2012 Fiscal Year Research-status Report
沿岸環境評価における赤潮シミュレーションの可能性と限界
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24560626
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
安達 貴浩 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (50325502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋田 倫範 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (80432863)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 有害赤潮 / 生態系モデル / シャトネラ赤潮 / 密度成層 / 鹿児島湾 / 八代海 |
Research Abstract |
1)「定点観測の実施」: 鹿児島湾の北部海域を対象に,これまで5年間にわたり月2回の頻度で実施してきた現地観測ならびに係留機器を用いた観測を継続的に実施した.観測項目は,塩分,水温,栄養塩,DO,SS,POC,光量子,サイズ分画毎のクロロフィルa,フェオ色素,植物 プランクトン組成,ネット動物プランクトンである.同時に,平成24年度には,八代海の養殖実施海域においても同様の観測を1年間実施した.これらの観測によって,シャトネラ赤潮が発生しない1年間の検証データが取得できた. また,上記の観測と並行して,河川からの栄養塩負荷についての定期観測をこれまでと同様に実施し,プランクトンの栄養となる窒素,リン,シリカの流入特性を明らかにするLQモデルを確立した. 2) 「プランクトン競合モデルの構築」: 鹿児島湾で優占する珪藻を対象として植物プランクトン・バイオマスの季節変動を再現する数理モデルは既に完成されており,一時的に比較的大きなバイオマスを示すセラチウム属(渦鞭毛藻類)についても概ねモデル化が完成している.その一方で,密度成層場の再現性が,植物プランクトンの再現計算においても決定的な役割を果たすことから,平成24年度には,密度成層を高精度かつ高速に再現できる3次元数値モデルを開発するとともに,データ同化手法のコーディングを行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多くの沿岸海域において,赤潮被害は依然として深刻な問題であり,現在の水環境施策の決定において検討項目となっていない赤潮の影響は,今後数値シミュレーションによって定量的に評価・検討することが必要になってくる.このような事情を踏まえて,本研究では,生態系モデルを用いた赤潮シミュレーションによる沿岸環境評価の可能性と限界を明らかにすることを目的としている.具体的には,精緻な現地調査結果に基づいてプランクトン競合モデルを確立し,長期的な赤潮再現計算を実施し,さらに得られた結果に基づいて,現状の,現状の政策決定に用いられている環境基準(例えばCOD75%値,全窒素,全リン)の有効性と限界を明らかにすることが達成目標である. 達成目標を念頭に入れ,3年間の研究期間の初年度に当たる平成24年度は,観測・分析・数値シミュレーションの基盤を整備すると同時に,八代海,鹿児島湾で現地調査を1年間実施し,交付申請書に記載した目的や研究実施計画に則った研究を遂行することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には,以下のような研究を遂行する予定である. 1)「定点観測の継続的な実施」:現地調査を継続的に実施する.必要に応じて,観測項目の追加,補完的な観測の実施等を行なう.平成24年度は,鹿児島湾,八代海いずれにおいてもシャトネラ赤潮の発生はなかったが,平成25年度にシャトネラ赤潮の発生があった場合は,その期間別途,集中的な高頻度観測を実施する. 2)「2008年のシャトネラ赤潮を対象とした数値シミュレーション」:現地調査を継続的に実施すると同時に,平成24年度に確立した種々の数値モデルを用いて,2008年の鹿児島湾を対象に流動と低次生態系をカップリングさせた数値シミュレーション・モデルを確立する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には,鹿児島湾と八代海の両海域でシャトネラ赤潮は発生しなかったため,観測実施回数が予定よりも少なかった.したがって,次年度以降に鹿児島湾と八代海でシャトネラ赤潮が発生した場合,さらに,ほぼ毎年のようにシャトネラ赤潮の発生する有明海での観測に備えるために,平成24年度に配分された予算を一部繰り越すことにした. 平成25年度以降も継続的に現地調査を実施することから,現地観測の交通費,宿泊費,観測機器のバッテリー,観測時に使用する消耗品に対して予算を使用する予定である.
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