2013 Fiscal Year Research-status Report
精密小型加振機と無線センサネットワークを用いた構造センシングの高度化と実証実験
Project/Area Number |
24560586
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
佐伯 昌之 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (70385516)
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Keywords | 精密小型加振機 / 無線センサネットワーク / 振動特性 / Green関数 / ARX法 |
Research Abstract |
本研究の最終目的は,社会基盤構造物の力学的特性を極めて高精度に把握し,構造物の長寿命化・品質管理に資することである.そのため,精密小型加振機と無線加速度センサネットワークを用いたシステム開発を進めている.本研究では,この目的を達成するために5つの研究課題に分けて進めている. 1) 精密小型加振機の制御方法の確立:平成24年度に確立した手法を用いて,平成25年度は,その妥当性を確認した.2m超の鋼製単純梁を用いた室内実験において,得られた時系列データをARX法で解析し,Green関数を推定した.さらに,このGreen関数を説明する有限要素モデルを作成し,解析結果と比較した.その結果,両者が極めて良好な一致を示すことを確認した. 2) 加速度センサ自動キャリブレーション機能の構築:平成24年度に開発した加速度無線センサの機能を拡張し,精度検証を行った.その結果,時刻同期精度は十分であることを確認した.一方,振幅については,個体差の確認,温度依存性の確認にとどまっている. 3) 振動特性同定手法の高度化:上記1)と関連し,本システムの計測データにARX法を適用することの妥当性を検討し,対象構造物が線形弾性体およびRayleigh減衰を仮定できるのであれば,ARXモデルが妥当であることを示した. 4) 鉄筋コンクリート梁模型を用いた損傷同定実験:鉄筋コンクリート梁模型を作製し,連続振動実験を行った.ただし,荷重が小さすぎて曲げ疲労破壊には至らなかった. 5) 原位置における機動計測実験:対象構造物を道路標識とする振動実験を行った.まず,精密小型加振機の治具を開発した.そして,実際の道路標識に固定し,サーボ型加速度計と無線加速度センサで応答を計測し,Green関数を取得した.ただし,無線加速度センサによるデータ取得では,シグナル/ノイズ比が低く,これの改善が次の課題として明確になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定した研究項目(上記5つ)のうち,1) 精密小型加振機の制御方法の確立,3) 振動特性同定手法の高度化は,計画を前倒しで完了した.また,4) 鉄筋コンクリート梁模型を用いた損傷同定実験,5) 原位置に機動計測実験は計画通り進んでおり,平成26年度も継続する予定である.2) 無線加速度センサの自動キャリブレーション機能の構築は,進展が遅れており,平成26年度に注力する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で述べた通り,5つの研究項目のうち,1) と 3) は完了している.ここでは,2),4),5) について,個別に今後の進め方の説明する. 2) 無線加速度センサの自動キャリブレーション:すでにセンサの個体差の確認,ノイズレベルなど基本的な特性は抑えている.その結果,試作1号機は使用したMEMS加速度計のノイズレベルが高すぎ,微小な振動を短時間で計測するには,不向きであることも確認した.そのため,ノイズレベルを1/10に抑えた試作2号機も開発した.これ等の機材,情報を基に,レーザー変位計の応答をレファランスとして,センサノードが自動的に計測値を補正する手法の構築(組込みプログラムの開発)を試みる. 4) 鉄筋コンクリート梁模型を用いた損傷同定実験:H25年度は,梁に与える荷重が小さ過ぎたため,梁模型を疲労破壊させるに至らなかった.疲労破壊では,応力振幅と振動回数の積が重要なパラメータとなるが,応力振幅が小さい場合には,通常の実務で使用する疲労破壊の経験式が適用できない.(微小応力振幅についてはバスキン則が適用され,さらに多数回の応力振動を作用させる必要がある.)そのため,精密小型加振機の荷重を増し,再度実験を行う.必要な荷重の算出方法もすでに検討済みである.先にも述べた通り,実験は1度試みており,そのときには固有振動数を相当に高い精度でモニタリングできているため,荷重を増した実験では,疲労が発生すれば,その変化を高精度に追従できる可能性が高い. 5) 原位置における機動計測実験:平成25年度と同様に,道路標識を用いた実験を継続する.高精度のサーボ型加速度計を用いた計測では,高精度にGreen関数を同定できているため,無線加速度センサネットワークのキャリブレーションが上手くいけば,実験を成功させることができると思われる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残額は6,731円と端数であった.研究遂行に必要な他の物品等は,この残額よりも高額であったため,他の予算から支出した.そのため,6,731円が残った. 平成26年度予算と合わせて,実験遂行に必要な消耗品を購入する.
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Research Products
(4 results)