2012 Fiscal Year Research-status Report
カオス信号入力に基づく構造物の健全時情報を必要としない即時異常性診断法の開発
Project/Area Number |
24560589
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
野村 泰稔 立命館大学, 理工学部, 助教 (20372667)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日下 貴之 立命館大学, 理工学部, 教授 (10309099)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 構造ヘルスモニタリング / 健全性評価 / カオス / フラクタル / 画像相関法 |
Research Abstract |
今年度は,カオス信号を診断対象に入力し,その応答アトラクタを評価することで,損傷位置同定が可能かどうか数値実験及び模型実験を通じて調査した(研究テーマA).また,申請課題のもう一つの主要な研究テーマである画像相関法によるコンクリート構造物のき裂進展モニタリング(研究テーマB)に関して,システムを構築し,表面状態の異なる供試体を用いてき裂同定実験を行った. 研究テーマAでは,構造物にカオス信号を入力すると,複数の振動モードが励起し,応答データからアトラクタを再構成し,そのまま評価すると損傷発生の検知は適切に把握できるものの,損傷の位置を特定することは極めて困難であることが分かった.そこで,Wavelet係数で表現される一次振動モード相当の応答に着目し,そのアトラクタを評価することを試みた.数値実験及び模型実験を通じて,任意に与えた損傷の位置が正確に同定できることが分かった. 研究テーマBに関しては,き裂が視認困難な状況においても,表面の変位場が捉えられれば,正確にき裂が同定できることを明らかにした.そして,これらのシステムを拡張し,同定対象として表面き裂だけでなく,構造内部の損傷を考え,健全時情報を参照することなく検出することが可能かどうか調査した.デジタル動画像をもとに画像相関法を用いて,振動応答を空間的高密度に取得することが可能かどうか確認し,さらに,フーリエ振幅値で簡易的に推定される基本モード形状の不連続点が構造物の損傷に関連すると考え,それをフラクタル次元解析により評価した.結果として画像相関法により振動応答が適切に取得できることを明らかにし,数値実験および橋梁模型を用いた車両走行振動実験を通じて提案手法の有用性が確認され,Baseline-free型の異常診断法が構築できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請課題の到達目標は健全時の情報を必要とすることなく既設構造物の即時診断を簡易に行えるシステムを開発することである.初年度は特に,可視光動画像の画像相関法を用いたBaseline-free型の異常診断法を構築することを試みた.診断対象として片持ち梁を用いた数値実験を通じて,1次モード形状の不連続点をフラクタル次元解析により抽出することが可能であること,また,得られたフラクタル次元のピーク値を与える位置は仮定する損傷領域と一致することが明らかとなった.そして,橋梁模型を用いた車両走行振動実験では,橋梁模型の振動状況を撮影し,動画像に画像相関法を適用した結果,卓越周波数は別途行われた自由振動実験の結果と一致し,非接触でかつ簡便に振動応答が正確に取得できることが明らかとなった.さらに,橋梁模型を用いた車両走行実験結果から,振動応答の1次モード相当のフーリエ振幅値を計算し,フラクタル次元解析により評価することで,構造特性の変化を同定することが可能であることが分かった.そして,各計測ポイントで計算されるフラクタル次元の相対評価だけでなく,フラクタル次元を計算する際に参照される計測ポイントを考慮すると,構造特性の変化だけでなく,大まかな損傷領域の特定が可能となることが分かった.特に,これらの損傷領域の特定は,健全時の情報を用いる必要は全くなく,まさに振動モード形状の不連続点領域をフラクタル次元解析により評価するのみで行われる.以上のことから,本申請課題の到達目標に当初の計画以上に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果と課題を踏まえ,今後は,初年度の画像相関法を用いたBaseline-free型異常診断法の高度化を図る.申請課題の今後の取組として, 画像相関法の解析条件について,対象構造物とカメラとの距離が振動取得に影響することから,1ピクセル単位の絶対値長さを変更させながら,振動取得の精度を明らかにするとともに,サブピクセル精度をさらに向上させることが挙げられる.また,画像相関法を行う際の追跡する領域のサイズと次ステップの画像で探索範囲の領域のサイズが振動取得にどのように影響するか明らかにする必要がある.初年度では,構造物の損傷として,構造物の断面変化が視認可能な状況を考えたが,損傷が構造物の剛性低下に与える影響を考えた場合,構造内部の損傷に対しても,提案手法は適用可能であると考えられる.上記の課題に加え,今後の取組として,そのような状況下で実験を行い,提案手法の有用性を調査する予定である.また,現状では,1台のムービーカメラを用いて動画取得を行っているが,2台のカメラを使用し,3次元で応答を取得するシステムの開発を同時に進める予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は試験体表面の動的変位場計測によるき裂および構造内部損傷同定実験を重点的に行う.これらの実験に必要な機器は全て購入済みであるが,加速度計を用いた振動実験と動画像から変位場時刻歴の取得を1台のPCで実行することは負荷が大きいことから,最終年度の現地実験も考慮して,25年度にモバイル型PC(Panasonic社のCF-Sシリーズ:300千円)を動的変位場計測・評価用に一台購入する.また,損傷同定精度を確保するためには,システム試作->実証実験->システム改良の一連のサイクルが必要となると考えられる.そこで,25年度は試験体(コンクリート・アルミニウム試験体各10体:計300千円)および治具等の加工費(200千円)を計上する. 旅費については主に情報収集および研究成果発表のために計上している.平成25年6月16-20日,米国ニューヨークにて開催される11th International Conference on Structural Safety & Reliability(ICOSSAR2013)に参加するため,300千円を計上している.また,国内旅費については土木学会,機械学会,材料学会の講演会参加の費用として計上する.実験補助に学生を雇用するため,謝金を計上する.また英文誌への投稿の際に外国語論文の校閲費を計上する予定である. なお,初年度に消耗品購入用途の費用について未使用分が13776円生じたが,平成25年度に購入予定の消耗品に計上する予定である.
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Research Products
(10 results)