2012 Fiscal Year Research-status Report
物質移動を考慮した土/水/空気連成解析による汚染土砂締固め管理手法の確立
Project/Area Number |
24560606
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
河井 克之 神戸大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30304132)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地盤工学 / 土壌圏現象 / 自然災害 |
Research Abstract |
東日本大震災によって発生した福島原子力発電所事故によって,大気に放出された放射性物質は拡散しながら降下し土壌を汚染するだけでなく,各用水,農畜水産物への混入が予想され,早期の除染が社会的に焦眉の問題となっている.今後,大量の放射能汚染土砂を含有放射性物質の漏出を抑制しながら,特定の限られた領域内に力学的に安定した状態で保管するために,広範な地盤工学の知見を結集した締固め施工による,盛土建設が必要となることは明らかである.これまで,土壌汚染問題は浸透拡散問題として扱われ,地盤の変形の影響は考慮されることはなかった.しかしながら,地上で地盤材料を保管するには,体積を小さくし,力学的安定性を確保できる締固めによる盛土施工が必要であり,材料の変形は無視できない.ここでは,理論,解析,実験を駆使し,自然環境(降雨浸透,蒸発散など)の中で汚染物質の漏出を抑制し得る,安全な盛土構築手法の確立を目指す. まず,既往の土/水/空気連成有限要素解析コードに物質輸送方程式を適用し,土/水/空気/溶解物質連成有限要素解析コードを開発した.締固めを模擬する際には,締固め層内での含水率の局所的な分布が生じる可能性があり,同時に物質移動を表現する本研究においては,精緻な空間離散化を行う必要がある.研究者らがこれまで有していた物質輸送を表現し得る解析コードは,応力~変形に関する変数四角形要素の各節点で,水頭や状態量は要素中心で代表していたため,解析精度に問題があった.本研究では,新たにアイソパラメトリック要素を用いた空間離散化を行った.その結果,解析精度が向上するとともに,濃度フラックスが卓越する条件での解析の不安定化を抑制できるようになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
汚染物質を含む土砂を,締固めて盛土を構築する際の問題となる,物質の移動を表現するためには,これまで長い土質力学の歴史の中で力学体系に組み込まれてこなかった「締固め」を如何に定義するか,また地盤の変形を考慮した土中の移流拡散を定式化する必要がある.本研究では,既往の不飽和土の力学体系の中で土/水/空気連成初期値境界値問題として「締固め」を表現するとともに,矛盾なく物質項の連成にも成功している.その意味で,当初の目的を十分に果たしていると考える.しかしながら,得られたモデルは,「締固め」と「物質移動」を個別に表現できる点の検証は行っているものの,そもそもの変形が物質移動に与える影響に関する研究やそれに伴う問題が生じた事例がないため,解析結果の妥当性を検証するところまではいっていない.次年度以降,具体的な実際の現象と解析結果を比較検討し,その精度を高めていきたいと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に開発した土/水/空気/溶解物質連成解析コードを用いて,室内締固め試験を模擬した結果,「締固め」によって得られる試料は,内部に含水率や間隙比などの分布が生じることが分かった.室内試験のサイズでこのような分布が生じるということは,実際の盛土施工では,より大きな局所的な分布を生じる可能性があるだけでなく,複雑な応力履歴を受けることによる不均一性も生じると考える.そのため,ここで得た解析コードで実際の施工を模擬した解析を行う必要があると考える.また,解析結果からは土中の溶解物質は締固めによって境界に向かって外側へ移動することが分かった.これは,汚染物質の締固め施工を行うと暴露側への移動を示すため,盛土施工と一緒に盛土の表面を遮水し,物質移動を助長しないようなシステムが必要となる.これまで地盤工学では,地盤材料の組み合わせによって遮水効果を発揮するキャピラリーバリアシステムが効果的であることが分かっている.次年度の研究計画に,このキャピラリーバリアシステムの活用法についても検討をしていきたいと考える.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(21 results)