2012 Fiscal Year Research-status Report
流域マネジメントのための水文・生態系シミュレータの開発とLCAによる統合的研究
Project/Area Number |
24560616
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
守利 悟朗 東京大学, 地球観測データ統融合連携研究機構, 特任准教授 (80402220)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 流域シミュレータ / LCA / 流域マネジメント / 流域水文・生態系モデリング学 / 土砂動態 / 窒素循環 / 気候変動 / 緩和策 |
Research Abstract |
計画初年度にあたる本年度は、水文・生態系シミュレータの開発及びLCAによる統合的研究に着手した。 具体的には、まず流域水文・生態系シミュレータ開発に関して、地下水からの取水や河川との相互作用、窒素に着目した物質循環及び水温の予測、土砂流出と輸送、さらに気候変動が流域の水収支に及ぼす影響など、次世代型統合水文・生態系モデルの開発要素の中で、LCA分析に不可欠な要素を抽出し、設計・開発に着手した。特に、化石水など、持続的でない地下水の安定的な利用に関する潜在リスクを主要な帯水層等に関して情報収集し、環境リスク分析に資する形で整理した。更に、衛星観測データ及び現地観測データを用いたわが国の全国的な水文・気候学的変動把握を通じて、異なる流域スケールでの降雨の時空間分布、洪水や渇水の外力となる水文・水質・生態系の変化といった水利用に直結する項目について、日本の異なる地域を対象として、定量的にその精度も含めて、再現実験に着手した。これらの成果は国際学術論文として取りまとめられた(Mouri et al., 2012(b)等)。 LCAに関しては、流域の水循環において特に重要と考えられる都市の排水処理に着目し、エネルギー収支及びコスト等に関する主要な要素をピックアップして、流域内におけるどの地域で生産されたものであるか、に関する情報を取得するとともに、統合水文・生態系モデルによる分析と照合できるような形式によりデータベースを構築した。 更に、水文・生態系シミュレータの開発及びLCAによる統合的解析にも着手し、検証実験を進めており当所の計画以上に順調に進展している。 今年度は、水文・生態系シミュレータの高精度化を更に進めるとともに、LCAとの統合的な推計手法を確立し、流域の水系における量的、質的な予測、エネルギー収支及び金銭的換算の推計手法の確立を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究成果は、概ね以下のとおりとなっており、流域水文・生態系シミュレータ及びLCAを用いた統合解析については、当初の計画以上に進展している。以下に、これまでの進捗状況(現在までの達成度)を記載する。 まず流域水文・生態系シミュレータの開発に関しては、日本における流域のどういう水資源にどの程度依存しているのかを把握し、水文・生態系シミュレータへの初期設定条件として高解像度のデータデータベースを構築した。更に、高度化された流域水文・生態系モデルを、これまでに準備された外力データセットを用いて長期積分し、前述の地下水や河川水等の水源分離を行い、現状の水インフラ整備状況のもとで、どの程度水資源賦在量が分布しているのかを推計し、更にLCAに資する形で整備した。更に、水系における水資源及び環境の変化に関して、過去の推移に関して可能な限り情報を集めると共に、将来の気候予測情報と整合的な情報源に基づく、水文及び人口の増減や経済発展など社会変動情報を用いて将来推計し、水需給変化アセスメントに利用可能なデータセットを完成した。 更に、高精度・高解像度の最新の気候モデルによる影響評価を利用して、複数の気候予測結果に基づく流域レベルでの水質の年々変動、日変動、生態系へのインパクトの影響予測手法を確立した。これらの研究成果は国際学術論文として、取りまとめられた(Mouri et al., 2013(b); Mouri et 2013(c)等)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以上の変化が、水利用システムや水災害防止システムに与える影響を、豊水、渇水、水質への影響、積雪水資源と水利用可能量の関係、季節、水質及び生態系への影響といった項目について、システムの信頼度や脆弱度といったLCAに資する指標で表現するとともに、影響の回避・軽減の為の適応策の最適なマネジメント手法を確立する。 そして、入力情報として整理されたLCA分析の結果と、水文・生態系シミュレータから推計された過去から将来にわたる利用可能な水資源量情報、更に、これまでに整備された社会変動を考慮した水需要変動情報を重ね合わせ、LCA分析を行い日本を支えているどの地域のどういう水資源、及び生態系にどの程度の潜在リスクがあるのかを定量的に示す。 更に、地域ごとに異なる尺度の環境リスク同士を比較可能とするため、想定される環境への影響に関して、水系における水資源の量的及び質的な収支とともに金銭的換算を導入し、国内外の地域に適用可能な、流域マネジメントマスタープラン作成に資する、優先度の判断の材料となる情報を提供する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画は、概ね当初の予定通りを計画している。 具体的には、年度の各段階において、研究対象地域において現地調査を行い、流域水文・生態系シミュレータ及びLCAとの統合的解析に必要なデータを取得する。 また、流域水文・生態系シミュレータ及びLCAとの統合的解析進めるとともに、文献収集を行い、研究成果を学術論文として取りまとめる。その為の経費を計上している。 更に、解析データの記憶媒体としての経費を計上している。
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