2013 Fiscal Year Research-status Report
大粗度を用いた中小河川の河道多様性創出法に関する研究
Project/Area Number |
24560621
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
冨永 晃宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60135530)
|
Keywords | 粗度 / 水制 / 河床変動 / 河道多様性 / 流れ構造 / 流水抵抗 / 数値計算 |
Research Abstract |
河道多様性の創出の手段として巨石を複数配置する場合の基本的特性を把握するために,立方体を2個並列に並べた場合,及びこの後方に1個追加して3個とした場合について,その横方向間隔及び縦方向間隔が背後の流れ構造に及ぼす影響を実験的に検討した.配列の仕方によって後流組織渦構造の干渉が変化し,粗度群をユニットとして考えた時の下流の平均流速,乱れ強度,組織渦構造が大きく変化することが示された. 大粗度を河床前面に複数配置して河道全体に及ぶ改変を行う場合,出水時の抵抗の増加について検討した.河床の平面的な巨石の割合,横断間隔,縦断間隔について系統的に変化させた実験を固定床で行い,上流の水位上昇率を計測した.配列による抵抗の増加率の違いが示され,2次元の水深平均浅水流モデルの改良により水位再現性が向上した. 次に水制の上流側に高さの低い水制(導流工と呼ぶ)を設置した場合の局所洗掘の抑制メカニズムについて実験およびLESモデルを用いた数値計算によって検討した.導流工の高さが大きくなるほど導流工前面の洗掘深が増大するものの,水制工の洗掘深は減少し,導流工高さが水制高さの1/2の時に全体の洗掘は最小となった.固定床では導流工には水制の洗掘を抑制する効果が認められなかった.水制工周辺の洗掘孔が拡大する過程において導流工が馬蹄渦の発達を抑制することが明らかにされた. 当初計画にはなかったが,水制の対岸への影響を示す例として,河岸凹部の対岸に水制がある場合の凹部内流れへの影響を検討した.水制設置により凹部内の再循環流の構造はほとんど変化せず,その流速が大きくなり,境界の水交換速度が増大した.この原因として,水制の縮流効果により凹部境界流速が加速される効果が最も大きい.非越流水制と越流水制では水制背後のはく離域の特性が大きく異なることが水制の凹部からの距離の影響を変化させることが示された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大粗度周辺の流れ構造に関する基礎的実験では,立方体を複数配置する場合にその横断方向間隔と縦断方向間隔とが背後の流れ構造に及ぼす影響をPIV実験によって検討し,生息環境に与える指標として粗度群背後に形成される低速域の大きさ,乱れ強度の大きな領域等を明らかにした.粗度が水没する条件では低速域がかなり減少するため,河道全体を考えた配置の検討を行う必要がある.出水時の大粗度及び透過型構造物の抵抗増加特性については,2次元数値計算において大粗度前面の淀み領域と後方の止水域を考慮することで予測精度を向上させるモデルを示した.この適用性についてはさらに河岸に粗度を設置したケースを加えて幅広い実験との比較を行いたい.特にフルード数が大きく水深変化が大きくなる場合の避難場所の確保については流速計測と数値計算からさらに検討する必要がある. 水制の上流側に導流工を設置した場合の局所洗掘の抑制メカニズムを検討した結果,固定床では導流工には水制の洗掘を抑制する効果が認められなかったが,移動床実験で水制工周辺の洗掘孔が拡大する過程において導流工が馬蹄渦の発達を抑制することが明らかにされた.導流工の高さと水制との距離の影響が明らかにされたことから,水制を群として設置することで群全体として適切な洗掘と堆積を誘導できる可能性が示された. 河岸凹部の対岸に水制がある場合の凹部内流れへの影響については,大粗度の河道全体に与える影響として注目すべき結果を示した.このことは流れの蛇行の誘導による多様性の創出という観点とは別に,ワンドなどの水交換促進や土砂堆積の制御などに有用な知見を与えるものである. 創出された多様性の評価については,大粗度群設置の場合,流速場における流速の頻度分布という形で示すことを提案している.ただし,河床変動後は大きく変化することが予想され,この状況はまだ把握しておらず今後の課題である.
|
Strategy for Future Research Activity |
大粗度の形状の効果についてはまだ十分な検討がなされていないため,自然石を用いた実験を行い,立方体粗度と比較して抵抗特性がどのように変化するかを検討することを考えている.単一及び数個の粗度を設置した場合の河床変動については球粗度以外に検討していないため,直方体や自然石の場合の移動床における安定形態や河床変動形状を明らかにし,河床変動後の多様性の評価を行いたい.河床変動に及ぼす透過性の効果についても不透過型との違いが認識されたが,まだ不明な点が多く透過度を制御できる杭粗度などを用いて検討していくことを考えている. 大粗度の治水影響度については2次元数値シミュレーションが有効な手段となっており,大粗度を河岸に集中させたケースについての抵抗特性の検討を加えて,様々な実験結果との比較検証から精度の高い予測が可能となるようにさらに検討を加えていく. 河岸に大粗度を設置し河道全体の蛇行形態および瀬・淵の創出を狙ったケースでは,両岸に交互に配置する場合の縦断方向間隔がポイントとなることから,この点を変化させた実験を行い,固定床で流れ構造への影響を明らかにした後,形成される河床変動の形態を調べ,固定床の流れ構造と移動床の河床形状との関係を明らかにしたい.また,固定床に置いて透過型の水制と不透過型との違いについて検討する. 河床変動後の河道形態の多様度及び平水時の流れの多様度を評価する河道多様度指標については,まだ十分な成果が得られておらず,最終年のまとめとして検討する.河床変動結果から評価する指標と,形成された河道における平水時の流れを考慮した影響度の比較検討が必要と考えており,このためには河床変動後の河床形状を入れた数値計算を行い,実際の流れ場の多様性の評価を行いたい.また出水時に関しては河床変動後の流れの抵抗減少のメカニズムについて検討する.
|