2013 Fiscal Year Research-status Report
流域マネジメントのための水文・生態系シミュレータの開発とLCAによる統合的研究
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24560616
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
守利 悟朗 東京大学, 地球観測データ統融合連携研究機構, 特任准教授 (80402220)
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Keywords | 流域シミュレータ / LCA / 流域マネジメント / 水文・生態系シミュレータ / 土砂動態 / 窒素循環 / 気候変動 / 適応策・緩和策 |
Research Abstract |
計画2年度目にあたる本年度は、水文・生態系シミュレータとLCAによる統合的解析の実装に着手した。 すなわち、気候変動や人間活動等が流域の環境状態に与える影響を定量的に把握し、環境政策、マスタープランの作成等に資する学術的知見を確立するため、国内外における現地観測、対象とする要素の時・空間スケールに応じたモデリングおよび数値実験を行い、環境状態の定量的把握などを経て、最適な流域環境対策オプションの決定法に至るまでの手法を構築した。 例えば、水資源問題において特に重要な地域および要素として、愛媛・松山地域を対象とした流域における排水処理マネジメントに着目し、前年度までに開発された水文・生態系シミュレータおよびライフサイクルアセスメント (LCA)を統合し、人間活動、土地利用および地理情報等に基づく環境負荷量に関する時空間的変動の評価手法を確立し、国際学術誌等において発表を行った。 次の課題として、高解像度の流域水文・生態系シミュレータを日本域スケールに拡張を行った。本研究により、流域スケールから全国スケールでの水資源および水質の影響評価が可能となった。更に、申請者らがこれまでに開発してきた流域水質シミュレータを応用し、水量・水質に加えて陸面における放射性物質の動態解析手法を構築した。これにより、貯水池などにおける1年から100年スケールでの放射性物質、土砂および水量のポリュートグラフやフラックス等が推計可能となった。本研究成果は、メソスケールトレーサーモデル等の出力を用いて水道取水源のポリュートグラフを出力する事などに応用が可能である。 なお本研究による各解析結果は、主要な研究機関に提供されており、水道事業や森林分野への影響予測等、異分野との融合等にも活用されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年から平成25年までの研究成果は、概ね以下の通りとなっており、流域水文・生態系シミュレータ及びLCAを用いた統合的研究については、当初の計画以上に進展している。以下に、これまでの進捗状況(研究目的の達成度)を記載する。 まず、流域水文・生態系シミュレータの開発に関しては、前年度までに構築された高解像度の環境データベース、詳細な土地利用、人間活動および地理情報等に基づき、日本における各流域のどういう水資源にどの程度依存しているかを把握し、LCAとの統合的解析を行い、環境、エネルギーおよびコストの観点から定量的な環境影響評価を行い、流域マネジメントおよび政策等に資する知見を示した(Mouri et al., 2013c等)。更に、高精度・高解像度の流域シミュレータを国レベルのスケールに拡張し、気候変動への水資源および水質の年々変動、日変動、生態系および放射性物質(セシウム)への影響評価手法を確立した(Mouri et al.,2014a等)。 更に、本研究により得られた知見を海外の調査研究に応用し、環太平洋地域の火山群における融雪期における水資源および水質特性への解析を行い、更なる流域シミュレータの開発および流域マネジメントへの新たな知見を得た(Mouri et al., 2014b)。 以上の研究成果により、各地域の特性に応じた環境改善オプションの効果が定量的に評価され、施策の立案等に資する情報として提供することが可能となり、気候変動の緩和策及び適応策の最適化等の視点からも総合防災的に減災・環境保全等の実社会の諸課題に資するための学術的基盤が確立された。本年度までの研究成果は、主要執筆者として査読つき国際学術誌10編等に取りまとめられている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに構築された流域から広域スケールに適用可能な水文・生態系シミュレータおよびLCAとの統合的研究を推進し、水資源や生態系への影響に直結する項目として特に重要な森林などの土地利用および人間活動の将来変化を詳細に考慮し、様々な空間的スケールを対象とした評価手法を構築し、地域ごとに異なる尺度の環境リスク同士を比較可能とする。更に、想定される環境変動への影響に関して、水資源及の量的及び質的な収支とともに金銭的換算を導入し、国内外の地域に適用可能な、流域・環境マネジメントマスタープランやグリーンイノベーション等に資する為の優先度判断の材料となる情報を示す。最後に、水文・生態系に関わる喫緊の課題に対応するめの科学的知見を総合的にとりまとめ、国際学術誌などで広く公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国土交通省、文部科学省、環境省等の公的機関や東京大学地球観測データ総融合連携研究機構(DIAS)等によるデータベース化等が進展したため、当該年度の物品費等の支出が減少した。そのため、次年度使用額が生じている。 本研究は想定よりも進捗していると考えられるが、着実に更なる加速を行い今後の発展に繋げる。そのため、流域シミュレータのバージョンアップのための数値計算機、データストレージ、モデル性能の検証のための調査旅費等への使用を計画している。
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