2013 Fiscal Year Research-status Report
微小ノイズ印加時におけるMMOs現象の挙動に関する解析
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24560556
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
遠藤 哲郎 明治大学, 理工学部, 教授 (60247145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 直彦 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究員 (90213123)
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Keywords | MMOs / 非線形回路ダイナミックス / 拡張BVP発振器 / 微小外力応答 |
Research Abstract |
当該年度は,微小パラメータを含む拡張BVP発振器において印加する微小外乱をノイズと置いて解析を行った.この発振器はMMOs(mixed-mode oscillations)を発生する代表的な回路モデルとして知られている.系は3次元の確率常微分方程式によって表される.従来法では,確率常微分方程式の数値解法は主にオイラー法が用いられていたが,本研究では,カオスのような非常に複雑な振動を長時間観察しなくてはならないため,オイラー法では極めて長い時間の数値積分が必要となる。そこで,ルンゲ・クッタ法を用いる効率的な数値積分法を提案する。この方法の概要について述べる. まず,Cコンパイラに付属している一様乱数を利用し,この乱数をボックス・ミュラー法を用いることにより,ガウスノイズを作成した.そして,このノイズをローパスフィルターにかけて帯域制限し,その帯域制限されたノイズを,より十分細かい刻み幅を用いたルンゲ・クッタ法に適用することにより,数値積分を行った.ローパスフィルタには移動平均を用い,十分帯域制限されるようにパラメータ値を設定した。本研究では,数値積分の刻み幅に対し,十分に帯域制限されたノイズを適用した.数値実験の結果,非常に微小な外力によってMMOsは崩壊し,カオス的となることが明らかとなった.この結果は,前年度の実回路実験において見られたカオス的な振る舞いが,微小ノイズの印加によって説明ができることを示している. また,微小パラメータを含む拡張BVP発振器の微小ノイズの加わった系では,定性的に,前年度に行った微小周期外力を印加した場合と定性的に同様な現象が観察されることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は実回路実験によって,微小パラメータを含む拡張BVP発振器においてMMOs現象の代わりにカオスの発生を観察されたが,その現象が超微小ノイズの印加のなされた非常に現実的な回路ダイナミックによって説明できることが明らかとなった.MMOsの研究は,世界的な規模で解析が行われているにもかかわらず,その現象は微小ノイズによってカオスへと遷移する.MMOsはノイズの印加に対して鋭敏であることが示された.これは,当該分野において注目される解析結果であり,回路実験に見られる現象のメカニズムを明らかにする具体的な回路力学方程式が得られた. また,従来法では確率常微分方程式は主にオイラー法によって解かれてきたが,本研究では,実物理現象の定性的な振る舞いを明らかにできる効率的なルンゲ・クッタ法が提案された.解析は順調に進んでおり,応募者らが予想した結果が次々と得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
実回路に存在する微小ノイズの印加された現象は,ノイズの代わりに微小周期外力を印加することによって定性的に一致した現象が得られている.外乱に周期性を仮定すれば,周期振動からカオスへの遷移が分岐理論を用いて解明できる可能性がある.そこで,本年度は,微小周期外力の印加された拡張BVP方程式の分岐集合を作成する.分岐理論においては,最も代表的な周期解からカオス解への遷移メカニズムを表す周期倍分岐現象が知られており,2-パラメータ分岐図を作成することにより,微小周期外力の印加時におけるカオスの発生を厳密に示せる可能性がある.また,周期外力の印加時においては,発振器はアーノルドタングと呼ばれる非常に興味深い同期引き込み領域が発生することが知られており,本研究は,MMOsとカオスとアーノルドタングの関連性を調べるための非常に興味深いモデルとなる可能性がある.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計算のために必要な計算機を校費によって購入したため.また,謝金を間接経費から支出したため。 研究代表者と研究分担者は共著で世界的に有名な国際会議The 29th International Technical Conference on Circuit/Systems Computers and Communicationsに執筆し,"Bifurcation scenarios from a limit cycle to a three-torus in a three-variable nonautonomous oscillator"というタイトルで投稿した.採録されれば,タイ国プーケットで行われるこの国際会議に出席予定である.また,研究代表者はスイス国ルツェルンで行われる国際会議2014 International Symposium on Nonlinear Theory and its Applications にも投稿し,論文が採録されれば出席する予定である.
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Research Products
(11 results)