2012 Fiscal Year Research-status Report
構造物の塩害評価のための指標としての浮遊塩分量推定法の提案
Project/Area Number |
24560579
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
小畑 誠 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30194624)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腐食環境 / 飛来塩分量 |
Research Abstract |
土木構造物の維持管理のための腐食環境の評価と予測については,現在のところ膨大な現地観測データにもとづく指針が提示されているにとどまる.この点,申請者は大域および局所的な数値シミュレーションを組み合わせることにより,当該地点での浮遊塩分量と気象データが与えられれば橋梁面への付着塩分量を合理的に推定できることを示した.そこで明らかになったのは,塩害環境評価のための重要な指標は,浮遊塩分量と風向,風速等の気象データであり,これまでに蓄積された指標は必ずしも適切とは言えない点である.本研究では塩害の基本となる現象を大域的な物質輸送・拡散として扱う立場にたって観測値を整理し実用的で柔軟性のある飛来塩分量予測モデルを構築する. 平成24年度における成果は次の通りである.まず,浮遊塩分量の適切な指標を得るためにボリウムサンプラでの観測を開始した.観測点は福井県坂井市および名古屋市内の名古屋工業大学である.名古屋市内においては冬季にほぼ連続して2ヶ月に及ぶ観測を実施した.その結果浮遊塩分量の絶対値はほぼ過去の観測値と類似の結果を得た.なお冬季の名古屋市における観測値の擾乱要因として名古屋高速道路公社における凍結防止のための塩分散布があることを確認した. つぎに数値モデルとして大域環境モデルである WRF/Chemにおいて,飛来塩分環境に大きく影響する地形,地表面データの改善とその影響を確認した.通常用いられているUSGSのデータの日本付近における妥当性には疑問点もあり,より正確と思われる国土地理院のものを用いた.また,降水による塩分粒子の沈着についても一部考慮した.その結果特に名古屋市観測点における浮遊塩分量の観測値をこれまでにない精度で再現できるようになった.しかしその一方で海岸線に近い福井県坂井市の観測点では観測値の数が十分でないこともあるにしてもまだ十分な再現はできていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には,予定しているよりも早く2地点でのボリウムサンプラを用いた観測を開始したこと,およびそれをほぼ説明する数値解析プログラムの運用にいたっている.しかしタンク法やドライガーゼ法や土研式タンク法による観測が遅れていることから,全体としては概ね目標は達成できたものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ当初の研究計画どおり遂行されており,今年度も当初計画による.具体的には以下のようになる. 前年度立案の計画にもとづき定点観測点を決定し,土研式タンク法およびガーゼ法による長期観測を実施する.また,定点観測点を含むいくつかの観測点においてローボリウムサンプラによる短期間の観測を行い浮遊塩分量の調査を行う.これらの観測結果にもとづき,数値モデルのパラメータの検討,および土研式タンク法による観測値とローボリウムサンプラによる浮遊塩分量との相関関係もあきらかにする. また,上記観測により得られることが期待される,過去の土研式タンク法による観測値から推定される浮遊塩分量データも用いて,洋上およびサーフゾーンでの塩分発生関数のパラメータについてフィッティングを行う.これにより,フィッティングデータを限られた地点の観測値から全国のものを用いることができる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
なお平成24年度に予定しながら実施の遅れているドライガーゼ法やタンク法についても観測を開始する.この観測に相当する予算執行は今年度に行われる.
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