2013 Fiscal Year Research-status Report
コンクリート内部を貫通する鋼材に生じる劣化の非破壊評価
Project/Area Number |
24560587
|
Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
白旗 弘実 東京都市大学, 工学部, 准教授 (40298013)
|
Keywords | 橋梁 / 腐食 / 鋼・コンクリート界面 / 非破壊検査 |
Research Abstract |
社会基盤の老朽化の問題が指摘されてきている.その中の一つに2007年に,コンクリート床版を貫通した斜材をもつ鋼トラス橋において,コンクリート床版内で斜材が腐食し切断した事故がある.破断のメカニズムとして,コンクリートと斜材の間に剥離が生じ,雨水の滞留により,鋼材が腐食していったことが考えられている.トラス斜材の腐食はコンクリート内部にあるので,肉眼では確認することがきわめて難しくなる.何らかの非破壊検査手法を適用せざるを得ない.本研究の目的はコンクリート部材に埋め込まれた鋼材の腐食を検出することである. 非破壊検査手法の中でも当該研究において,これまでは赤外線サーモグラフィの適用を試みてきた.赤外線サーモグラフィは大きくアクティブ法とパッシブ法に分けられる.熱源を強制的に加えるアクティブ法を適用することとした.昨年度以前は熱を与える方法をとったが,昨年度は冷却する方法を試みた.実験で用いた供試体は約20cm立方の型枠を作り,中に鋼板を設置し,フレッシュコンクリートを流し込むことで作製した.鋼板はコンクリートとの付着を切り離すため,厚さ0.1mmオーダーのグリスを塗ったアクリル板を置き,硬化後に引き抜くことで界面き裂を模擬した.冷却には,コールドスプレーおよびドライアイスを使用した.コールドスプレーを使用した際に,冷媒除去後5分間の温度計測により,界面き裂検出を行った.き裂がある場合,界面部の温度上昇が遅くなり,き裂検出の可能性が示された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は超音波探傷に取りかかるつもりで研究をすすめていたが,赤外線中心の実験を行い,進捗が必ずしも芳しくなかったといえる.赤外線では画像を取る角度により,結果が大きく影響されることが理由で,角度を検討することで,時間が大幅にかかってしまった.昨年度には超音波探触子を購入し,少しではあるが,超音波による実験も開始している.いた波法から開始しているが,板厚減少量が少ないためか,違いが顕著に現れてきていないのが現状である.供試体の人工欠陥(板厚減少)をもっと簡単なものから始めるなどして,改善を図りたい.既往の文献ももう少し調査して,改善につながる対策を考えていきたい.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は超音波探傷試験を中心に行い,腐食による減厚を調べる予定である.既往の研究では,板波を用いた例があるが,当該研究では,横波(SV波)斜角法を検討する.さらに表面波の適用も試みる.板波とは,板の上下面で共振するような形で伝播していく波である.薄板の探傷に主に適用されてきた手法である.対象とする部材の板厚は10mm程度であり,コンクリートに埋め込まれている部分は長さとして20cmほどであるので,入射角が非常に浅くなることは明らかである.板波,横波,表面波いずれの場合においても,実構造物では,コンクリートをまたぐ形で探触子を配置することは容易ではないが,実験では,またぎ走査から始めることとする.降雨時においては,界面は湿潤状態となるので,乾燥状態とは波動伝播挙動が変わるものと考えられる.水に浸すなどして,実験を行う予定である.乾燥過程においても挙動が変化していくものと考えられるので,探触子を放置した状態で,数時間後に同様の実験を行うことも考えている.またぎ走査がうまくいった場合,これを片側探傷に変えて検討する.片側探傷の場合,二探触子法および一探触子法の適用が考えられる.二探触子法は二つの探触子を用いて,片側を送信,もう一方を受信として探傷する方法であるが,たがいを独立に走査することができるので,得られる情報量が増えることとなり,一探触子法と比較して,減厚を検出しやすいものと考えられる.その他にも,入射波を収束させる探触子の使用,可変角探触子の使用もパラメータとして考慮する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は24年度と同様であるが,供試体の作製で思ったほど費用がかからなかった.供試体を破壊しなかったことにもよると思われる. 平成26年度においても,新たな供試体を作成する.さらに超音波探触子(センサ)の購入を予定している.超音波センサは周波数,入射角度,縦波,横波といった波の種類などで用途が分けられているが,繰越金を超音波センサの購入費用に充てることにより,より多くの条件を検討したい.
|