2013 Fiscal Year Research-status Report
水文学的視点からの再生可能エネルギーの限界と脆弱性
Project/Area Number |
24560617
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鼎 信次郎 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (20313108)
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Keywords | 水資源 / エネルギー / 陸面モデル |
Research Abstract |
本テーマを水文学的視点から評価・モデル化するために、低水および高水についての水文シミュレーション技術の改良を行うこと、これまでのこの手の大規模モデルに含まれていない遠隔導水スキームを数値モデルへと導入すること、統合的な検討の例をメコン川流域を対象として行うことを開始すること、将来の温暖化や社会変化シナリオ下での食料とバイオ燃料の競合のモデル化を行うこと、等のそれぞれが本年度の目標であった。本年度は、これらそれぞれについての研究を進めた。まず、低水に関わる積雪や氷河などの数値モデルについて改良を進め、遠隔導水スキームの導入も可能とした。次に高水・低水およびメコン川流域を対象という点についても、メコン川を対象として最新のCaMa-Flood水文モデルを設定、運用可能とし、低水と発電に関わるダムモジュールを導入し干ばつ時のシミュレーションを成功させるとともに、高水に関わる氾濫およびデルタでの分岐分流、海面上昇および温暖化時の流量および氾濫の変化についてシミュレーションを行った。また、最新の温室効果ガス排出シナリオ下でのバイオ燃料供給制限条件における食料リスクと淡水資源との関係について、数値シミュレーションを行った。ところで、これらの研究の全体的な進行は予定通りであったが、年度内に数ヶ月をかけてキャンパス内の引っ越しをせねばならなかったため、比較的大きめの予算措置を伴う研究作業の実施を少し後回しに、一方で予算を措置せず進められる作業を優先して行った。このため全体としての作業進捗には問題ないものの、多少の金額をH26年度へと繰り越したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度も気候データ、土地利用データ、陸面水文シミュレーションなどについて順調に研究を進め、上記のようにH25年度の目標についても順調に達成した。具体的にはH25年度は、低水および遠隔導水に関わる水文モデルの各種の改良を進め、また特にメコン川流域を対象として最新の水文モデルを設定の上で、ダムおよび氾濫、海面上昇および温暖化による降水量変化時の条件におけるシミュレーションを成功させた。また、温暖化シナリオ下でのバイオ燃料と食料との両立についてグローバルなリスク検討も行えた。また、バイオ燃料広域導入時のリスクについて、包括的なリスク特定研究も実施した。このように、それぞれの各要素については、おおむね順調に進展している。最終年度は、対象とする地域を絞ることによって総合的な形での成果へとつなげたい。
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Strategy for Future Research Activity |
再生可能エネルギーを水文学的視点から評価・モデル化するにあたって、上記のように本研究内でも特に幾つかの側面を強調しながら研究を推進してきたが、国内外においてもこの2-3年、様々な研究の進展があった。それらの結果として、たとえばバイオ燃料作物についての評価・モデル化を例にとると、全球レベルでのポテンシャルの推測は可能であり本研究でも進めてきたものであるが、土壌や土地の持続性や様々な制約条件の地理的分布について、現在のグローバルデータセットおよびグローバルシミュレーションには限界があることが判明した。そこで昨年度から本研究でも進めているように、細かい解像度での計算が可能であり情報も取得可能である、特定地域を対象とした研究の推進がブレークスルーになると考えている。具体的には昨年度から、水資源制約下での食料やバイオ燃料ポテンシャルの限界値、さらには洪水や干ばつなどが発生した際の脆弱性についての評価などの、統合的なシミュレーションおよび検証、将来予測をメコン川流域を対象として進めている。本年度は最終年度ということもあり、この継続を行い、当初の目標を最新の国内外の研究動向に従った形で示し、取りまとめたい。すなわち、水制約下での食料とバイオ燃料、洪水・干ばつ等の極端現象の変化の中でのアセスメント、を対象地域に対して行い、実際のところどれほど再生可能エネルギーに依存可能であるかを示す技術を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の全体的な進行は予定通りであったが、年度内に数ヶ月をかけてキャンパス内の引っ越しをせねばならなかったため、比較的大きめの予算措置を伴うものや、引っ越し状態とは同時には進めにくいものは研究作業の実施を少し後回しに、一方で予算を措置せず進められる作業を優先して行った。このため全体としての作業進捗には問題ないものの、多少の金額をH26年度へと繰り越したものである。たとえば、整理された場所の必要なリサーチアシスタントは後に回し、自身によるコンピュータ上での処理を先行させたりした。 本研究は大規模データを用いた数値シミュレーションを特徴とするものである。それに関しては、これまでの本予算での購入機器、一部はH26年度の新規物品の購入、一部は本プロジェクトの実質的な前身プロジェクトによって整備した機器の継続運用・保守によって、総体として必要な機材を準備する。また、旅費としては、国内外の学会で成果発表を行うための費用を必要とする。これによって、外部の方と科学的な議論を深めることができるとともに、学会等において様々な情報収集を行うことが可能になる。次いで人件費・謝金としては、データ整理および数値モデルシミュレーション補助として、リサーチアシスタント(あるいは謝金)のための費用を必要とする。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Illustrating a new global-scale approach to estimating potential reduction in fish species richness due to flow alteration2014
Author(s)
Yoshikaw, S., A. Yanagawa, Y. Iwasaki, P. Sui, S. Koirala, K. Hirano, A. Khajuria, R. Mahendran, Y. Hirabayashi, C. Yoshimura, S. Kanae
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Journal Title
Hydrol. Earth Syst. Sci.
Volume: 18
Pages: 621-630
DOI
Peer Reviewed
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