2013 Fiscal Year Research-status Report
構造物の塩害評価のための指標としての浮遊塩分量推定法の提案
Project/Area Number |
24560579
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
小畑 誠 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30194624)
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Keywords | 腐食環境 / 浮遊塩分量 / 気象解析 |
Research Abstract |
構造物の腐食現象に対する現在の対策は,海岸線からの距離に依存した簡単な飛来塩分量の予測をもとにしたものである.しかし,実際の構造物では,その腐食,塩害は同じ構造物でも部位に大きく依存して生じており,維持管理の観点からはこの局所性を明らかにしておくことが望ましい.この問題に対して,個々の構造物の近傍の流体解析をもとに浮遊塩分粒子の構造物表面への付着を検討していく手法が合理的である.このような手法を実行するためには,流体解析の初期境界条件のひとつとして空気中の塩分粒子濃度を知る必要がある.これにはこれまで広く用いられてきている土研式タンク法やドライガーゼ法による「飛来塩分量」がある.実際,腐食環境の指標としての研究はこの飛来塩分量の観測および予測が中心であり多くのデータの蓄積もなされてきている.しかし,この「飛来塩分量」は浮遊粒子の濃度と風向および風速に依存し,全般的な腐食環境評価には有用なものではあるが,流体解析により構造物表面に生じる腐食環境の不均一性を論じるためには必ずしも有用なものではない. 本研究室では「飛来塩分量」と区別された「浮遊塩分量」,すなわち空気中に含まれる塩分粒子の濃度が腐食環境の指標として適切と考えて,これまで主として気象解析による予測法についていくつかの詳細な検討を行ってきた.そこでは従来の観測値との関係で概ね良好な結果が得られたものの,「浮遊塩分量」の実測値データは限られており,これまで直接的な比較検討が困難であった. そこで本研究ではフィルター法(JIS Z 8814)による浮遊塩分粒子量の観測を行い,気象解析に基づく浮遊塩分量予測法の精度を検討する.また,同時にこれまでデータの蓄積の多いドライガーゼ法による観測も行い,フィルター法との関係についても考察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
名古屋市内においてフィルター法による浮遊塩分量の観測を実施中であり,同地点で同時にガーゼ法による観測も行っている.フィルター法の観測結果はその基本において他機関による観測結果と矛盾がなく,その他の気象情報との関連性においても大きな齟齬が見られない.数値解析結果は地表面データや湿性沈着等を適切に考慮することにより大きく改善されることを示した.フィルター法との比較はまだ観測が1年に達していないので確実なことは言えない状況であるが,一定の傾向が見られている.この点については今年度あきらかにすることができると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度中に予定していたフィルター法およびガーゼ法の定点連続観測が1年に達するので,観測結果に対して一応の考察を加えることができるものと考えている.また,数値解析についても,湿性沈着の取り扱いにいくつかの問題があることを把握しているのでこの点についても改善を加える予定である.これらの結果により,ガーゼ法と浮遊塩分量の一定の関係を示し,本研究の目的である,任意地点の浮遊塩分量をいくつかのレベルに応じて容易に推定する手法を提示することができる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度内の台風や大雪等の異常気象によりフィルター法による観測期間が予定より少なくなり結果としてそれに対応したイオン分析のための支出がなくなったことによるもの. 今年度のイオン分析費用等に充当する予定である.
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