2012 Fiscal Year Research-status Report
緊急物資や商品の頑健で強靱なサプライチェーン形成のためのスーパーネットワーク解析
Project/Area Number |
24560639
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 忠史 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80268317)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | サプライチェーン / 交通ネットワーク / スーパーネットワーク / 貨物輸送 / 均衡分析 / マルチモーダル輸送 |
Research Abstract |
災害に対して頑健で強靱なサプライチェーンネットワーク(Supply Chain Network: SCN)の形成、および、それを支える交通ネットワークの設計に向けて、本研究では、ネットワーク上の動的な状態遷移を内包し、サプライチェーンと交通の双方を考慮したスーパーネットワーク全体の挙動を記述する手法の開発を目指す。研究初年度である本年度は、以下の事項について取り組み、成果を得た。 企業へのヒアリング調査、既存の調査結果や関連文献の精査に基づいて、実際のSCN特性や交通ネットワーク特性を調べた。これらの調査結果や既存文献から得られた知見を利用して、「製造業者、卸売業者、小売業者、消費者、物流業者、原材料業者の行動を記述するSCNEモデル(Supply Chain Network Equilibrium)」、および、「製造業者、卸売業者、小売業者、消費者、物流業者、交通ネットワーク利用者の行動を記述する多期間SC-T-SNEモデル(Supply Chain-Transport Supernetwork Equilibrium)」を開発するとともに、「製造業者、卸売業者、小売業者、消費者、物流業者、交通ネットワーク利用者の行動を記述する単期間SC-T-SNEモデル」をマルチモーダル交通ネットワークに拡張した。いずれのモデルについても、ネットワーク上で行動する各主体の意思決定を均衡モデルの枠組みで表現し、SCN全体、もしくは、スーパーネットワーク全体の均衡条件が、有限次元の変分不等式問題で定式化できることを示し、解の定性的性質や解法を明示した。 構築したモデルについて、コンピュータを用いた数値計算により、実際のSCNや交通ネットワークでの実現値とモデルから得られた推定値との整合性を確認し、構築したモデルの記述モデルとしての基礎的性能を検証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、災害による機能低下が小さく(頑健性)、機能が一時的に低下しても回復力に優れた(強靱性)サプライチェーンネットワーク(Supply Chain Network: SCN)を形成し、それを支える交通ネットワークを設計するために、サプライチェーンと交通の双方を考慮したスーパーネットワーク全体の挙動を記述する手法を開発することにある。その際、平常、被災、復興へと遷移するような動的(多期間)な状態変化を考慮可能とし、SCN上で製造業者より上流に位置する原材料業者の意思決定や、道路以外の航路や線路を含むマルチモーダルな交通ネットワークについても考慮する。 「研究実績の概要」で述べたように、現在までに、「製造業者、卸売業者、小売業者、消費者、物流業者、原材料業者の行動を記述するSCNEモデル(サプライチェーンネットワーク均衡モデル)」、および、「製造業者、卸売業者、小売業者、消費者、物流業者、交通ネットワーク利用者の行動を記述する多期間SC-T-SNEモデル(サプライチェーンと交通のスーパーネットワーク均衡モデル)」を開発した。さらに、「製造業者、卸売業者、小売業者、消費者、物流業者、交通ネットワーク利用者の行動を記述する単期間SC-T-SNEモデル」をマルチモーダルな交通ネットワークを包含したモデルへと拡張した。いずれのモデルについても、推定値と実現値の整合性を確認し、基礎的性能を検証した。これらの研究成果を、上述の研究目的と照合すれば、本研究は、おおむね順調に進展しているものと判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、24年度に開発した「製造業者、卸売業者、小売業者、消費者、物流業者、交通ネットワーク利用者の行動を記述する多期間SC-T-SNEモデル」を、原材料業者の行動を考慮したモデルへと拡張するとともに、拡張モデルにおいて、マルチモーダルな交通ネットワークを包含することを目指す。 このモデルにおいても、ネットワーク上で行動する各主体の意思決定を均衡モデルの枠組みで表現し、各主体の意思決定に関する最適性条件などから構成されるスーパーネットワーク全体の均衡条件が、有限次元の変分不等式問題で定式化できることを示し、解の定性的性質や解法を明示する。また、実際のSCNや交通ネットワークでの実現値とモデルから得られた推定値との整合性を検討し、設定困難な関数形やパラメータ値のモデル内調整も視野に入れながら、記述モデルとしての性能を検証する。モデルの開発や性能検証に際しては、前年度と同様に、企業へのヒアリング調査や、SCNや交通ネットワークについて調査・研究した文献、および、これまでに実施されてきた交通・物流調査の結果も利用する。 平成26年度には、24年度に構築済み、および、25年度に構築予定のSCNEモデルやSC-T-SNEモデルを用いて、交通ネットワークやSCNの脆弱性解消や信頼性向上に寄与するような貨物交通関連施策について、その実施の有無や程度などを決定するような、均衡制約付き最適化モデルを開発し、有効な施策について考究する。この均衡制約付き最適化モデルは、計算負荷の大きい離散的な組み合わせ最適化問題となることから、効率的な解法、すなわち、解の精度に優れていて、かつ、計算時間を抑制できるような近似解法についても検討する。このMPECモデルについては可能な限り、平成25年度に、その基礎的設計に着手する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に計上していた資料提供・閲覧に必要な謝金が不要となったことから、約9万円の次年度使用額が生じた。平成25年度も24年度と同様に、企業へのヒアリング調査や、SCNや交通ネットワークに関する文献調査を実施するため、この次年度使用額は、25年度に計上している人件費・謝金と併せて、調査の際に必要となる謝金に充てる予定である。なお、謝金に充当しても余剰が生じた場合には、25年度に計上している旅費と併せて、調査のための旅費として使用する。
|
Research Products
(6 results)