2013 Fiscal Year Research-status Report
カオス信号入力に基づく構造物の健全時情報を必要としない即時異常性診断法の開発
Project/Area Number |
24560589
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
野村 泰稔 立命館大学, 理工学部, 助教 (20372667)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日下 貴之 立命館大学, 理工学部, 教授 (10309099)
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Keywords | 構造ヘルスモニタリング / 健全性評価 / カオス / フラクタル / 画像相関法 |
Research Abstract |
本年度は,健全時情報を必要としない即時異常診断法の開発を目指し,カオス応答アトラクタの評価に基づく異常診断法(テーマA)と画像相関法に基づく異常診断法(テーマB)の開発に取り組むとともに,数値実験・模型実験を行い,これらの方法の有用性を調査し各課題を明らかにした. テーマAでは,カオス応答の1次振動モード成分に着目し,そのアトラクタの形状をリカレンスプロットにより評価することで,損傷の位置を正確に同定することに成功した.ただし,損傷の位置を同定する際に,健全時の情報を必要とし,応答アトラクタを評価するだけでは本研究課題の目的達成には至らなかった.今後はカオス入力と出力情報を用いてシステム同定の概念を利用し,損傷箇所の剛性を直接同定する予定である. テーマBでは,コンクリート構造物の表面き裂同定システム(B-1)と構造体内部の欠陥検知システム(B-2)の開発に取り組むとともに,模型実験を通じて有用性および実用化に向けた課題を調査した.表面き裂同定(B-1)に関しては,試験体表面の変位場からき裂の開口幅を算出する方法を確立し,表面の力学状態を監視することで,き裂が,視認容易な状況・視認困難な状況・不可視である状況において,き裂の検出に成功した.ただし,これらの実験では4点曲げコンクリート供試体のき裂発生前後の画像を用いていることから,今後は実用化に向けて,表面状態により視認困難なき裂がすでに発生している状況下で,振動中の供試体の動画測定から,表面き裂が同定できるかどうか確認する必要がある.構造体内部の欠陥検出(B-2)に関しては,車両走行模型橋梁振動実験装置を用いて,試験体の振動を空間的高密度に計測することに成功し,供試体の低次振動モードの曲線構造をフラクタル次元により評価することで,健全時の情報を必要とすることなく,損傷を模擬した切欠き領域を正確に同定することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
カオス信号入力に基づく異常診断法(テーマA)では,入力と構造物の加速度応答を粒子フィルタによりデータ同化することで,剛性そのものを直接同定することが可能である.予備実験の段階では,それに成功している. 画像相関法に基づく異常診断法(テーマB)の内,構造体内部欠陥(B-2)に関しては,モード形状の曲線構造を空間的高密度に取得可能であることから,一様断面部材を対象とする場合,健全時の情報を参照することなく,確実に損傷を捉えられることが分かった.また,表面き裂(B-1)に関しても,荷重変動の大きさに依存する傾向もあるものの,き裂の開閉挙動が動画像により計測されれば,健全時の情報を必要とすることなく検出可能であることがこれまでの実験により確認されている. 以上のことから,本申請課題の達成度について,当初の計画以上に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
テーマAでは,カオス入力信号と応答情報を用いて,粒子フィルタによるデータ同化を考え,構造物の剛性同定システムの構築を目指す.粒子フィルタによるデータ同化では,本研究での同定対象となる剛性・減衰定数などはすべて確率分布で表現されることから,限界状態関数を新たに設定し,信頼性解析を試み,損傷確率の高い領域を同定することを試みる予定である.この方法は,まさに入力と出力の関係から診断対象の振動に関する支配方程式を同定することから,健全時の情報を参照することなく,損傷領域を同定できる可能性がある. テーマBでは,健全時情報を参照することなく,構造体の表面き裂および内部欠陥を検出するシステムの構築を目指し,これまでに開発したテーマB-1およびテーマB-2に関するシステムの統合化を図るとともに,非接触変位場振動計測技術および損傷同定の高精度化を目指す.システム全体の開発に関しての具体的取組みは,画像相関法の解析条件について,サブピクセル精度の更なる向上を目指す予定である.個別テーマに関して,表面き裂同定では,振動下にあるき裂を有する供試体の動画計測結果から,画像相関法を適用する画像の選定を自動化するシステムの構築を目指す.一方,内部欠陥同定(B-2)に関しては,振動モード形状の曲線構造の評価方法として,これまでフラクタル次元解析を用いてきたが,ウェーブレット変換など他の方法の適用を考え,損傷と曲線構造の連続性の変化が高感度に特定できる信号処理方法を検討する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費執行はほぼ計画通りであったが,より効率的に物品購入等を行った結果,端数が未使用金として生じた. 来年度はこの端数分も含め,適切に物品購入等を行う.
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Research Products
(11 results)