
ディスクリプタ方程式表現を用いて複合システム制御問題の解法を導出するための過程として、今年度は、線形ディスクリプタシステムのロバスト制御問題の解法の導出、そして、非線形システム安定解析法の再考を行った。 まず、前年度の研究成果である線形ディスクリプタシステムに対する状態方程式安定化制御器設計法を拡張し、ロバスト制御器設計法を導出した。線形ディスクリプタシステムに対するロバスト制御系設計法は、非線形複合システムの設計法へ至る基礎的理論となる。そこで、線形ディスクリプタシステムに対する状態方程式H∞制御器が存在するための必要十分条件をLMI(線形行列不等式)により導出した。そして、与えられた制御対象に対するすべての状態方程式H∞制御器をLMIの解によるパラメータ表示として与えた。得られた成果は、現在、ジャーナル誌に論文投稿中である。 いっぽう、非線形複合システムの解析・設計法において、非線形システムの安定解析法を再考することは重要である。そこで、リアプノフの安定解析法に立ち戻って安定条件を見直した。すると、リアプノフの安定条件におけるスカラ値補助関数であるリアプノフ関数の代わりに、ベクトル値補助関数を導入すれば、安定解析がより見通しよく行えることが明らかになった。しかも、リアプノフ関数は陽には使わずに、ベクトル値補助関数とシステムを記述する関数のみによって、安定解析が可能である安定条件を導出することができた。得られた成果は、安定解析のみならず、制御系設計問題におけるスカラ値補助関数とその勾配を用いた条件式に適用できることも明らかとなった。その成果は、学会発表済みである。 さらに、複合システムの例題として、四脚受動的動歩行ロボットを対象とし、実機実験により歩行可能性を解析した。その成果は、次年度に国際会議にて発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の基礎固めで得られた成果を拡張することができた。さらに、安定解析法について新たな成果が得られた。 交付申請時においては、複合システムのモデリングと安定化制御則の導出まで行う予定であった。ところが、研究を進めていく過程で、一般的な非線形システムに対して新たに有用な安定条件の導出、という展開があったため、安定化制御則の導出にまでは至っていない。しかしながら、今年度得られた一般的なシステムを対象とした成果は、安定解析を見通しよく容易に行える、というこれまでにない進展である。そしてそれは一般的なシステムを対象とした成果であるから、複合システムをモデリングして得られる大規模なシステムへ適用可能である。 交付申請段階では予想していなかった新たな進展が得られたことから、おおむね順調な進展であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
H24、25年度に得られた研究成果は線形ディスクリプタシステムと一般の非線形システムに対するものであったため、最終年度であるH26年度にはそれらの成果を非線形複合システムへと拡張・適用する。すなわち、まず、複合システムをディスクリプタシステム表現し、線形ディスクリプタシステムに対して得られている成果の拡張を試みる。さらに、非線形システムに対して得られている安定条件を複合システムに適用する。具体的には、以下の計画に従う。 複合システムは、重複分割によってディスクリプタ表現されたいくつかのサブシステムに分割可能である。そこで、複合システムを大規模ディスクリプタシステムとしてモデリングし、サブシステムとシステム間結合を用いた安定解析法の確立と分散安定化制御則の導出を行う。 いっぽうで、H25年度に得られたベクトル値補助関数による安定条件は、状態方程式表現された非線形システムに対する成果であるから、まず、その成果を非線形ディスクリプタ表現されたシステムへと拡張する。そして、その成果をさらに、大規模ディスクリプタシステムへと拡張する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額が異なった。当初は、数値計算用ソフトウェアを購入して数値計算を主に進める予定であったが、理論上の新規な進展があったため、ソフトウェアの購入は見送った。また、国際会議での発表も次年度に行うことにしたため、執行額が予定より少なくなった。 次年度使用額と翌年度分として請求した助成金とを合わせ、数値計算を行うための計算機と計算用ソフトウェアを購入し、国際会議での発表を行う。さらに、研究上必要な数学関係雑誌や制御工学関係雑誌を購入する。
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Research Products
(1 results)