2013 Fiscal Year Research-status Report
コンクリートの材料劣化および修復過程の組織解明に基づく画像診断法の提案
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24560564
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
五十嵐 心一 金沢大学, 環境デザイン学系, 教授 (50168100)
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Keywords | 中性化 / けい酸塩系表面含浸材 / 電気伝導率 / 超吸水性ポリマー / 点過程 / 反射電子像 / RGB情報 |
Research Abstract |
当初の研究計画における平成25年度の主たるテーマは;①中性化およびCa溶出が物質透過性に及ぼす影響の解明と積極的に中性化層を形成させたときの物質透過性の評価②微細ひび割れを導入した供試体の中性化による治癒およびけい酸塩系表面含浸材による表層改質とひび割れ閉塞の確認③実構造物より採取したコンクリートコア供試体の物質透過性を評価と低倍率画像の幾何学的特徴との対応,以上である.これらのテーマに関して得られた主な結果は以下のとおりである. ①高炉スラグ混入ペーストを若材齢から中性化させた際,中性化領域では高炉スラグの反応が阻害され,粗大毛細管空隙率は非常に高い値を示した。しかし,そのような多孔質の中性化領域であっても,粗大毛細管空隙率の変化と電気伝導率の関係から,伝導経路が部分的に遮断されている可能性が示唆され,スラグ系における物質透過性低下時の組織の特徴は,セメントの水和反応だけ生じる場合とは異なると考えられる. ②水酸化カルシウムが低減している系にけい酸塩系表面含浸材を塗布した場合の改質効果を,微小硬度測定,示差走査熱量測定および反射電子像の画像解析法により評価した。単純に塗布した場合においては,表層部に若干緻密な組織の形成が確認されるだけであった。しかし,飽和水酸化カルシウム水溶液に浸漬後に含浸処理を行うことによって含浸材が十分に反応し,改質効果が高くなることが示された。すなわち,中性化を生じるなどして反応対象物質が不足すると判断される場合でも,外部から水酸化カルシウムを供給することで改質効果を高めることが可能と考えられる. ③実構造物から採取したコアをより簡便に評価する手法として,スキャナーの利用とRGB情報に基づく特徴抽出法を提案した.提案法によれば,精度良く骨材相を抽出でき,骨材は凝集性の分布を示すことおよび材料分離傾向も容易に定量評価が可能であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に実施予定であったトピックスのうち,Ca溶出問題については,その後の予備実験の状況から供試体管理が難しいと判断されたこと,および本質的な機構は別のテーマにて検討している内容とのアナロジーから類推できると判断し,これをテーマから除くことにした.すなわち,本研究材料劣化過程のトピックは減ったことになる.しかし,その一方にて,中性化による自己治癒の検討は終えており,またけい酸塩系表面含浸材による修復過程の解明の検討が順調に進行し,特に,反応型と固化型での組織の相違やひび割れ閉塞性の相違などが明らかにされつつある.また,治癒への応用も可能であると期待される超吸水性ポリマーの内部養生法に関して,低倍率画像の有効利用とも関連させながら検討を進めた結果,従来の自己収縮抑制効果の粒子寸法依存性を低倍率画像の空間統計量の相違から説明できることを指摘したことは大きな成果であると考えている.さらに,劣化過程のテーマとして超吸水性ポリマーの混入が,凍結融解によるスケーリングに及ぼす影響の画像評価を加えて,一連の実験を行った.この成果について現在までに口頭発表のみを行っているが,RILEMの研究委員会活動の成果として報告も行っている.このことが,スケーリング抵抗性の評価と画像診断を組み合わせる新たな研究の着想にいたった. 一方,実コンクリートの組織の評価については,低倍率での顕微鏡観察のための画像の取得法と評価法がおおよそ確立できたところにある. また,研究成果の口頭発表も順調に進み,当初計画通りの国際学会にて成果発表を行った.さらに,最終年度の成果発表のための国際学会発表については,予想以上の成果を得て2件の投稿を終えている.
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように計画は概ね順調に進行していると考えているので,今後も研究計画調書の方針にそって検討を進めたい.最終年度であり,これまでの成果の総括と補充実験に重点が置かれることになる.これをもとに劣化と修復の画像診断法の根拠を明確にできると期待している.また,これまでの一連の検討において,組織形成や組織劣化などの評価の簡便な方法として電気伝導率測定を用いてきた.その一方で,昨年度に4電極法による体積抵抗率の測定装置を自作し,水和反応の進行過程,特に練混ぜ直後から凝結に至る若材齢での特性を明らかにできた.これら2つの電気的な測定法の結果は,組織形成,材料劣化という過程と非常によく整合するようであり,また本研究の画像解析の結果とも矛盾しない.さらに,本研究にて主たる研究手段としてきた画像解析法が古典的ともいえる水銀圧入法の結果と矛盾しないことが示され,さらにはパーコレーションの概念ともよく整合することを示すことができた.よって,画像解析,画像診断として単独に用いるよりも,この電気特性の計測と組み合わせた方法として適用する方が,精度も高くかつ画像診断の判断根拠を与えることにもなると考えられる.今後は,両者を組み合わせた方法を基本として,画像診断法の提案を目指すことにしたい.
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