2012 Fiscal Year Research-status Report
アンサンブル降水量予報を用いた新しい洪水予測の開発
Project/Area Number |
24560632
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Public Works Research Institute |
Principal Investigator |
牛山 朋来 独立行政法人土木研究所, その他部局等, 研究員 (50466257)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 連携研究者交流 |
Research Abstract |
平成24年度は、流出解析・洪水予測に必要な予測降水量が得られる気象数値予報およびアンサンブル予報手法を開発する計画であった。アンサンブル予報は、既存の手法(タイムラグアンサンブル、局所アンサンブル変換カルマンフィルター(LETKF))を用いて、国内の都市河川の洪水予報に対応した適切な計算手法を開発する予定であった。 本年度はこのうち領域数値気象予報モデルWRFとLETKFを用いたアンサンブル予報手法の開発に重点をおいた。具体的には、2011年(平成23年)8月と9月に日本に上陸して大きな被害を出した台風12号・15号に対してWRF-LETKFを適用し、データ同化を行いながらアンサンブル降水予測を行う予報システムを構築し、概ね期待通りの予報値を得ることができた。また、得られた結果を京大で開発されたセル分布型モデルに導入し、兵庫県の日吉ダム流域における流出計算を行うことができた。WRF-LETKFは既存の手法であるが、本研究のような狭い領域における降水量予測の目的で使用された実績はまだなかったため、側面境界摂動を導入するなどの新しい手法を取り入れることが必要であった。この点については、予報結果を大きく左右する要因であるため、今後もさらに検討が必要である。 以上のように、懸案事項はあるものの、流出予測を行うことのできるアンサンブル予報システムを開発するという当初の計画は概ね達成することができた。今後も、様々な先行研究や、同じ手法を用いている研究者間で情報交換を行い、開発を進めて行く予定である。学会や論文での公開については、平成24年度中には行うことができなかったが、平成25年度にはいくつかの学会等で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の達成目標は、「雨を直接計算できる解像度によるアンサンブル数値予報の開発」であった。研究実績の概要でも述べたように、特定の対象豪雨に対してWRF-LETKFを適用し、概ね期待通りのアンサンブル予報値を得ることができたこと、得られた結果はこれまで一般的に用いられてきた決定論的予報による結果よりも改善が見られ、観測値に近い値を得ることができたことから、この目標は概ね達成することができたと考えている。しかしながら、得られたアンサンブル予報結果の広がり(アンサンブルスプレッド)が期待された値よりもやや小さめであったことや、予報降水量の精度が観測値と比べてまだ十分とは言えない、などの問題点も残った。従って、今後もこれらの点について改善できるよう開発を続けて行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は概ね計画通りの研究目的を達成できたので、平成25年度以降も計画の通り、「降水現象の種類(台風、前線、局地的豪雨)に依存する予報精度の評価」および「流域面積に対応した予報手法の評価」について研究を進める予定である。前者は、平成24年度に開発した手法を、さらに多くの豪雨事例に適用し、その予報精度や流出予測可能性について検討を行う。また、後者については、豪雨の予報降水量を用いて流出予測を行う時点で、異なる流域面積に応じた予測手法を調べるため、様々な流域面積を持つ河川に対して流量予測を行う予定である。また、降水量予測手法である、WRF-LETKFについても、アンサンブルスプレッドの値の大きさや予測精度に関する課題について改善に努め、さらに流出予測精度の向上に努める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
文書図等作成用パーソナルコンピュータ購入、データ保存用ストレージ、学会研究発表および論文発表用費用、および大型計算機使用料として使用する予定である。 平成24年度に購入した計算機により、降水量予報手法の開発を引き続き行う予定であるが、計算手法が確立し計算能力の大きな計算機を用いた方が進捗が大きいと判断された場合、全国共同利用研究機関の大型計算機を用いて計算を進めることも考慮して進めて行く。
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Research Products
(4 results)