2012 Fiscal Year Research-status Report
都市・農村活動の社会構造変化に伴う河川流域からの栄養塩負荷量変動の推定
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24560625
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
石塚 正秀 香川大学, 工学部, 准教授 (50324992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
紀伊 雅敦 香川大学, 工学部, 准教授 (20426266)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 河川環境 / 負荷量解析 / 播磨灘 / 貧栄養化 / ノリ色落ち / 都市活動 / 農村活動 |
Research Abstract |
1)水質調査結果より,TNに対する,DIN,DON,PONの割合はそれぞれ約7割,約2割,約1割であり,窒素の多くが溶存無機態として存在していることがわかった.同様に,TPに対する,DIP,DOP,PPの割合はそれぞれ約5割,約2割,約3割であり,約5割が溶存無機態として存在し,懸濁態は約3割を占めているとわかった.また,溶存無機態が約1割しかない千種川や,懸濁態が約6割も占めている加古川など,リンは窒素以上に河川毎の栄養塩形態が異なる傾向がみられた.CODに対するP-COD,D-CODの割合はそれぞれ約2割,約8であり,溶存態が多いことがわかった. 2)経済モデルによるTN負荷量の変化に対する漁業被害のリスク評価により、TN負荷量の増加に対して、ブリ養殖の期待収入は減少し、逆にノリ養殖の期待収入は増加する傾向にあることが示された。 3)GISを用いて負荷量を空間情報化し,負荷量分布を作成した.播磨灘流域圏における生活系負荷量は,COD・TN・TPのすべての項目においても兵庫県南部を中心とする人口の集中している地域に生活系負荷量が多く集中していることが分かった.播磨灘流域圏における産業系負荷量は,COD・TN・TPのすべての項目において,臨海部および河道沿いに集中して分布していることが分かった.とくに集中している場所は,兵庫県東南部(加古川下流および明石川下流)の臨海部と,揖保川,加古川流域の河道沿いでみられた.播磨灘流域圏における土地系COD負荷量の増加傾向にある場所は,局所的に分布し,減少傾向にある場所は流域圏全体に分布することが分かった.播磨灘流域圏の土地系TN・TP負荷量は,増加傾向にある場所も減少傾向にある場所も流域圏全体に広がるということが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
播磨灘流域における河川調査を毎月実施し、栄養塩形態の分析を行うことができた。また、公共機関の調査データを収集し、水質の長期変化の特徴を明らかにすることができた。また、発生負荷量解析を行い、生活系、土地系からの負荷量を算定することができた。また、経済評価モデルを用いて、赤潮の発生件数と漁獲量の長期的な推移を比較して、リスク計算を行うことができた。一方で、工業系の負荷の算定には、原単位法による推定では不十分である点がみられたことと、下水処理場からの負荷の影響を精度よく評価することができなかったことから、平成25年度に改めて解析を進めて、検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.都市・農村活動の社会構造解析に関するモデル作成・将来予測:都市・農業活動をモデル化することで、都市・農村システムにおける社会構造変化が発生負荷量に与える影響を定量的に評価する。また、生活排水処理系の導入状況を推定する。活動モデルに関する基礎理論はすでに論文発表しているが、モデルの再現性が低い場合にはノンパラメトリック手法を活用するなど柔軟な分析手法を検討し、研究目的が達成できるように手法の変更を行う。 2.各月の水質調査:平成24年度に採取した河川水に含まれる懸濁態無機態リンの分析を行う。 分布型水文流出モデルによる河川流量算出と総淡水量の推定:播磨灘を囲む河川流域を対象として、数値モデルによる河川流量を算出し、陸圏から播磨灘に流入する総淡水量を推定する。 3.水質シミュレーションと水環境流出モデルによる河川負荷量の推定:社会基盤データ解析で得た負荷量解析用基礎データを用いて、負荷量の空間分布を考慮した河川水質シミュレーションを行う。水質モデルには,石塚・溝口(2010)が用いた定常モデルを改良した非定常モデル(宇野、2011)を用いて、水環境流出モデルを構築し、負荷量を明らかにする。負荷量解析の結果が充分な精度で得られない場合は、より平均的な結果とはなるが、空間解像度を下げる等して負荷量の推定を試みる。 4.原単位法による窒素・リンの負荷量解析:原単位は、環境省が実施している発生負荷量等算定調査報告書(環境省)を参考にする。なお、詳細なデータが得られない場合は、石塚・溝口(2010)が提案する比率法を用いる。また、膨大なデータを扱うため、流量の多い流域を優先的に解析することも想定している。将来変化についてはできるだけシナリオ数を多くしたいと考えているが、時間的な制限が生じた場合は、例えば、IPSSが公開している人口データ等を用いて都市・農村活動モデルに反映させる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
11月にトルコで開催される第10回EMECS会議への発表が受理されたことから、会議に関する外国出張旅費を計上する。また、土木学会四国支部、および全国大会において成果発表を行う予定であり、国内学会における旅費および参加登録費に使用する。また、研究協力者の千葉大学丸山博士との打合せを2回実施する予定であり、国内旅費に使用する。また、水質分析に関わる消耗品を購入する予定である。負荷量解析に必要な基礎データを購入する予定である。また、データ解析に必要なデータ解析装置やソフト、周辺機器類を購入する予定である。
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Research Products
(5 results)