2012 Fiscal Year Research-status Report
まちづくり活動ユニットの相補関係導出による地域システムの構築に関する研究
Project/Area Number |
24560654
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
齊藤 充弘 福島工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20353237)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | まちづくり / コミュニティ / 空間構造 / 社会構造 / 防災・減災 |
Research Abstract |
平成24年度においては,いわき市内におけるコミュニティの形成と分布を明らかにするために,いわき市内を「沿岸地域」,「市街地地域」,「中山間地域」という区分の下に2つの調査を実施した。 第一に,中山間地域を対象としてまちの現状と生活の実態を捉えるために,町内会や自治会等の自治組織や,各種団体・組織,祭礼・儀礼等の伝統行事,生活にかかわるイベントや活動,年中行事をコミュニティとして捉え,訪問調査を実施した。具体的には,大字単位でその実態調査を行い,統計資料の経年分析とともに区長に対するヒアリング調査を行った。その結果,各地区における現存コミュニティを明らかにすることができ,コミュニティの有無やその活動については,人口減少や少子高齢化に加え,空間構造が関係していることがわかった。また,震災時におけるコミュニティの調査より,日常時におけるコミュニティ活動が重要な役割を担っており,非日常時においても有効に機能していることがわかった。さらに,空間構造と社会構造の関係より,地区によってその変化や実態に特徴があることがわかった。ここでは特に,大字単位でそのことを確認することができた。 第二に,いわき市に内において大震災後の申請・認証が多くみられるNPO法人を対象として,その実態と震災後の取り組みを明らかにするために,アンケート調査を実施した。その結果,震災直後の活動状況としては,被災者支援や避難所の運営にみるように,その活動は多岐にわたっているということがわかった。また,震災後の変化については,震災以前と比較して,積極的・自主的により多くのことに取り組むように変化している法人が多く,また地域からの多岐にわたる要請も多くなっており,期待されていることがわかった。さらに,防災の視点を取り入れた取り組みが求められており,それに応えるための今後のまちづくりの課題を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請時に記載した平成24年度の計画においては,コミュニティに関する実態調査と東日本大震災を通したコミュニティの活動調査の2つを掲げている。ここでは,その前提として,いわき市内の各地区におけるコミュニティの基本単位となる行政区や自治会・町内会等の分布が明確になっていることを想定していた。しかしながら,調査を開始してみると,特に市街地地域を中心として,行政区や自治会・町内会等の分布が明確に把握されていないことが多いことがわかった。そのため,まずはその基本単位の存在と分布を確定する必要性が生じたため,支所をはじめとする関係機関への訪問調査や資料収集等の調査を実施して,行政区や自治会・町内会等についての基本情報の収集に努めた。その一方で,計画をしていたコミュニティに関する調査については,その基本単位が比較的単純で明確となっている中山間地域を対象として先行的に実施した。また,東日本大震災を通したコミュニティの活動調査についても,震災直後に行政が実施した先行調査のレビューを踏まえて調査項目の設定を行ったため,先行調査結果の公表を待って分析するまでに,時間を必要とした。さらに,震災を受けての取り組みに関する調査については,震災後1年が経過したものの,原発事故の影響も含め未だその混乱が続いている地域が多く,スムーズに調査を行い難い状況もあるということができる。そのため,いわき市内全体を対象とする当初の研究目的と比較すると,その進捗状況についてはやや遅れているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては,第一に,いわき市内を対象として地区単位,大字単位,行政区や自治会・町内会等の単位でのコミュニティの分布を明確にし,それを地理情報システムを用いた地図化と関連する統計データを用いたデータベースの作成を行っていく。ここでは,地区の風土や歴史によりその実態はさまざまであり,行政区と自治会・町内会等との空間的,社会的関係を明らかにする中でコミュニティどうしの関係性を分類していく必要がある。平成24年度の調査により,その関係性は行政においても明確に把握していないことが多く,区長をはじめとする地域住民における詳しい人物への聞き取りが最も情報やデータを得やすいということがわかった。そのため,既存資料の収集とともに,行政との連携を図りながら関係者に対するヒアリング調査を小まめに行い,データを収集していく。第二に,中山間地域を対象として先行的に実施した区長に対するヒアリング調査について,市街地地域や沿岸地域において実施していく。調査項目については,平成24年度に実施した調査項目をベースとする中で時間の経過や先行調査により明らかとなった内容を踏まえて,適宜修正を図りながら実施していく。さらに,いわき市内における震災後の大きな変化として,原発事故の影響による福島県浜通り地域の住民の避難受け入れをあげることができる。これに伴う災害公営住宅の整備や町外コミュニティ(仮のまち)の整備構想があがってきているため,その動向にも注視をしながら,空間構造と社会構造の変化を追究していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き,いわき市においてコミュニティとまちづくり活動ユニットに関する実態調査を実施するにあたっては,大字単位での区長をはじめとする戸別訪問形式によるヒアリング調査やアンケート調査を計画しているため,調査と収集データの集計・分析にあたっては,研究補助者が必要であり,それに対する謝金が必要である。これは,福島工業高等専門学校の学生(10名程度)の協力の下に効率良く進めていくものとする。また,そこでは調査の実施に伴う車両のリース代や調査票等の複写・印刷費が必要となる。さらに,その他の関連する資料・書籍の収集とそれに伴う国内旅費,データベース作成と保存のための関連機器にかかる設備・備品費,調査の際の文房具等の消耗品費が必要となる。地理情報システムを用いたコミュニティの分布に関する地図化にあたっても,同様に研究補助者への謝金,設備・備品費,消耗品等が必要となる。 以上のように,複数の調査とその分析を並行して進めていくために,計画的に研究費を使用して成果をあげるように努める。
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Research Products
(2 results)