2012 Fiscal Year Research-status Report
大粗度を用いた中小河川の河道多様性創出法に関する研究
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24560621
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
冨永 晃宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60135530)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 粗度 / 水制 / 局所洗掘 / 河床変動 / 流れ構造 / 巨石 / わんど |
Research Abstract |
大粗度の形状の比較として立方体,円柱,球の3種類について,水深を3通り変えて流れ構造をPIV実験によって計測した.形状の違いによる粗度前面の偏流角度,乱れ強度,レイノルズ応力の違いが明らかにされた. 次に,大粗度として球粗度を側壁に設置した移動床実験及び河床変動後の河床形状を固定した河床上の流れの実験では,前面の洗掘に伴う球の移動過程が明らかにされ,洗掘は球の同心円状に現れ,時間の経過とともに洗掘深及び洗掘範囲は対数的に拡大していくことが示された.河床形状を固定した固定床実験では,初期状態において,壁面側では球のすぐ横の隙間を抜ける流れにより局所的に底面流速が大きくなり,河道中央側では球のすぐ横を中心に下降流とともに底面流速の大きい領域が広がる.また,球前部では局所的に河床に向かって下降流が発生している.球粗度周辺の洗掘には底面流速と河床に向かう下降流が大きく影響することがわかった.ある程度河床変動が進行した後においては,球前部の洗掘内では明確な馬蹄渦が発生しているが,その他の領域では初期状態より逆流域が減少し,壁面や河床に沿った流れとなり,底面流速も減少している.これ以後は洗掘の進行が遅くなる原因であると考えられる. 次に水制の上流側に高さの低い水制(導流工と呼ぶ)を設置した実験では,導流工を適切な間隔で設置した場合,水制の局所洗掘が抑制されることが示された.これは導流工による偏流が水制先端の底面せん断応力の増大を抑制する効果と,導流工を越流した流れが形成する横断渦が水制前面の下降流を抑制する効果の相互効果によることが示唆された.導流工を水制と間隔が狭い場合は水制の間に横断渦が発達し,結果として水制前面の下降流の抑制効果が小さくなる.導流工の設置間隔が広くなると発生する横断渦は傾斜し水制根元付近には到達しなくなることから,水制前面の馬蹄渦が弱まり,全体として洗掘は抑制される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大粗度周辺の流れ構造の特徴を把握するための基礎的実験では,立方体,円柱,球の3種類について,単独に底面に置かれた場合の流れ構造をPIV実験によって比較することができた.粗度に対する相対的水深の影響についても検討した.時間平均的な流れ構造の違いについてはある程度明らかになったが,瞬間的・組織的な大規模渦構造についてはまだ検討が終わっていない.比較的フルード数が大きく水深変化が大きくなるケースについては,球粗度についてのみ検討行っている.木工沈床のような透過型の障害物や粗度が群で置かれた場合の2次元数値計算法について,抵抗が精度よく評価できるモデルを作成した.これについてはさらに検証が必要と考えている. 球粗度の移動床実験では,局所洗掘の時間進行過程が明らかにされた.変動過程の河床を固定した実験では,9分後の河床形状についてのみPIV実験が行われた.流れ構造の初期状態からの変化が大きいことが示され,河床変動に対する流れの効果が明らかにされた.ただし,河床変動後の河床形状をプラスチック板に再現する作業に多大な労力を要したため,これ以後の河床形状についての実験はできていない. 当初計画にはなかったが,現地の水制の観測から水制の前面にある障害物が局所洗掘を軽減している可能性が示唆されたため,水制の上流側に高さの低い水制(導流工と呼ぶ)を設置した実験を行った.その結果,水制周りの局所洗掘は,流れの急縮による底面せん断応力の増大と,水制前面に発生する下降流の2つの効果によることが示され,導流工はこれらのメカニズムを変化させることで洗掘抑制効果があることがわかった.この結果は粗度の配置方法に有益な指針を与えるものである.
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Strategy for Future Research Activity |
単一の大粗度周辺の流れ構造に及ぼす形状の効果についてさらに検討する.立方体,円柱,球という形状と自然石を用いた実験から,形状に依存したパラメーターを抽出したい.また,河床変動に及ぼす形状及び透過性の効果を実験的に明らかにすることを試みる. これらの基礎実験と並行して,河道多様性の創出の手段として大粗度を複数配置して設置する方法について検討していく.配置法として2通りのパターンを考え,一つは河床に巨石を平面的に配置する場合で,小規模な水深・流速の変化を狙ったものである.二つは河岸にブロックを設置する場合であり,河道全体の蛇行形態および瀬・淵の創出を狙ったものである.河床に巨石を配置する場合については,河床の平面的な巨石の割合,横断間隔,縦断間隔について系統的に変化させた実験を固定床で行い,水位上昇率を計測し.2次元の水深平均浅水流モデルにより数値シミュレーションによる水位再現性が向上するようにモデルを改善する.また大粗度の後流の相互河床及び側岸との相互作用についても検討する.次に,同一の配置条件で移動床実験を行い,安定形状について検討する。さらに,河床変動後の流水抵抗を比較し,河床形状を入力した数値シミュレーションを行って,流水抵抗減少のメカニズムを考察する.また,河床変動後の河道形態の多様度及び平水時の流れの多様度を評価する指標を検討する. 巨石または籠ブロックを側岸に設置し,河道を平面的に大きく変化させる方法については,大粗度の河道幅に対する相対的大きさ,両岸に交互に配置する場合の縦断方向間隔を変化させる。特に大粗度による偏流の角度が重要であることがこれまでの実験から得られており,この偏流角度と流量規模,水深,フルード数といった水理条件との関係をまず固定床において明らかにする.ここでは特に蛇行度を評価するような河道多様度指標の定義について検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験に関しては,計測器はすでに整えられているが,粗度模型の製作や河床形状の製作,可視化用トレーサー等が必要となる.また,次年度は粗度と河床変動に関する実験が観察しやすい実験水路の製作を考えている.またPIV実験は大量のデータを扱うため大容量のハードディスク等の記憶装置と高性能なコンピュータを必要とする. 数値シミュレーションについて,2次元モデルから3次元モデルによる解析が必要となるため,高性能なワークステーションとプログラム言語及びデータ処理用のソフトウエアーが必要である.3次元数値計算による解析の結果を用い,この結果を2次元数値計算の中にモデル化して取り入れ,簡易な予測手法を確立していきたい. その他では,大粗度や水制の設置された河川における現地観測のためのレンタカー代を必要とする.また,成果発表として国際水理学会における発表を行うための旅費,国内では大粗度の実験的研究に関する情報収集旅費及び学会発表の論文投稿費と旅費を必要とする.
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Research Products
(5 results)