2013 Fiscal Year Research-status Report
アンサンブル降水量予報を用いた新しい洪水予測の開発
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24560632
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Research Institution | Public Works Research Institute |
Principal Investigator |
牛山 朋来 独立行政法人土木研究所, その他部局等, 研究員 (50466257)
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Keywords | アンサンブル予報 / 洪水予測 / 降水予報 |
Research Abstract |
平成24年度は、流出解析・洪水予測に必要な予測降水量が得られる気象数値予報およびアンサンブル予報手法(領域数値天気予報モデルWRFと局所アンサンブル変換カルマンフィルターLETKFを用いたアンサンブル予報手法)を関西地域で動作するように構築し、予備実験を行った。平成25年度は、開発した数値天気予報モデルを用いて、現実の降水現象を対象に事例解析を行い、モデル及び手法の評価を行う計画であった。本年度は2011年(平成23年)8月と9月に日本に上陸して大きな被害を出した台風12号・15号に対してWRF-LETKFを適用し、データ同化を行いながらアンサンブル降水予測を行った。また、得られた結果を土木研究所で開発された分布型水文モデルであるRRIモデルに導入し、京都府の日吉ダム流域において流出計算を行った。 このアンサンブル天気予報システムを面積が限定された狭い流域に適用するため、側面境界摂動を導入するなどの新しい手法を取り入れることが必要であった。この点について、今年度は3種類の側面境界摂動を作成し、それぞれの振る舞いや予報結果について検証を行った。また、これまでの6時間先までの予報に加え、33時間先までの予報を行い、それぞれ側面境界摂動や台風事例に違いによる予報精度の違いを評価した。その結果、適切な側面境界摂動を与えることにより、決定論的予報よりも精度の高い予報値を常に提供できることを確認した。 以上のように、実際の降水現象を対象にアンサンブル予報の事例解析を行い、結果を評価するという当初の計画は概ね達成することができた。今後は、台風以外の前線性や局地豪雨など発生要因が異なる降水現象について、アンサンブル予測システムを適用し、開発を進めて行く予定である。学会や論文での公開については、平成25年度中には学会発表5件、論文発表1件を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の達成目標は、「前年度で開発した気象数値予報モデルを用いて事例解析を行い、降水現象・流域面積・アンサンブル予報手法の適切な関係を調査する」であった。研究実績の概要でも述べたように、台風事例の豪雨に対してWRF-LETKFを適用し、また側面境界摂動を新たに導入することにより、予報精度がこれまで一般的に用いられてきた決定論的予報に比べて改善が見られたことから、この目標は概ね達成できたと考えている。しかしながら、得られたアンサンブル予報結果の広がりが、昨年度の結果とは対照的に、論文等の一般的な報告結果よりも大きめになってしまった。それにより、予報結果の利用方法に改善の余地が残ったため、今後もこれらの点について修正できるよう開発を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は概ね計画通りの研究目的を達成できたので、平成26年度も計画の通り、「降水現象の種類(台風、前線、局地的豪雨)に依存する予報精度の評価」および「流域面積に対応した予報手法の評価」について研究を進める予定である。前者は、平成25年度までに開発した手法を、さらに多くの豪雨事例に適用し、その予報精度や流出予測可能性について検討を行う。また、後者については、豪雨の予報降水量を用いて流出予測を行う時点で、異なる流域面積に応じた予測手法を調べるため、様々な流域面積を持つ河川に対して流量予測を行う予定である。また、降水量予測手法である、WRF-LETKFについても、アンサンブルスプレッドの大きさや予測精度との関係について改善に努め、さらに流出予測精度の向上に努める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末に外国出張旅費を計上していたが、円安のため航空運賃が値上がりし予算が足りなくなったため、旅費支出自体を別予算でまかなった。それにより、旅費の予算分が浮いたため。 計算機購入費用に充填し、計算速度の向上に努める。
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Research Products
(5 results)