2012 Fiscal Year Research-status Report
水害リスク指標VaRに基づく土地利用規制・誘導政策の実行可能性に関する研究
Project/Area Number |
24560645
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
柿本 竜治 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (00253716)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 水害リスクカーブ / 流域管理的治水 / 経済的被害 / 土地利用規制 / 災害危険区域 |
Research Abstract |
流域管理的治水政策は,従来用いられている期待被害額を指標としたのでは適切に評価できない場合がある.なぜなら,期待被害額では,甚大な被害でもその発生確率が小さいリスクと,被害は小さいが頻繁に生ずるリスクが同程度に評価されてしまうためである.人々の安心・安全を確保するためには前者の低頻度大被害リスクを重視すべきであろう.本研究では,水害リスクカーブを用いて低頻度大被害リスクを考慮する.水害リスクカーブは,超過確率とそのときの被害額の関係を表しており,ある超過確率の洪水に対する土地利用状況の脆弱性の定量的な評価が出来る. 本研究では,水害リスクカーブを用いて水害時の浸水域での土地利用規制導入の効果を実証的に検証した.土地利用規制を行うにあたり,まず,被害の大きさに影響する洪水流の流体力に基づく水害危険度で対象地域を分類した.そして,潜在的水害危険度が高い地域で,遊水地など治水整備後の資産集積により,低頻度大規模災害の際に,以前より経済的損失が増していることが明らかになった. 浸水域への土地利用規制の導入は,それ単独ではハード整備の効果に及ばないが,低頻度の大規模災害時に経済的損失を軽減する効果がある.ハード整備とともに土地利用規制を行うことで,地域の治水安全度向上よる新規土地利用の誘発による被害ポテンシャルの上昇を防ぐことができることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水害リスク指標VaRを算出するためには水害リスクカーブを作成する必要がある.24年度の研究では,水害リスクカーブの作成を次の手順で行った.5年に1度,10,~,100年に1度といった再現期間ごとの降雨量を予測し,河川流量を算出すた.それらの流量の下で氾濫解析し,浸水域をシミュレーションした.浸水域に応じて国土交通省の「治水経済調査マニュアル」に従い被害額を算出し,再現期間を超過確率に換算してプロットし,水害リスクカーブを作成した. また,流域管理的な治水政策の現状と課題については,氾濫域における建築制限を行うための土地利用規制として,防災土地利用規制政策を導入しているイギリスやフランス等諸外国の事例を整理し,それを参考に土地利用規制のシナリオを作成した.具体的には,被害の大きさに影響する洪水流の流体力に基づく水害危険度で対象地域を分類した.そして,潜在的水害危険度の高い地域での土地利用規制の有効性を検証した. 以上の成果が得られていることから達成度は,「おおむね順調に進展している.」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
流域管理的治水政策の水害リスク軽減効果をVaR指標により定量的に把握する.流域管理的治水政策は,平常時の土地利用規制・誘導政策と水害時の広域的水害対策の大きく二つに分けられる.前者を評価するためには,土地利用規制・誘導政策がどのような土地利用状況をもたらすかを立地均衡モデルにより予測する必要がある.そのため流域管理的治水政策の評価は,a)既存の土地利用におけるVaRの算出,b)土地利用規制・誘導政策の設定,c)立地均衡モデルによる土地利用変化の予測,d)新たな土地利用におけるVaRの算出,e)政策前後のVaRの比較,のステップを踏む. 具体的には,熊本市の壺川地区を対象に流域管理的治水政策を検証する.壺川地区の中心部には坪井川が流れており,これまで何度も水害に見舞われている.そのため,壺川地区の水田地域を機能的氾濫原として有効利用する坪井川治水緑地事業が開始され,現在の坪井川では,50年確率で堤防等の河道や遊水地の整備が終了している.地区の治水安全度の向上とともに,遊水地周辺の田畑の宅地開発が進んでいる.対象地区に適用する 「土地利用規制・誘導政策の設定」については,24年度に作成した規制・誘導策のシナリオに基づいて設定する.なお,規制等による土地利用変化の予測に用いる新しい立地均衡モデルの開発が遅れた場合は,既存の立地均衡モデルの枠組みを援用する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(17 results)