2012 Fiscal Year Research-status Report
アオコ抑制のための底泥中のアナベナ休眠細胞の発芽特性解析
Project/Area Number |
24560657
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野村 宗弘 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70359537)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 富栄養化 / 水質汚濁 / 発芽 |
Research Abstract |
アナベナ属は,休眠細胞という形態をとることで劣悪な環境を乗り切る機構をもつが,休眠細胞がアオコ形成に与える影響はほとんど評価されていない.そこでアナベナ休眠細胞の発芽速度定量実験から休眠細胞の発芽予測モデルを構築し,ダム貯水池における発芽量を予測するとともに,現地の環境因子を解析することで,休眠細胞がアナベナによるアオコの形成に与える影響を評価した. 研究は宮城県の北北西に位置する漆沢ダム貯水池を対象に実施した.年間平均栄養度は中栄養状態であるが,夏季には藍藻類アナベナを主とするアオコが発生する.本研究では日照時間,気温,降水量を対象として,アオコの発生年と非発生年についてt検定を行い,気象条件がアオコ形成に与える影響を評価した.その結果,日照時間については6月の上旬(p<0.05)と月間(p<0.01),7月の上旬(p<0.05)と月間(p<0.05)について,気温については7月の中旬(p<0.05)のみアオコの発生と非発生年において有意な差が得られた.降水量に関しては,有意差はみられなかった. 次に休眠細胞発芽速度定量実験を行い,現地環境とアオコの発生に関する解析を行った.さらに得られた発芽速度と休眠細胞の発芽率に関する既往の研究の結果から,現地における休眠細胞の発芽を推定するモデルを構築した.その結果,構築したモデルの計算結果から,アナベナの発芽は6月の貯水位低下に伴って発生し,統計解析からはこの時期に日射に恵まれること,7月中旬の気温が高いことが,アオコ形成に影響していることがわかった.また,休眠細胞の発芽は貯水位を高く保つことで抑えることが可能であることが示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
底泥におけるアナベナ休眠細胞の時空間分布に関して,貯水池の湖底から採取した底泥を用いて発芽実験を実施し,MPN法により休眠細胞数を評価できた. アオコ形成に及ぼすアナベナ休眠細胞の影響について,アナベナ休眠細胞の発芽特性に関して,発芽のタイミングおよび速度を明らかにするために発芽実験を室内で行い,発芽速度を定式化できた.さらに本実験を通じてアナベナ休眠細胞由来の内部負荷量を新たに見積もることができた. 以上から,研究はおおむね順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,水槽を用いた発芽実験を行うとともに,発芽実験を行った底泥サンプルに対して底泥表面から数mm単位でスライスして休眠細胞数の存在量を測定,実験前後の休眠細胞数の変化から底泥表面のどの層までが休眠細胞が発芽できるかを明らかにする. さらに休眠細胞の発芽の抑制は水柱の初期アナベナ数を減少させるが,アオコ発生にどの程度,影響するかは評価できていない.そこで底泥における休眠細胞数の違いがアオコ発生に及ぼす影響に関する室内実験を行う.具体的には水槽に休眠細胞を含まない底泥を混合させて人工的に休眠細胞数を変化させた底泥を敷き詰め,現地のろ過水を用いてアナベナ休眠細胞の発芽状況,藻類種の優占状況をモニタリングする.なお,水中には現地でみられる緑藻類や珪藻類を予め優占化させておき,その藻類との競合実験を行う予定である. また,アナベナはカビ臭(ジェオスミン)を産生することが知られており,アナベナ休眠細胞のカビ臭含有の定量的評価もあわせて実施したい.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
室内実験のためのガラス器具,分析試薬,分析カラム,分析用ガスなど消耗品費,現地調査ならびに情報収集,研究成果報告のため学会参加を行うための旅費,研究補助のための謝金,外部分析委託のためのその他経費を計上した.
|